新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS

第2部 ゼーレとの戦い

第28話 試写会


文化祭の2日前に、ようやく映画が完成した。
シンジが怪我をするというというアクシデントがあったが、
幸いにもシンジの分の撮影は終わっていたため、スケジュールには影響は出なかった。

そして、映画の最終チェックと称して、クラス全員で試写会を行うことになったのである。
場所は、映画上映を予定している場所と同じ体育館だ。
既にケンスケの手配によって、映画を上映するための機材の搬入や設置は終わっていた。

体育館の中では、既にクラス全員と、ミサト、リツコ、加持、ユキらがいる。
皆、試写会が始まるのを待ちわびているのだ。

「よ〜し、試写会開始!」

ケンスケは上機嫌だった。そして、その合図で映画が始まった。


***


最初に、セカンドインパクトの映像が大写しにされる。
CGだが、かなりリアル感のある映像に仕上がっている。
南極に赤い光が広がり、その中からいく筋かの光る羽が生えてくる。
ごく短い時間だが、光る巨人が映される。

そして、テロップが流れる。

『セカンドインパクト。
それは、第1の使徒アダムと第2の使徒リリスから人類を守るため、引き起こされた災害。
だが、人類を影で操る謎の組織「ゼーレ」は、
真実を包み隠し、巨大隕石が原因だと発表し、世間を欺こうとした。』

海に漂うカプセルが映る。

『南極にいて、唯一助かった少女、葛城ミサトは、
後に使徒から人類を守るために結成された国連所属の非公開組織「ネルフ」の司令となる。』

カプセルからは、少女時代のミサトが現れる。

『そして、将来彼女の部下に、人類を救う救世主、
惣流・アスカ・ラングレーが作戦部長として迎えられる。』

壱中の制服を着たアスカが大写しになる。
そして、アスカの背後から、金色に輝くタイトルが浮かび上がる。

「救世主アスカ −使徒&ゼーレVSエヴァンゲリオン−」

タイトルが徐々に薄くなっていったかと思うと、急に海に変わる。
そして、その海から突如として使徒が現れる。
その使徒に戦車隊が集中砲火を浴びせるが、使徒は悠々と上陸していく。
本物の使徒の映像を使っているため、物凄いド迫力である。

『急に現れた第3使徒。だが、使徒に通常攻撃は通用しない。』
テロップが流れる。そして、場面は急にネルフの発令所へと移る。
正面のスクリーンには、使徒の姿が大写しになっている。

「15年ぶりね。」

『ネルフ総司令葛城ミサト』というテロップが流れる。

「そうね。間違い無いわね。」

『ネルフ技術部長赤木リツコ』というテロップが流れる。

「じゃあ、そろそろアタシ達の出番ね。マコト、マヤ、エヴァの準備はいいわね。」

『ネルフ作戦部長惣流・アスカ・ラングレー』というテロップが流れる。

「はい、パイロットの用意は完了しています。」

『ネルフ作戦部部長代行日向マコト』というテロップが流れる。

「はい、エヴァンゲリオンの出撃準備も完了しています。」

『ネルフ技術部部長代行伊吹マヤ』というテロップが流れる。

「ミサト、こっちはいつでもOKよ。」

アスカは、ミサトの方を向いて叫ぶ。

「分かったわ。もう少し待ってて。」

使徒に大型ミサイルが直撃するが、何ら効果が無い。次にN2地雷が爆発する。だが…。

「爆心地にエネルギー反応!」

『ネルフ作戦部青葉シゲル』というテロップが流れる。

「やっぱり、通常兵器は通用しないわね。」

アスカが腕を組んだ姿が大写しにされる。

「国連軍から、指揮権が委譲されましたっ。」

シゲルが叫ぶと同時に、ミサトが命令を下す。

「いいわよっ、アスカ!やっちゃって!」

「オーケー!シンジを呼び出して。」

アスカが言うなり、スクリーンの一部にシンジが映る。

『ネルフ作戦部所属パイロット碇シンジ』というテロップが流れる。

「アスカさん、準備出来てます。」

「よ〜し、エヴァンゲリオン、発進!」

アスカの声と派手な身振りと共に、エヴァが射出される。そして、使徒と対峙する。

「シンジ、訓練通りにやって。緊張しないでね。」

「分かった。」

こうしてエヴァは、使徒に飛び掛かっていく。だが、使徒の手前の光の壁に激突した。

「シンジ、その壁を中和して、こじ開けて。」

その言葉通りに、エヴァは光の壁をこじ開けて、使徒の手を掴み蹴り飛ばす。

「良いわよっ!そのまま攻撃よっ!」

エヴァは使徒に馬乗りになって、もぎ取った使徒の胸の骨のようなものを何度も打ち下ろした。
すると、使徒はエヴァに張り付き、その身を丸めた。

「シンジ、使徒は自爆するかもしれないわよっ。直ぐに離れて!」

アスカの言葉にエヴァは使徒から離れたが、その瞬間、使徒は大爆発を起こす。

「自爆か。勝ったわね。」

アスカは腰に手をやり、胸を張った。アスカお得意のポーズだ。

「アスカさん、助かったよ。ありがとう。流石は、名作戦部長。」

爆炎の中からエヴァが現れ、シンジの顔がスクリーンに映った。

「はんっ!そんなこと言っても何も出ないわよ。」

「ちぇっ。残念。」

そして、発令所内には笑い声が響いた。


***


急に場面は変わって、第壱中学校が大写しされる。
のどかな学校生活が映し出され、2年A組のメンバーの日常の行動が次々と映し出される。

ある者は笑い、ある者は怒り、ある者は騒ぐ。

その中で、アスカの大声が響きわたる。

「シンジ!今日は訓練よっ!忘れないでっ!」

「分かったよ、うるさいなあ。」

「うるさいとは何よっ!」

バチーンと音がしたかと思うと、シンジの頬に真っ赤な紅葉が出来上がる。

「なんや、賑やかやな。」

『ネルフ作戦部所属パイロット鈴原トウジ』というテロップが流れる。

「いつものことでしょ。」

『ネルフ作戦部所属パイロット洞木ヒカリ』というテロップが流れる。

窓の外を眺める綾波も映る。

『ネルフ作戦部所属パイロット綾波レイ』というテロップが流れる。

「平和だねえ〜。」

ケンスケが呟く。


***


その後も、アスカの素晴らしい作戦と類まれなる優れた指揮により、ネルフは次々と使徒に勝利していく。

第4使徒は、コアの存在に気付いたアスカの指示によりシンジがコアを攻撃して、使徒を倒す。

第5使徒は、バルーンダミーを出した途端加粒子砲で攻撃してきたため、アスカはエヴァ出撃を延期。
戦自から借りた陽電子砲でシンジが遠距離から狙撃し使徒を倒すが、零号機が初号機をかばい大破する。
その結果、綾波レイが大怪我をする。

第6使徒は、ドイツから運ばれてきたエヴァ弍号機に襲いかかってきた所を、
初出撃のトウジとヒカリのペアが、アスカの見事な作戦によって倒す。

第7使徒は、シンジとトウジのペアで挑むが、敗北を喫す。
そして、アスカの発案によりシンジとトウジはユニゾン訓練を行い、見事再戦に勝利する。

第8使徒は、ヒカリが捕獲に成功するが、使徒が成長したため殲滅に移行する。
苦戦するヒカリに、アスカが冷却パイプを切って使徒の口の中にいれるよう指示し、見事勝利する。
だが、命綱が切れて沈んでしまい、初号機に乗ったトウジがヒカリを助ける。

以後も、アスカの見事な指揮と、シンジ、トウジ、ヒカリ、綾波といった
パイロットの頑張りによって、使徒に勝利を納めていく。
CGを用いて、若干事実と異なる使徒の最期を演出したりする。

最期の使徒を倒した後、闇の組織ゼーレの存在が明らかになる。
存在が明らかになったゼーレは、戦自を使って圧倒的な戦力でネルフを包囲する。

圧倒的な戦力差に絶望しかけ落ち込んだアスカとヒカリに、
シンジとトウジが愛の告白をして、勇気を取り戻す。
もちろん、使われた映像は、以前マヤが撮ったものである。


一方の戦自も、内部で反抗する者が現れ士気が下がる。
一部若手幹部がネルフ侵攻に反対し、サボタ−ジュをした。

実は、この出演者達は現職の戦自の兵士達である。
ケンスケの叔父は戦自におり、ケンスケがエヴァ絡みの映画を撮ることを知って、
是非にと出演を頼み込んだのだ。

出演者達は、実際にネルフ侵攻に反対して一時監禁されていた者達ばかりであった。
なお、このことによって、後日戦自とネルフとの対立緩和に一役買うことになる。


このような状況下で、ゼーレとネルフの戦いが始まった。
当初は有利に戦いを進めていたゼーレだったが、
満身創痍となった零号機の自爆攻撃により、ネルフが攻勢をかける。

だが、ゼーレが投入してきた量産型エヴァによって形勢は一挙に逆転し、
初号機によるサードインパクトが始まろうとしていたまさにその時、アスカが涙を浮かべて叫んだ。

「シンジ!愛しているわっ!死なないでっ!」

その声に我に返ったシンジは、戒めを振りほどき、量産型エヴァを一瞬にして倒す。
こうして、ネルフは一時の勝利を得た。


***


戦いの後、総司令のミサトは重傷を負って手術をするが、その甲斐もなく心臓の鼓動が停止する。
そこへ顔面蒼白となった加持が現れ、号泣し、ミサトにキスをする。

『この時、愛の力が奇跡を呼んだ。』というテロップが流れる。

「かつらぎ!」

加持は、大声で叫んだ。

「もう、どこにもいかないで…。」

ミサトの目も涙でくしゃくしゃだった。

「もう、離すもんか。葛城、結婚してくれ。俺は、お前のことを愛しているんだ。」

それを聞いたミサトの目は、大きく見開かれたが、すぐに小さな声で返事をした。

「うん…。うれしい…。」
ミサトの顔は、真っ赤だった。

「パチパチパチパチ…」

周りにいる者は、祝福の拍手を惜しげなく送った。


***


さらに場面が変わって、夜のバルコニーにアスカとシンジが立っている。
シンジは、意を決したようにアスカにプロポーズする。
これに対して、アスカはシンジに3つの誓いを立てさせる。

シンジが誓い終わると、二人は熱い抱擁を交わし、熱情的なキスをした。

「アスカ、愛しているよ。これからも、アスカを守るために、命をかけて戦うよ。」

「うれしい…。アタシも頑張るわ。二人で戦いましょう。」

再び二人は熱いキスをする。

『こうして、悪の組織「ゼーレ」の侵攻を防いだネルフだが、これからも戦いは続く。
愛するシンジと力強い仲間達の助けを借りて、明日もアスカは戦い続ける。
人類の平和と未来を守るために…。』

テロップが流れると同時に、英語の歌が流れる。
今人気急上昇のシンガー、セイレーンの歌だ。
そして、アスカとシンジの二人は、影となり、闇に消えていく。

『これは、一部映画用に脚色しているが、ノンフイクションである。
ゼーレとネルフの戦いは、今も現実に続いている。
アスカ、シンジ、トウジら少年少女達は、今も戦い続けているのだ。
人類の平和と未来のために。』

そのテロップがしばらく流れると歌が終わりを迎え、映画は終了した。


***


「すっご〜い!感激!」

「あの使徒って、凄いド迫力だったな。」

「エヴァも、物凄く迫力があったよなあ。」

「アスカさんって、格好良かったわねえ。」

「碇君も、格好良かったわ。」

クラスメート達は、感動と感激に包まれていた。


だが、例外もいた。

「ア、アスカにやられた…。まさか、公開するなんて…。
でも、アスカとの仲が公認になったから、良しとするかな。」

「おのれ〜、惣流め。やりおったな。ケンスケも同罪や。」

「きゃっ、恥ずかしい。でも、鈴原の恋人役で、良かったかなあ。」

「げっ。あれって、この映画に使う奴だったの。忘れてたあ〜。」

「くっ。この俺が泣く姿を撮られるなんて、不覚だ。」

「相田君って、名監督だったのね。」

「あら、あれが有名な、シンジ君の告白シーンなのね。」

「みんなが感激してくれて、嬉しいなあ。」

「げっ。アタシ、愛しているわっ、なんて言っちゃったんだ。恥ずかしい。」

こうして、とにもかくにも映画の試写会は、無事に終わった。


***


その後、公式のネルフ組織図が配られた。
現役のエヴァのパイロットは、シンジとトウジの二人だけとなっていた。


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○特務機関ネルフ組織図 

 総司令官:碇ゲンドウ(映画では葛城ミサト)
 副司令:冬月コウゾウ (映画では未登場)

 世界主要国に支部有り。


○本部組織図

・総務部  総務部長:冬月コウゾウ(副司令兼務)

・作戦部  作戦部長:葛城ミサト(映画では惣流・アスカ・ラングレー)

      部長代行:日向マコト チ−フ:青葉シゲル 

      Evaパイロット     チ−フ:碇シンジ、サブ:鈴原トウジ

・技術部  技術部長:赤木リツコ

      部長代行:伊吹マヤ

・広報部  広報部長:マリス・アマリリス(映画では未登場)

                 チ−フ:惣流・アスカ・ラングレー
  
・保安部  保安部長:真田ヒロシ(映画では未登場)



次話に続く
 
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あとがき

 ようやく映画が完成しました。トウジがヒカリに告白したシーン、加持がミサトに告白
したシーン、シンジがプロポーズしたシーンが映画の中で使われました。


written by red-x
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