新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS

第1部 婚約に至る道

第18話補完 守る理由


暗い部屋の中で、一人の男が画面を見つめていた。
その画面には、初老の男が写っていた。
男は、彼のことを『盟主』と呼んでいた。

「盟主様。」

「何だ。」

「惣流・アスカ・ラングレーから、連絡が入りました。」

「で、内容は?」

「惣流・キョウコ・ツエッペリンの件ですが、かなり時間がかかると。
現時点では、生死の確認まで至らないとのことです。」

「何っ。それでは、生きているかもしれないと言うことか。」

「その点については、分からないとしか言いようがないそうです。
これには、かなり深い裏がありそうです。」

「そうか…。で、他に何か言っていなかったか。」

「はっ。他のパイロットの警備をして欲しいとのことでした。
今のネルフでは、パイロットの警備には不安があるとのことです。
どういたしましょうか。」

「いいだろう。言う通りにしてやれ。だが、中学校の中までは難しいぞ。」

「それについては、彼女が手筈を整えるそうです。」

「分かった。で、第3新東京市のガードはどうなっている?」

「はっ。サードインパクト以降、10を超える組織が侵入を図っていますが、全て水際で撃退しています。
特に最近では、MAGIのサポートがあるため、こちらに被害は殆どと言っていいほど出ていません。」

「いいだろう。これからもその調子で頼む。」

「ただ、これには、惣流・アスカ・ラングレーから要望がありまして。」

「何だ。」

「あと一月後には、侵入を試みる敵対組織が質量共に激増するとのことで、
これに対処してほしいとのことでした。」

「ふうむ、では、レッドアタッカーズを使うとするか。」

「良いのですか。彼らとジャッジマンとの間で、一悶着あったと聞いていますが。
特に、レッドウルフとの間に。」

「彼もプロだ。心配は無用だ。それよりも、2月中に送り込むから、手配するのだ。」

「はっ。でも、これだけのことをする価値があるのでしょうか。
かかる経費も膨大なものになります。
我が組織にとって、どのような利点があるのでしょうか。」

「これは、我が組織にとって、大きな賭だ。
我々がネルフに加担すれば、ネルフはゼーレに勝つ可能性がある。
そうなった時、ネルフは非公開とはいえ、表の組織だから、裏世界を纏めることは出来ない。
そこで、我々の出番となるわけだ。
その時の利益は計り知れないだろう。
これまでに要した費用など、たかが知れている。」

「なるほど。」

「ネルフが我々を公認するとも思えんが、黙認ぐらいはしてくれるだろう。
だが、それだけでは心もとない。
だから、エヴァのパイロットとの信頼関係を築いておく必要がある。
エヴァのパイロットとの信頼関係が深ければ、他の組織への睨みも利くだろう。」

「そこが分からないのですが。
何故、エヴァのパイロットとの信頼関係が必要なのでしょうか。」

「何故、エヴァが他国から軽んじられているのか、知っているだろう。」

「ええ、あれは局地戦以外に使えませんから。
電源ケーブル無しでは5分しか動けないんじゃあ、兵器としては使い物になりません。」

「その弱点が無くなるとしたら。」

「ええっ!ま、まさか。」

「使徒が来てから他の組織は引き揚げていったから、あまり知られていないが、
エヴァは電源ケーブル無しで動いたこともあるのだ。」

「!」

「今後、エヴァは無敵の兵器となるだろう。
そして、パイロットの重要性はますます高まるだろう。
敵対する組織や国に対して、エヴァを送り込むぞという脅しが利くだろう。」

「ですが、そううまく言うことを聞いてくれるでしょうか。」

「『演習』を行う場所くらいは、我々の言う通りにしてくれるだろうよ。」

「た、確かに、それ位なら大丈夫でしょう。」

「だが、そのためには、彼らの機嫌を損ねることがあってはならんのだ。
分かるな。特に碇シンジは、人が傷付くのを嫌うという。
だから、その点は最大限に気を遣う必要がある。
そのためには、並の傭兵では駄目だ。」

「それは分かりました。でも、なぜ、惣流・アスカ・ラングレーなのですか。」

「いくら何でも、ネルフ総司令の息子は言うことを聞かないだろう。
それに、綾波レイは行方不明と聞く。
鈴原トウジでは役不足だ。」

「消去法ですか。私からすると、あのように頭が切れすぎる相手は苦手なのですが。」

「だが、彼女は人を裏切ることはないだろう。
過去の経歴を調べたが、彼女は今まで一度たりとも、自分から人を裏切ったことは無い。
どんな小さなことでもだ。
ドイツでは、かなり酷い目に遭ってきた故に、かなり攻撃的な性格をしているようだが。
普通なら心がねじ曲がってもおかしくないのだが、彼女は辛い経験故、裏切りを忌み嫌うのだろう。
彼女の信頼を曲がりなりにも勝ち得たのは幸運だった。
我々の調べでは、ドイツにおいて彼女の信頼を勝ち得ていたのは、
加持リョウジと葛城ミサト、それに数人位だそうだ。」

「分かりました。では、例の件で、さらなる信頼を得られそうです。」

「絶対に彼女を守るのだ。
万一、彼女が死ぬようなことがあれば、我々の努力は水の泡となる。
それだけは避けるのだ。」

「はっ。」

男が返事をすると同時に通信は切れ、それまで盟主と呼ばれた男が写っていた画面には、もう何も写っていなかった。

「惣流・アスカ・ラングレーか。
盟主様のお遊びと思っていたが、どうやら我が組織の浮沈にかかる大事のようだな。
気を入れ直さんとな。」

男はそう呟くと、部屋を後にした。



次話に続く                
 
 
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あとがき


謎の組織の目的が、徐々に分かってきました。少なくとも、今のところは味方です。
今後については、どうするのか思案中です。


written by red-x
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