新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS

第1部 婚約に至る道

第12話 ミニスカート


「ふぁあああっ。」
シンジは大きなあくびをする。

「ああ、良く寝たな…。」
シンジが呟くと同時に、アスカが声を掛けてきた。

「シンジ、おはよう。」
アスカの優しい声がした。

「え、アスカ、おはよう。」
シンジは、アスカの優しい声に安心したのか、明るく返事をした。

「シンジのお蔭で、昨日もぐっすり眠れたわ。ありがとう。」
そう言うと、アスカはシンジの方を向いた。

「シンジ、ご褒美よ。」

アスカの声はそこで止まった。シンジの口は、アスカの口でふさがれたのだ。


***


「さあ、シンジ、昨日の続きをやるわよ!早く食事の用意をして!」

長いキスが終わると、アスカは元気よく言った。
続きとは、昨日マヤに頼まれた書類の処理のことだ。
昨日は運良くユキがいたため、1時間程であるが、余分に仕事が出来て、かなり助かったのだ。

「今日も森川さんがいると、助かるんだけどね。」
シンジがぽろっと呟く。

「ユキに、あんまり迷惑をかけられないでしょ。」
アスカは直ぐに反論する。

だが、ちょうどその時、玄関のチャイムが鳴った。

「あれ、こんな時間に誰だろう。」

そう言いながらも、シンジは玄関に向かった。


「あれ、森川さん、おはよう。」

どうやら、突然の訪問客は、ユキのようだ。アスカは慌てて起き上がった。

「ここじゃ、なんだから上がってよ。直ぐにアスカも起きてくるから。」

シンジはそう言うと、ユキをリビングに案内した。

「ちょっと待っててね。アスカを連れてくるから。」

シンジはアスカの部屋に入り、暫くしてからアスカをリビングに連れて来た。

「どうしたの、ユキ。」
ユキを見るなりアスカは尋ねた。

「おはようございます、惣流さん。朝食はまだですよね。」

「うん、これからシンジが作るとこだけど。」
まだ、朝の7時だ。

「良かった。実は、惣流さんと食べようと思って、サンドイッチを作ってきたんです。」

ユキはそう言って、テーブルの上にサンドイッチを広げだした。

「あれ、いい匂いがするね。」
シンジも匂いには合格点を付けたようだ。

「ユキ、ありがとう。お言葉に甘えて、皆で食べましょう。」

かくして、3人は楽しくおしゃべりしながら、サンドイッチを頬張った。


7時半を回った頃、アスカはユキに問いかけた。

「今日はどうしちゃったの、こんなに早い時間に。」

「ええ、昨日はお二人とも、ネルフのお仕事で大変だったでしょう。
ですから、私も何かお手伝いしたいと思って来たんです。
食事を作ったり、お掃除したり位は出来ますから。
もっとも、お昼には、いったん家に戻りますが。」

「そう。それだけでも助かるわ。ありがとう、ユキ。」

「そんな。私は、惣流さんのお役に立てるだけで、嬉しいですから。」

「じゃあ、後は任せたわ。シンジ!とっとと始めるわよ!」
アスカは意気揚々として仕事を始めたので、シンジもアスカの手伝いを始めた。


シンジとアスカが悪戦苦闘している間、ユキは掃除に洗濯、炊事、布団干しと、テキパキと片付けていった。
そのお蔭で、シンジは、アスカの手伝いに専念することが出来たため、思ったよりも早く仕事は進んでいた。

「惣流さん、碇君、お昼ご飯ですよ〜。」
12時を少し回った頃、ユキに呼ばれて、アスカ達はリビングにやって来た。
テーブルの上には、ミートスパゲッティー、ドリア、サラダ、コーンスープが並んでいた。

「あら、いい匂いね。おいしそう。」

「そうだね。森川さんて、料理が上手なんだね。」

「ありがとうございます。それでは、いただきましょう。」

こうして、3人は、またもや楽しそうにおしゃべりしながら、食事を楽しんだ。


 食後の紅茶タイムが終わるとユキは家に帰った。妹達の面倒を見るためだ。
もちろん、夕方には、また来てくれるはずだ。

「よ〜し、シンジ、もう一踏ん張りよ。」
アスカはシンジにハッパをかけた。

「うん、頑張ろう、アスカ。」
(アスカと一緒に出来るなんて、嬉しいな。)

こうして二人は今日もマヤに頼まれた仕事を片付けていった。


***


今日も、夜6時丁度に、ユキはやって来た。
ユキは、アスカとシンジに仕事を続けるように言うと、夕食を作り始めた。


「夕御飯、出来ましたよ〜。」
ユキの声がすると、シンジとアスカは食卓へ向かった。
今日のメニューは洋風で、メインはステーキだった。
それ以外にも魚のムニエルやサラダ、そしてクラムチャウダーなどが並んでいた。
しかも、パンとご飯のどちらも用意されていた。

「あら、結構豪華ね。嬉しいな。アタシはパンがいいな。」
シンジの料理は和風が主体であるため、洋風の食事はあまり多くない。
そのためか、アスカの顔は、ニンマリしていた。
しかも、アスカのステーキは、一口大に切られて、食べ易くなっていた。

「ユキって、気が利くのね。ありがとう。」

「喜んでもらって、嬉しいわ。残らず食べてくれると、もっと嬉しいですけど。」

「そんなに食べたら、太っちゃうわよ。」

「そうですね。」

「むう〜。少しは否定しなさいよ。ほら、シンジ!そこで笑わない!」
シンジは、クスクス笑っていたため、アスカに一睨みされる。

「ははは、アスカごめんよ。でも、アスカは、もっと太らなきゃ駄目だよ。」

「くすん、酷いわ。シンジはアタシのことが嫌いになったのね。」

「そ、そんなことないよ。僕はアスカが大好きだよ。」

「ふふふ、仲のよろしいことで。」

「もう〜。シンジのバカ。」

こんな調子で、3人で和気あいあいと食事をした。
ユキは、今日も『惣流さんのお話が、何でもいいから聞きたいな。』
と言ったため、アスカの自慢話が中心になってしまった。

アスカは、1時間かけてイスラフェルとの戦いの顛末を自慢気に話し、
途中で何度かシンジが口を挟むといった調子だった。
もっとも、今日はアスカが、話しを自分に都合のいいように解釈して話したため、
シンジが文句を挟むことが多かった。

そのせいで、アスカが『どっちの言うことを信じるの?』と、何度も聞いたが、
ユキは、アスカの肩を持ったので、シンジはガクッと肩を落としていた。
このため、アスカは今日も上機嫌になった。
アスカ曰く、『アタシの方が人徳があるのよ!』ということらしい。

食事の後は、シンジは洗い物、アスカとユキはお風呂だ。
ユキは昨日と同様に、アスカを持ち上げて、風呂へと運んで行った。
ユキは、アスカの体を洗うと、二人して湯船に浸かり、またもやファッションの話を中心に花を咲かせた。

「ねえ、ユキ。例のもの、買ってくれた?」

「ええ。赤、青、緑、黄、白、黒、オレンジ、ピンク、紫ですよね。後は、豹皮ですね。
言われた通り買いましたよ。」

「ありがとね。」

「でも、あんなので外出するんですか。」

「まさか。家の中でしか着ないわよ。外に出る時は、上に何か着るわ。」

「そうですよね。あの格好じゃ、ちょっと派手ですものね。」

「そうかなあ〜。」

「そうですよ。」

アスカは、ユキに買い物を頼んでいた。それは、上下共同じ色のブラとミニスカートだ。
ただし、ブラは外で着ても大丈夫なタイプであったが、さすがにアスカはそのままで外出
するつもりはない。ドイツとは勝手が違うからだ。

「あれを着て、碇君を悩殺するんですね。」

「ち、違うわよ。暑いからよ。あったり前でしょ。
まあ、シンジが喜ぶかもしれないって思ったのも事実だけどね。」

「いいなあ、碇君は。羨ましいですね。」

「ユキ、アンタ、逆でしょ。レズじゃあるまいし、変なこと、言わないでよ。」

「へへっ、ごめんなさい。で、今日は何色にしますか。」

「そうね〜。最初はやっぱり赤ね。」

「惣流さんなら、そう言うと思いましたわ。」
ユキはにっこり笑った。


それから30分程経っただろうか。シンジはアスカに呼ばれた。
「シンジ〜、ちょっと来て〜。」

「は〜い。」

アスカに呼ばれて、シンジはアスカの部屋へ向かった。
そこで、シンジは思わず鼻血を流すところだった。
アスカは、上下共赤い色をしたブラとミニスカートという格好だったからだ。

「ア、アスカ。どうしちゃったの、そんな格好で。」

シンジが焦るのも無理はない。
アスカは、水着姿にミニスカートともいうべき格好だったからだ。
シンジは視線を落としたため、ちょうど、アスカの足の辺りに視線が向かった。

(ア、アスカって、やっぱり可愛いな。でも、恥ずかしくて、見られないや。)

だが、アスカはシンジの反応にがっかりしたようだ。
思った反応とあまりにも違ったらしい。
シンジが、さっきから何も言わずに、アスカのミニスカートの辺り
(実際には、アスカの足の辺り)を見ているのが原因だろう。

「あら、シンジ。そんなに似合わないかしら。」
アスカは、少し落胆したように言う。

だが、その言葉に、シンジは我に返ったようだ。

「に、似合うよ。アスカ、と、とっても綺麗だよ。」

その言葉を聞いて、少し暗かったアスカの顔が、パッと明るくなる。

「えへへっ。ホント?」

「う、うん。思わず、見とれちゃったよ。」
シンジはそう言うと、アスカに近寄ってきた。そして、いきなりアスカに抱きついた。

「アスカ、何て可愛いんだ。アスカ、大好きだよ。」
シンジはアスカを力強く抱きしめる。

アスカは、一瞬、何が起きたのか分からず、戸惑っていたが、シンジの背中に手を回して、目をつぶった。
だが、それも束の間。はっとした顔になり、目を開いて叫んだ。

「バ、バカ、何するのよ、シンジ!離れなさいよ。」
アスカの顔は真っ赤になった。

「アスカは、僕のことが嫌いになったの?」

「バカ!周りを良く見なさいよ!」

その声に驚いてシンジが辺りを見渡すと、ユキのにやにやした顔が目に入った。
シンジの顔が一瞬にして、蒼白になる。

「ごめん、アスカ。」
そう言うなり、シンジはアスカから体を離したが、もう遅い。
ユキに、しっかり見られてしまっていたからだ。

「あら、いいんですよ。私のことは気にしなくても。
いないと思って、どうぞ、続きをしてくださいな。」
ユキはくすくす笑っている。

「んも〜、シンジったら、信じらんない。何、盛ってんのよ。」
アスカの顔は、恥ずかしさで一杯で、真っ赤なままだ。

「ごめん、つい…。アスカが凄く可愛かったから…。」
シンジはそう言ってうなだれる。

「そうですよ。惣流さんが可愛い格好をするからですよ。
碇君のせいじゃないですから、あんまり責めちゃ、可哀相ですよ。」
ユキはニンマリしている。

「もう、いや〜。」
アスカは、両手で顔を隠して、イヤイヤした。
そんなアスカを見て、ユキはにっこりと微笑むのだった。



ユキが帰る支度が出来た頃には、9時を少し回っていた。
ユキは、今日も嬉しそうに帰って行った。
帰り際に、『いいものを見させてもらいました。』と言ったので、アスカとシンジは真っ赤になった。

ユキが帰った後、シンジにはアスカのマッサージが待っていた。
今日のマッサージの時は昨日と違って、二人とも口を開かなかった。
会話をせずに、30分ほどマッサージを続けた後、二人は横になった。
眠りにつこうとするシンジに対して、アスカが声をかけた。

「ねえ、シンジ、起きてる?」
アスカは小声で言った。

「うん、起きてるよ。」
シンジも小声で答える。

「今日も、昨日の続きをお願いしたいんだけど、いいかな。」

「うん、いいよ。」

シンジはアスカに自分の子供時代の話をした。
昨日は、幼稚園と小学生低学年のときの話だったので、今日は小学校高学年からの話だ。
昨日と同じく、暗い話が多かったが、シンジは淡々と話しを続けた。
話は、シンジがこの街に来る直前のことまで続いた。

「じゃあ、今日はこれで終わりにするね。おやすみなさい。」

シンジはそう言うと静かになったが、しばらくして、アスカの方からシンジに話しかけてきた。

「ねえ、シンジ、起きて。」

「ああ、起きてるよ。」

「さっきはごめんね。アタシが悪かったわ。ユキが帰ってからにすれば良かったのよね。」

「ううん、僕も悪かったんだよ。周りも見ないで、アスカに抱きついたりして。」

「ねえ、聞いて良い?」

「うん、なあに。」

「何で急に抱きついてきたの。」

「う〜ん、うまく説明出来ないけど、アスカがとっても可愛いくて、思わず抱きしめたくなっちゃったんだ。
ごめんね、驚いたよね。」

「ううん、本当は、凄く嬉しかったの。
アタシ、シンジに褒めて欲しかっただけなんだけど、あそこまで喜んでくれるとは思わなかったから。
アタシ、毎日着るわね。」

「えっ、毎日?洗濯しないの。」

「全部で10色あるのよ。
だから、組み合わせは100通りもあるの。
だから、楽しみにしてていいわ。
ユキがいない時なら、抱きしめてもいいからね。」

「そ、そう。た、楽しみにしているよ。」

この時、アスカは、良い気分になっていた。
シンジに着ているものをこんなにも褒められたことは、今までは無かったし、
『悪夢を見たくないから恋人になった。』などということは、綺麗さっぱり忘れて、
シンジとは、本当の恋人気分でいたからだ。
この時のアスカは、シンジのことを本当に好きになりかけていたのだ。

だが、アスカはかなり大きな勘違いをしていた。
シンジは、アスカの胸を見ないように、ミニスカートの辺りばかり見ていたのだが、
アスカは、シンジがミニスカートの方を気に入ったと思ってしまったのだ。

一方、シンジは、刺激が強いため、さっきの格好は止めて欲しかったのだが、
アスカの嬉しそうな声を聞いて、止めて欲しいとは言えなくなってしまっていた。
しかも、10着も買っていたとは。シンジは心の中で、深いため息をついていた。
もちろん、アスカはシンジがそんなことを考えているとは、想像すらしていないだろう。

(アスカは可愛いけど、ちょっと刺激が強すぎるよ。
僕は、水着だって、まともに見られないんだよ。
やっぱりわかってくれないだろうけどな〜。)

シンジはいつしか眠りについていた。

 
次話に続く


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written by red-x
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