新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS

第2部 ゼーレとの戦い

第28話補完 ガード


ネルフ内の会議室に、加持、ジャッジマン、レッドウルフが集まっていた。
チルドレン達のガードを強化するためである。

最初にジャッジマンが口を開いた。

「既に、私の部下の女性が2名、教師として第壱中学校に入っている。
それ以外に、明日にでも女生徒1名、男生徒2名も転校させる予定だ。
これに加えて、女生徒を各クラスに1名ずつ計4名を連絡要員として送り込むつもりだ。
学校内では、これ位で十分だろう。」

「ほう、大したもんじゃないか。」

加持は微笑む。だが、目は笑っていない。
あまりの手際の良さに、警戒しているのだ。
加持は、『盟主』がアスカをガードするよう指令を出していることを知らないため、
何か裏があると勘繰ったのだ。だが、ジャッジマンは気付かないフリをした。

「こっちは、特に頼まれていないから、何もしていないけど、どうするの、加持さん。」

今度は、レッドウルフが口を開いた。

「そうだな。シンジ君、トウジ君、アスカに、各2名ほど、ガードを付けて欲しい。」

「惣流アスカに、ガードは必要ないんじゃないか。」

「アスカは、やりすぎることがあるのさ。だから、そのための歯止めも必要なんだ。」

「あっ、なるほどねえ。それなら分かるや。了解した。
早速今日中に人選して、明日にでもガードを付けるよ。」

「ああ、頼む。それ以外にも、頼みがあるんだが。」

「いいよ、言ってみて。」

「作戦部長と技術部長にもガードを頼みたいんだが。」

「ああ、加持さんのフィアンセとその友達だね。良いよ。
2人位で良いかい。でも、学校の中と、ネルフの中はどうするの?」

「学校にいる時は、学校の外で待機していて欲しい。アスカ達のこともあるし。
ネルフ内にいる時も、同様にネルフ外で待機して欲しい。」

「ああ、良いよ。」

「悪いな。感謝するよ。」

だが、加持がそう言った瞬間、レッドウルフの携帯電話が鳴った。

「ちょっと、ごめん。」

レッドウルフは加持達に背を向けると、電話の相手からの報告を聞いていた。
そして電話が終わると、加持の方を向いた。

「ねえねえ、加持さん。
惣流アスカ達には、ジャッジマンの部下とワイルドウルフのガードが張りついているよ。
葛城さん達にもね。それなのに、まだ必要なのかな。」

「お、おい。それは初耳だぞ。」

「しかも、彼らはネルフに入れるパスを持っているみたいだよ。ねえ、ジャッジマン。」

それを聞いた加持はジャッジマンを睨むが、ジャッジマンは素知らぬ顔をした。

「おい、ジャッジマン。どういうことだ。」

「パーティーの時に言ったろ。お前の彼女は狙われているんだ。
守って何が悪い。見殺しにした方が良かったのか。」

それを言われると、加持も弱い。それ以上は、責められなくなる。

「ワイルドウルフは、おそらく惣流アスカの指図だよ。そう考えるのが自然だね。
フィアンセが襲われたのが、よっぽど堪えたみたいだね。」

「アスカか。う〜ん、後で聞いてみるか。で、一体何人付いているんだ。」

「え〜と、ワイルドウルフは、惣流アスカ達パイロット3人と、作戦部長、技術部長、
洞木ヒカリとその姉妹、森川ユキとその弟妹、相田ケンスケ、
それに加持さんに各2人付いているね。」

「お、おい、俺にもか。」

「ああ、そうだよ。
それに、ジャッジマンの方は、惣流アスカ達パイロット3人と、作戦部長、技術部長、
洞木ヒカリ、森川ユキに、これまた各2人だね。
これ以上付けてもいいのかな。」

「いや、もう良い。」

加持は、げんなりしたように言った。だが、ジャッジマンが再び口を開いた。

「いや、良くないな。俺の部下達は、学校以外からは手を引く。
その後をレッドアタッカーズが引き継いで欲しい。」

「そうかい、僕はいいけど、加持さんはどうかな。」

「…任せる。」

そう言って、加持はうなだれた。
自分の知らない所で話が進みすぎているのに、少々うんざりしたからだ。

これで、アスカ達には、常時ワイルドウルフのガードが各2人、
レッドアタッカーズのガードが各2人、計4人付くことになる。
加えて、学校内には、チルドレンのガードが大人2人、子供3人付くことになった。

そして、次は第3新東京市の防備とゼーレの情報収集に話が移った。


***


一方その頃、とある病院で大勢の中学生が入院していた。
皆、アスカの中学の生徒達だ。皆体に包帯を巻いていた。
その中には、森川ユキの友達の佐藤ミキもいた。
佐藤ミキは、シンジを公園に呼び出した少女だ。

「あ〜あ、これで1カ月は、学校に行けないなあ。」

ミキはぼやいた。

「文句言わないの。田中君なんか、両手が複雑骨折で、3カ月は入院だって言うし。」

ユキは、そう言ってなだめた。

「そうよねえ。1カ月の入院で済んだことに感謝すべきかもね。」

そう、シンジに天誅を加えようと企てた者達は、皆不慮の事故などに遭って、入院していたのだ。
しかも、全員が事故の原因を決して言わなかった。

後日、ネルフが少年達を襲ったという噂が流れた。
だが、事実はネルフは関係無く、裏でアスカの意を汲んだワイルドウルフが動いていた。

ミキもアスカの呼び出しを受けて、『腕の一本も、もらおうかしら。』と言われ顔面蒼白になったのだが、
ユキが何とかとりなして、怪我したフリをして1カ月入院するということで許されたのだ。

アスカは、シンジを痛めつけた連中を一人残らず病院送りにすることにした。
アスカは、裏でゼーレが動いていると考えたのだ。
だとすれば、今後素人でシンジを襲おうと考える者が出ないように、徹底的に叩く必要があったのだ。

碇シンジに手を出すと痛い目に遭うことが分かれば、普通の人間ならば同じ事はしない。
しかも、単に手引きした者でさえも病院送りになるとすれば尚更なのだ。
だから、アスカは必ず佐藤ミキを病院送りにする必要があると判断したのだ。

アスカは、相手が素人であろうと甘くはなかった。
プロも恐ろしいが、素人も数が多いと脅威となる。
対応を誤れば、シンジの命を危険にさらすことになるからだ。
事実、高校生達がやり過ぎていれば、シンジは亡き者になっていた可能性もあるのだ。

そのため、独断でワイルドウルフを使って事の真相を探り、シンジ達のガードもさせることにしたのだ。
結局、ゼーレは無関係であることが分かったのだが、真相を探る過程で相手を徹底的に痛めつけ、
結果として悪巧みに加担した者は、全員病院送りになったのだ。


こうして、シンジを襲った者、襲わせようと企てた者は、皆病院送りとなった。
このため、以後シンジを襲おうと考える者は皆無となった。



次話に続く  
 
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あとがき

アスカは、シンジや友人を守る為に、加持に内緒でワイルドウルフとも手を結びました。
アスカには、ワイルドウルフとのつながりがあったから、そんなことが出来たのです。
そのつながりとは…。次話以降に明らかになっていきます。

written by red-x
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