新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS

第1部 婚約に至る道

僕とアスカは恋人同士になったけど、トウジと洞木さんの仲は、あれから全然進展していない。
親友のヒカリのためと、アスカが一肌脱ぐことになった。もちろん、僕も協力する。
嫌だけど、嫌とは言えないだろうな。


第13話 トウジとヒカリ


「ふぁあああっ。」
シンジは大きなあくびをする。

「シンジ、おはよう。」
アスカは、優しく声をかける。

「アスカ、おはよう。良く眠れた?」
シンジは、いつも通りに、明るく返事をした。

「シンジのお蔭で、昨日もぐっすり眠れたわ。ありがとう。」
そう言うと、アスカはシンジの方を向いた。

「シンジ、ご褒美よ。」

アスカの声はそこで止まった。いつもの朝のキスだ。

キスの後、アスカはニヤッと笑って言った。
「実は、シンジにお願いがあるの。」

シンジは物凄く嫌な予感がしたが、アスカの笑顔からは逃れられなかった。



「さあ、シンジ。今日は何色のミニスカートがいい?」
アスカは3日前にミニスカートを10色買い、
一昨日からシンジに何色がいいのか聞いてくるようになったのだ。
最初の日こそ、色々な色を試しに着てみたのだが、シンジが鼻血を出してしまったため、
シンジの希望を聞くことにしたのである。

(一昨日は緑、昨日はピンクだったよね。だったら、今日は…。)

「そうだね、今日は青がいいかな。」
そう言って、シンジは青いミニスカートに同色のブラを出し、アスカに着させてあげた。

「青ね。いいんじゃない。」
アスカは微笑む。
嫌いな色は買っていないから、何でもいいはずなのだが、やはりアスカも女の子である。
恋人に選んでもらった色を着たいようだ。

「どう、シンジ。似合うかな?」
アスカはシンジに聞いた。
シンジは答える代わりに、アスカを抱きしめた。
最初にシンジにお披露目した日に、シンジはアスカを抱きしめてしまったが、
アスカがあまり嫌がっていないようだったので、次の日からも、
シンジは誉めると同時に抱きしめることにしたのだ。

「アスカ、何て可愛いんだ。アスカ、大好きだよ。」
自然にアスカを誉めるセリフが口を出る。
みるみるうちに、アスカの顔が真っ赤になる。

「えへへっ。ありがと、シンジ。」
アスカは、嬉しそうな顔をした。
そして、しばし時間が止まった。



「あっ、そうだ。シンジ、紺のシャツも取って。」

今日は、二人してマヤの所に行く予定だった。
ユキが家事全般をやってくれたため、シンジがフリーになり、結果として、
6日はかかると思われた仕事が4日で終わったのだ。
ネルフに行くとなると、ミニスカートは良くても上がブラだけでは、ちょっとマズイ。
このため、上には紺色の半袖シャツを着ることにしたのだ。

アスカがシャツを着ている時、玄関のチャイムが鳴った。もう、7時になっていた。

「あ、森川さんだ。」
シンジは玄関に向かった。

「森川さん、おはよう。」
シンジはそう言うと、ユキをリビングに案内した。

「ちょっと待っててね。アスカを連れてくるから。」
シンジはアスカの部屋に入り、暫くしてからアスカをリビングに連れて来た。

「おはようございます、惣流さん。今日は、巻き物にしました。」
ユキはそう言って、テーブルの上に太巻き、ネギトロ、鉄火巻きなどを広げだした。

「ユキ、おはよう。じゃあ、食べましょう。」

かくして、3人は今日も楽しくおしゃべりしながら食事をした。


***


朝食が済んだら、直ぐにアスカとシンジはネルフへと向かった。
ユキは残って、掃除や洗濯を引き受けてくれることになった。
アスカ達は、ユキにお礼を言ってから出かけた。

ネルフでの用事は、簡単に済んだ。
マヤは、アスカ達が急に現れたため驚いた顔をしていたが、
MAGIでチェックして問題無しと分かると、かなり大げさにお礼を言った。

「アスカちゃん、こんなに早く出来るなんて思わなかった。
本当に助かる。もう、神様、仏様、アスカ様、シンジ様だわ。
お礼に何でも言うことを聞いてあげるわ。」

「実は、青葉さんに頼み事があるんですけど、マヤさんからも頼んで欲しいんですが。」

「シンジ君が。もちろん、いいわよ。」

「お願いします。じゃあ、悪いけど、アスカはここで待ってて。」

「ええ、いいわよ。行ってきなさいよ。」

こうして、シンジとマヤは青葉シゲルの元へ向かった。


***


40分後、シンジはシゲルにお礼を言っていた。

「すみません、無理なお願いをしちゃって。」

「いや、シンジ君の役に立てて、嬉しいよ。」

「トウジは何て言っていましたか。」

「ああ、快く、了解してくれたよ。
シンジ君のことを、『幸せになって欲しい』とも言っていたよ。」

「そうですか。トウジは、友達思いの良い奴なんです。」

「でも、さっきは驚いたよ。まさか、シンジ君から、恋の相談を受けるとはね。」

シゲルは、シンジを刺激しないように、落ち着いた口調で話した。

「僕も驚いているんです。
最初会った時は、アスカのことを高慢ちきで嫌な女だと思っていました。
でも、違ったんです。アスカは口は厳しくても、本当は優しいんです。
けれど、アスカのプライドが邪魔をして、中々素直になれないんです。
最近そのことに気付いてからは、アスカのことが気になって、夜も寝つけないんです。
これじゃあいけないと思って、何度かアスカに好きだと言おうと思ったんですが、
アスカを目の前にすると何も言えないんです。
何か、きっかけがないと駄目なんです。」

「だから、それは今回俺が作ったから、何とかモノにするんだよ。
まあ、相手があのアスカちゃんだから、バチーンと一発やられるだろうけど、怯んじゃいけないよ。
攻めて攻めて攻めまくるんだ。」

「はい、頑張ります。」

「おそらく、トウジ君は一緒に告白しようと言ってくるだろうから、ウンと言えばいい。
後は、アスカちゃんの前で勇気を振り絞ってごらん。
シンジ君の言うように、誰かと一緒に告白した方が少しは気が楽だろう。」

そう言って、シゲルはウインクした。

つい20分ほど前、シンジはシゲルに恋の相談をした。
アスカが好きでたまらないが、断られるのが怖くてどうしても告白出来ない。
誰かと一緒に告白すれば、或いは勇気を出せるかもしれないから、何とかトウジを説得して欲しいと。

(青葉さん、騙したようでごめんなさい。これも、トウジのためなんです。)
シンジは、心の中でシゲルに謝るのだった。


***


さらに20分後、車椅子に乗ったアスカとシンジがトウジの所に訪れた。
ヒカリも一緒だった。

「トウジ、調子はどうかな。」

「鈴原、元気?」

「鈴原、死んでない?」

三者三様の問いかけだった。

「ああ、調子はええ。センセはどうや。」
トウジはシンジに問いかけたが、アスカが遮った。

「コイツ、全然駄目よ。気が利かないし、役に立たないし、もう最悪!
全く、バカシンジなんだから。そのうち、生ゴミに出そうかしら。」

「ちょっと、アスカ、言い過ぎよ。」

ヒカリがさすがにたしなめる。

「いいのよ、こんなウジウジした奴。
こら、バカシンジ!アンタのせいで、ヒカリに文句言われちゃったじゃない。
謝りなさいよ!このバカ!」
アスカは、キツイ顔をしてシンジを睨んだ。

「ごめんよ、アスカ。」
シンジはうなだれた。

そんなシンジの様子をしばらく見ていたトウジだったが、たまりかねて声をかけた。

「ちょっと、センセ、こっち来いや。」


 トウジは、シンジをアスカ達から見えない所へと連れて行った。

「どないしたんや、センセ。惣流にやり込められて。悔しくないんか。」

「いいんだ。実際、僕は意気地なしだし。」

「ああ、もう。センセは惣流のこと、好きなんやろ。さっさと、告白しいや。」

「僕には、そんな勇気はないよ。
トウジだって、そうだろう。
洞木さんのことが好きなのに、何も言えないじゃないか。
僕だって同じだよ。」

シンジは、トウジがヒカリのことを気に入っていることを知っていた。

「おっ、言ってくれるやないか。
じゃあ、約束や。
ワイは、これから委員長に告白するから、センセも惣流に告白するんや。
男と男の約束や。」

「ト、トウジ…。」

「約束や!」
トウジはシンジのことを澄んだ目で見つめた。

「わ、わかったよ。」
シンジは、トウジと目を合わせられなかった。



シンジとトウジが戻って来たのを見て、アスカが声をかけた。
「なによ、二バカで、何の相談。どうせ、いやらしいことでしょう。」
アスカは鼻で笑う。

だが、トウジはアスカを相手にせずにヒカリの前に立った。
同様に、シンジもアスカの前に立った。
トウジの合図を皮切りに、二人同時に告白を始めた。

「い、委員長。ワイは、委員長のことが好きや。付きおうてくれ。」
「ア、アスカ。僕は、アスカが好きだ。付き合って欲しい。」

これに対する反応は、天と地の差があった。
ヒカリは、赤くなりながらも直ぐにコクリと頷いたが、アスカはいきなりシンジの頬を引っぱたいた。

「バシーン。」
乾いた音がして、シンジの頬は、真っ赤になった。

「アンタ、バカァ!
こんなとこで、いきなり告白なんて、デリカシーってもんが無いの!
一体、何考えてんのよ!
ホント、あったま来るわね!
ふざけんじゃないわよ!」

アスカの凄まじい怒鳴り声にびっくりしたトウジとヒカリだったが、さらに驚くべきことが起きた。
シンジが急に、アスカの口を自らの口で塞いだのだ。
左手を挙げてシンジを殴ろうとするアスカを、シンジの右手がつかんで止めた。
アスカはしばらく抵抗したが、次第に抵抗が弱まっていった。

二人の様子を近くで見ていたトウジも、意を決したようにヒカリにキスをした。
こちらはシンジと違い、最初から全く抵抗を受けなかった。

こうして、2組のカップルの熱いキスが続いた。


***


2組のカップルは、お昼に食堂で鉢合わせした。
4人とも、出会うと同時に真っ赤な顔になった。
その中で、最初に口を開いたのは、ヒカリだった。

「ア、アスカ達は、どうなったの。」
ヒカリの顔はまだ赤い。

「う、うん。多分、ヒカリ達と同じだと思う。」

「えっ。じゃあ、碇君と付き合うの?」

「お、おかしいかな。」

「ううん、そんなことないよ。ねっ、トウジ。」

「そ、そや。二人とも、お似合いや。」

「そ、そう。ありがと。」
アスカは、恥ずかしそうにもじもじしていた。

そんなアスカを見て、トウジは驚いた。
さっきまでのキツイ顔が信じられない位、穏やかで照れた顔をしていたからだ。

「ほお〜、惣流も、年貢の納め時か。」

「ふ、ふん、いいでしょ。
アンタだって、同じじゃない。
変なこと言うと、ヒカリから怒ってもらうわよ。」
アスカは、頬を膨らまして言ったが、刺の有る口調ではなかったので、トウジは安心することが出来た。

「そりゃ堪忍や。」

「まあいいわ。こうなったからには、乾杯よ。」

「へ?」
と、トウジ。

「いいの。アタシが乾杯って言ったら、乾杯なの。ジュースでいいから。」
アスカはジュースを頼み、来たと同時に乾杯を急かした。

「じゃあ、二組のカップルが出来たことに乾杯するわよ。
もてない男どもに、可愛いくて素敵な彼女が出来たことを祝して、かんぱ〜い!」

「かんぱ〜い。」
「かんぱ〜い。」
「かんぱ〜い。」

残る3人も、アスカに合わせて乾杯した。
こうして、和やかな雰囲気になったところで、4人とも普段よりも恥ずかしそうにしゃべるのだった。


***


その頃、発令所は大騒ぎだった。
シンジがアスカに告白するという話を聞いたマヤは、悪いと思いつつも覗き見することにしたのだ。

しかも都合のいいことに、シンジ達が告白した場所、つまり、アスカ達が居た場所は、
何故か監視カメラの真ん前だったので、かなり鮮明な映像が得られたのだった。
それだけなら良かったのだが、マヤはうっかりしてメインスクリーンに映像を写してしまったのだ。

こうして、シンジの告白シーンと二人のキスシーンは、ネルフ職員の多くが知るところとなった。


***


昼食の後、シンジとアスカはチルドレン専用の休憩室に来ていた。
ここならば、誰も入って来ないからだ。

「シンジ、さっきはごめんね。痛かったでしょう。」
アスカはシンジの頬を優しく撫でた。

「大丈夫だよ。それに、トウジ達も嬉しそうだったし、良かったよ。」

「そうね。シンジのお蔭ね。ヒカリも喜んでいると思うわ。ありがとう。」

実は今日の朝、アスカはシンジに計画を打ち明けた。
このまま行くと、ヒカリとトウジはすれ違いになる可能性がある。
ならば、今のうちに二人をくっつけてしまおうというものだった。
そのため、昨日のうちにアスカはヒカリをここに来るよう呼んでいたのだ。

だが、シンジには、別の思惑があった。
シンジは、シゲルやマヤを始めとするネルフの人達に、
シンジとアスカが付き合っているという事をオープンにしたかったのだ。
さらに、シゲルやマヤに、シンジとアスカの仲が進展したのは、
シゲル達が1枚噛んでいると思わせたかったのだ。
そうすれば、少なくともマヤやシゲル達は一度手を貸した手前、
シンジとアスカが一緒にいられる時間が出来るように配慮してくれるだろうし、
ネルフの中でアスカに変な虫がつく可能性が大幅に減ると思ったのだ。

この思惑はうまくいき、シゲルとマヤは、シンジ達が付き合うようになったのは、
自分達が仲立ちをしたおかげだと思うだろう。
後でアスカが気付いても、アスカもマヤを騙したことになるから、本当のことは言えないはずだ。

後は、アスカとの仲が進展したり後退したりした時に、シゲルやマヤに相談すれば、
良い助言を得られるだろうし、色々な手助けも期待出来る。
『将を射んとすれば、まず馬を射よ』という格言がシンジの頭の中に浮かんだ。
ちょっと違うような気がするが、今のシンジは気付かない。
シンジは、思わずにっこりする。

シンジは、ふと、我に返った。
目の前には、お礼の言葉を言うアスカがいた。
シンジは、少し考えた後で恥ずかしそうに言った。

「僕のお蔭なら、何かご褒美があると嬉しいな。」

アスカはそんなシンジを見て、『クスッ』と笑い、口を尖らした。
シンジは直ぐにアスカの意図を理解し、微笑みながらキスをした。


次話に続く
 
 
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キャラ設定:洞木ヒカリ

アスカの親友。2002年2月18日生まれ。市立第一中学に在籍する。
クラスの委員長で、割合真面目な性格である。
アスカの協力によって、かねてから想いを寄せていたトウジと恋人同士になった。


written by red-x
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