新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS

第2部 ゼーレとの戦い

第28話補完その2 スパイ疑惑2


ネルフ内の司令室に、ゲンドウ、冬月、加持の3人が集まっていた。

「どうだね、加持君。アスカ君の様子は?」

冬月が少し不安そうに尋ねる。

「正直言って、私は、アスカがスパイなんて有り得ないと思っていました。
しかし、先日の一件以来、不安が増してきているのも事実です。」

先日の一件とは、シンジが襲われた時のことだ。
加持がかけつけた時、アスカは多くの高校生達を叩きのめしていた。

「アスカが叩きのめした高校生達は、例外なく、両手両足の骨が折られていました。
おそらく戦っている最中に折ったものと思われますが、これは、私でも困難なことです。
どうもアスカは、私も知らないような特殊訓練を受けているとしか思えません。」

「そうかね。では、アスカ君はやはりスパイの可能性が高いか。」

「しかし、それにしては腑に落ちないことが多いのも事実です。
アスカは、結局ドイツ支部に戻らない選択をしました。
それに、先日の一件もシンジ君を助けようと思ってのことです。
アスカがスパイならば、そのような事はしないはずです。」

「ふむ。しかし、我々を安心させようと思ってのことかもしれんな。」

「ならば、他の方法があるはずです。
アスカは、シンジ君が襲われて半狂乱になって高校生達を叩きのめしたのです。
それが何を意味するかはお分かりでしょう。」

「そうだな。私もパーティーでのアスカ君のあの笑顔が、偽物とは思えないのだよ。」

「アスカは、間違い無くシンジ君のことを好きか、それに近い感情を抱いています。
万一、スパイだったとしても、少なくともシンジ君がこちらにいる限りは、
アスカは裏切るようなことはしないでしょう。」

「だが、仮に、アスカ君がスパイだとして、どこのスパイになるんだね?」

「ゼーレかドイツ支部のスパイだったが、サードインパクトか或いはその前後を境にして
考えを改めたというのが、一番可能性としては高いでしょう。
それならば、今後は安心出来ます。」

「なるどほど。」

「次に、今は迷っているという可能性もあります。
こっちに付くか、ゼーレに付くか、未だに心が揺れ動いている可能性が。」

「それならば、危険だな。」

「最後に、全く別の組織のスパイという可能性です。
アスカは、どうもレッドアタッカーズやワイルドウルフと、独自の連絡ルートを持っているようなのです。
ですから、その線も怪しいと思います。」

そこまで加持が言ってから、ゲンドウが初めて口を開いた。

「傭兵達を集めたのは、アスカ君だ。
彼らには、ネルフからは1円たりとも金を渡していない。
だから、独自の連絡ルートがあっても不思議ではない。」

だが、これには加持も冬月も驚いた。

「碇よ、それは初耳だ。では、一体彼らは何故やって来たのだ。
傭兵ならば、金無くしては動かないはずだぞ。」

冬月の疑問に、加持が答えた。

「副司令。それはおそらく、アスカの個人資産から出しているのでは。
私は、本人から聞いたことがあります。アスカには100億円を超える資産があるそうです。
それだけあれば、傭兵を雇うことも可能です。」

「何っ。アスカ君は、自分の資産をつぎ込んでいるというのか。
だとすると、アスカ君がスパイであるという可能性は、かなり低くなるぞ。
少なくとも、ゼーレのスパイではあるまい。」

「…そうだな。全てはゼーレとの決着がついてからだ。私もアスカ君を信じたい。」

「碇よ、それは、シンジ君がアスカ君のことを好きだからなのか。」

「否定はしませんよ。ですが、それだけではないのです。今は言えませんが。」


こうして、アスカの扱いは決まった。
少なくとも、ゼーレのスパイであるという疑惑は可能性が低いと判断された。
そうして、当分の間、アスカは今まで通り何の制約も無く行動させることになったのである。

この瞬間、ゲンドウと冬月は、ネルフの未来をアスカに賭ける道を選んだのであった。



次話に続く
 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

あとがき

怪しい動きをする一方で、ネルフのために働くアスカに、
ゲンドウや冬月も一抹の不安を抱きながらも、アスカに賭けることになりました。


written by red-x
inserted by FC2 system