新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS 第1部 婚約に至る道 第8話 恋人−その1− シンジは、アスカのことが心配で、急いで帰った。 そして、玄関を開けようとした時、アスカの悲鳴が聞こえた。 「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!」 シンジは慌てて家に入り、アスカを探した。 アスカは、パソコンを目の前にして、床に転がっていた。 「アスカ、大丈夫!」 シンジはアスカの元に駆け寄って、アスカを抱き起こした。 「シンジ!」 アスカはシンジに抱きつく。 「シンジ!シンジ!シンジ!シンジ!シンジ!」 アスカも、シンジを強く抱きしめた。 アスカは、体中に冷や汗をかいており、顔は真っ青だった。 「うわぁ〜ん。シンジ〜、怖かったよ〜。うわぁ〜ん。」 アスカは泣きじゃくる。 「アスカ、怖い夢を見たんだね。でも、もう大丈夫だよ。安心して。いいよ。」 「シンジのバカ!何でもっと早く来ないのよ! 怖かったんだから、本当に怖かったんだから、もっと早く来なさいよ!」 アスカは、昨日と同じことを言ってシンジを責める。 「アスカ、ごめんね。怖い夢を見たんだね。でも、もう大丈夫だよ。」 シンジの優しい声にアスカは徐々に落ち着きを取り戻した。 「シンジ、ごめんね。アタシ、昨日も同じ夢を見たのね。 そして、シンジに一緒に寝るようにお願いしたのよね。」 アスカは少し震える声で言う。アスカはやっと昨日のことを思い出したようだ。 「そうだよ。やっと思い出したんだね。」 (ふう、良かったやっと思い出してくれたよ。これで、死刑は取り消しだね。) 「うん。だから、お願い。今日も怖いから、一緒に寝て欲しいの。」 「ごめん。今日は勘弁してほしい。」 シンジは今朝のことを思い出していた。 急所を思い切り蹴られて、悶絶したため、シンジの心には、 アスカの暴力に対する恐怖感が芽生えていたのだ。 「え〜っ!なんで!どうして!」 「理由は、アスカが良く知っているはずだよ。」 シンジの目はちょっときつかった。アスカは身に覚えがあるので、ちょっとたじろいだ。 「わ、わるかったわよ。謝るから、怒らないで。」 「怒ってはいないけど。でも、今朝は凄く痛かったんだよ。 だから、怖くてアスカとは寝られないよ。」 シンジは、あまりにも勝手な事を言うアスカに対して、少しだが、腹を立てていた。 怖いから一緒に寝ようと言いながら、朝になるとそんなことはきれいさっぱり忘れて、急所を蹴りあげるアスカに。 「うっ。」 アスカは二の句が告げなかった。だが、これで怯むようなアスカではない。 「もう、あんなことしないから。」 「そんなこと言っても、信じられないよ。」 シンジは、アスカに対して、深い疑念を抱いてしまっていた。 いくら、シンジが優しくてお人好しでも、ものには限度があるのだ。 「じゃあ、どうすれば信じてくれるのよ。」 「どうしても駄目。」 「意地悪!」 「だって、アスカが悪いんじゃないか。 本当に痛かったんだよ。僕は何もしていないのに。 それなのに、アスカったら、思いっきり蹴りあげたうえに、いい気味なんて言って、酷いとは思わないの。」 「う〜っ。」 シンジの言うことが正しいので、うなる事しか出来ないアスカだった。 だが、小悪魔的な笑みを浮かべると、色仕掛けで攻めてきた。 「シンジ〜。一緒に寝てくれれば、後でキスしてあげる。それでどう。ねっ。」 シンジは、アスカの可愛い笑顔に一瞬心がよろめいたが、直ぐに今朝の痛みを思い出して正気を取り戻した。 「嫌だ。」 (キスぐらいじゃ駄目だ。それに、あんな痛い思いをするのは、もう嫌だよ。) 普段のシンジなら、簡単に落ちていたはずだが、今朝のことがよっぽど堪えたのだろう。 シンジは、首を縦に振らなかった。 「シンジ〜。一緒に寝てくれれば、胸を揉み放題よ。それでどう。」 「駄目。」 (アスカの嘘つき!どうせ、後で忘れたとか、覚えていないとか言うに違いないんだ。 それじゃなきゃ、マヤさんの胸のことだとか、洞木さんの胸だとか言って誤魔化すに違いない。 僕だってバカじゃないさ。いつまでも騙されたりするもんか!) 「シンジ〜。一緒に寝てくれれば、体を触り放題よ。これでもだめ?」 「駄目。」 (アスカもしつこいな。僕のことをバカにしているよ。 そんなに僕が騙され易いと思っているのかな。) 「シンジ〜。一緒に寝てくれれば、体中、キスし放題よ。これでもだめ?」 「駄目。」 (アスカも、演技がうまいな。でも、僕は絶対に騙されないよ。) 「しょうがない。最後の一線を超えなければ、何でもOK!これなら良いわよね。」 「だから、駄目だって。」 (何だよ、最後の一線って。 どうせ、床に線を引いて、これを超えなきゃ何してもいいなんて言うんだろ。 まったく、人をバカにしてるよ。) シンジは、次第にいらついてきた。 「最後の一線を超えなきゃ駄目なの?シンジのドスケベ!」 「だから、そういう問題じゃないの。」 シンジは思わず大きな声を出してしまった。 「う〜っ。」 アスカは、唸り声をあげると、考え込んでしまった。 アスカが考え込んでいる間、シンジは、これからアスカが何をするのか、考えていた。 (まさかとは思うけど、裸になって抱きついてきたらどうしよう。 そうなったら、エッチなことしちゃおうかな。 女の子に恥をかかせちゃいけないよね。そうなるといいな。 それ以外だったら、断ろう。 どうせ、アスカのことだから、色仕掛けでくるに違いないんだ。 中途半端なことだったら、きっぱり断ろう。) シンジはいつの間にか、妄想モードに入っていた。 シンジも男の子である。 アスカの蹴りには恐怖するが、それ以上のご褒美が目の前にぶら下がれば、食いついてしまうのだ。 今のシンジは、どんなご褒美が出るのか、楽しみでもあった。 そのうち、アスカは意を決したような顔をして、口を開いた。 「分かったわ。じゃあ、これで最後のお願いにするわ。」 そう言うとアスカは、少し顔を紅くした。 「だから、何言っても駄目だよ。」 シンジは、ムスッとした顔をする。 だが、心の中では、アスカが何かエッチなことを言うのではないかと、大きな期待を抱いていた。 だが、アスカが言ったことは、シンジの予想を大きく外れていた。 次話に続く ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき やっぱりシンジも男の子。エッチな想像をするのです。 written by red-x