新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS 第1部 婚約に至る道 (僕は、アスカが好きだ。世界で一番大好きだ。 だから、アスカに会うために戻ってきた。 他人に傷付けられるのは、嫌だけど、他人を傷付けるのは嫌だけど、 でもぼくはもう一度アスカに会いたいと思った、あの時の気持ちは、本当だと思うから。 でも、今は自信がない。もう少し、もう少し自信が持てたら…。) 第0話 言えない言葉 明日にアスカの退院を控えた僕は、早く家に帰りたかったが、冬月副司令に呼ばれたため、 病院の帰りに副司令室に寄った。冬月さんは、僕を笑顔で迎えてくれた。 「シンジ君、元気そうでなによりだ。アスカ君も明日退院すると聞いているが、これからどうするんだね。」 「ミサトさんが帰って来るの待とうって、アスカと二人で決めました。ですから、僕達の家に戻ります。」 「そうか。では、シンジ君にお願いがあるんだが、いいかね。」 「はい、何ですか。」 僕は冬月さんのことは割合信用していたので、素直に答えた。 「実は、アスカ君のことだが、当分の間、それとなく様子を見て欲しいんだ。」 「と、いいますと?」 「シンジ君も知っての通り、アスカ君は使徒の精神攻撃を受けて以来、精神的にかなり不安定になっている。 赤木君に以前聞いたのだが、例の使徒の精神攻撃を真似て、猿に同じ様な実験を試みたらしいんだが、 結果として、精神攻撃を受けた猿達は、皆発狂して死んでしまったそうなんだ。 アスカ君が死ななかったのは、奇跡に近いそうだ。 だから、彼女の様子を当分の間、注意して見て欲しいんだよ。」 「もし、アスカがおかしくなったらどうしたらいいんですか。」 僕は急に不安になった。 「アスカ君の気分が落ち着くようにすればいいはずだよ。 アスカ君のことだから、シンジ君を困らすような事を言うかもしれないが、何でも言うことを聞いて欲しいな。」 「そんなことでいいんでしょうか。」 「もっといい方法があるんだが…。」 「何でしょうか。僕に出来ることなら…。」 何でもしますという言葉を僕は飲み込んだ。 「アスカ君には、精神的支えが必要だ。例えば、恋人がいるといいかもしれない。 シンジ君がアスカ君に好きだと言えば、彼女も応えてくれると思うのだが、どうだろうか。」 それを聞いて、僕の心は揺れた。だが、僕には勇気が無かった。 アスカに断られるのが怖かった。僕はアスカに嫌われたくなかった。 今の不安定な関係を壊したく無かった。 「すみませんが、それは出来そうにありません。」 僕は唇をかみしめた。 「シンジ君、私の勘違いでなければ、シンジ君はアスカ君のことが好きなのだろう。 アスカ君を好きなら、はっきり伝えなさい。それがアスカ君のためにもなるんだよ。」 僕は、冬月さんの言葉を聞きながら、思い出していた。 アスカを助けられなかった僕、アスカを汚した僕、白いエヴァに蹂躙されたアスカを救えなかった僕、 アスカの首を絞めてしまった僕…。 思い出しただけで悲しくなってしまった。 何故あの時、アスカに助けを出せなかったのか。 何故あの時、アスカにあんなことをしてしまったのか。 後悔しても、し足りない。こんな僕をアスカは許してくれるのだろうか。 頭の中で誰かが『アスカは許してくれないよ。』と言っている気がした。 やはり、僕には言えそうにない。 「僕は…アスカに好きなんて言う資格なんか無いんです!」 そう言いながら、僕はとめどなく涙を流していた。 冬月さんは、悲しそうな顔をしていたが、『すまなかった。』と言って、部屋を出て行った。 (僕は、アスカが好きだ。世界で一番大好きだ。 だから、アスカに会うために戻ってきた。 他人に傷付けられるのは、嫌だけど、他人を傷付けるのは嫌だけど、 でもぼくはもう一度アスカに会いたいと思った、あの時の気持ちは、本当だと思うから。 でも、今は自信がない。もう少し、もう少し自信が持てたら…。) 僕は、流れ出る涙を抑えることが出来なかった。 次話に続く ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― キャラ設定:葛城 ミサト、赤木 リツコ サードインパクト後、行方不明となる。 written by red-x