新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS

第2部 ゼーレとの戦い

第29話補完 嵐の前


ネルフ内の会議室に、加持、ジャッジマン、レッドウルフが集まっていた。
文化祭初日の映画上映が終わった後、ゼーレが工作を仕掛けてきた件について、協議するためである。
最初にジャッジマンが口を開いた。

「この第3新東京市に、10グループ、約100人が夜陰に乗じて侵入を試みた。
うち3グループは、私の部下が都市外にて補足し撃退した。
3グループはレッドアタッカーズが迎撃し、敵の身柄を確保した。
残る4グループについては、残念ながらロストした。」

次はレッドウルフだ。

「3グループのうち、1グループは、第壱中学校で捕らえた。
残り2グループは、ネルフの近辺で捕らえたよ。
今、敵の目的を探っているけど、やはり口は割らないねえ。」

最後は、加持である。

「残り4グループのうち、2グループはワイルドウルフが捕らえている。
後の2グループについても、ヴァンテアンが捕らえている。
一応は、これでカタがついた。」

加持が話し終わるのを待って、レッドウルフが問いかけた。

「でも、ゼーレのことだ。これでは終わらないよ、加持さん。」

「ああ、でも、敵がどう動くか分からない以上、今の体制を変えても意味が無いだろう。」

「そんなことないさ。攻撃は最大の防御だよ。」

「そうしたいところだが、なんせ我々には駒が無い。」

「あるさ。それに、もう動き始めているよ。」

「何っ、そんな勝手なことを!」

「おいおい、加持さん、怒らないでよ。
勘違いしないで欲しいけど、この第3新東京市内のことは加持さんの指示に従うけど、
それ以外のことは約束出来ないよ。」

「それは詭弁だ。勝手に動かれると、こちらの防御にも関わってくるだろう。
今すぐに、変な動きはやめるんだ。」

「いやだね。」

だが、そこにジャッジマンが割って入った。

「レッドウルフ、加持の言うことを聞け。
お前もこの時期に、下手に相手を刺激しない方が得策だと分からないわけでもあるまい。」

「じゃあ、こうしよう。
事前に加持さんにどういう動きをするのか報告して、加持さんが駄目だと言うことはしない。
それ位で勘弁してよ。僕達も雇い主は加持さんだけじゃあないんだからね。」

その言葉、『雇い主は加持さんだけじゃあない』に、加持は何故か言い知れぬ違和感を覚えたが、
レッドウルフの言うこともあながち間違いではないため、妥協することにした。

「まあ、いいだろう。だが、少なくともゼーレに対する直接攻撃は絶対に避けてくれ。
藪を突つきたくは無いんだ。」

「ああ、分かったよ。加持さんも心配性だなあ。」

そう言って、レッドウルフはケラケラ笑った。

「それよりも、明日のことが重要だろう。明日はもっと大部隊でくるぞ。
今度は、倍以上の人数で来るだろう。下手すると、500人規模かもしれない。」

「明日は、第壱中学校で決戦だね。ああ、とっても楽しいね。」

レッドウルフは、さらに大きな声で笑った。


***


同じ頃、転校生の一人、ハウレーンが父親に向かって頭を下げていた。

「父さん、頼む。今度の戦いで、1個中隊を指揮させて欲しい。」

「駄目だ。お前はまだ若い。もう少し待つんだ。」

ハウレーンの父、バレスは、ヴァンテアンの隊長だった。
このためハウレーンは父親に掛け合って、1部隊を指揮して今度の戦いで功績をあげようとしていたのだ。
1個中隊とは、ヴァンテアンでは50人規模の小隊4隊、計200人を束ねる指揮官だ。

「父さん、頼む。仲間は、皆同意してくれたんだ。」

それを聞いて、バレスは苦笑した。

「分かった、いいだろう。但し、約束するんだ。戦う時は、常に先頭に立て。
そして、逃げる時は、常に最後尾に付け。それが指揮官としての、最低限の務めだ。」

「分かったよ、父さん。」

ハウレーンは、頭を下げて、去って行った。

「ハウレーン、死ぬんじゃないぞ。」

バレスは、目頭が熱くなるのを抑えきれなかった。



次話に続く 
 
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キャラ設定:バレス
ヴァンテアンの隊長。ハウレーンの父。


あとがき

明日は、本当に学校も戦場と化すのでしょうか。 


written by red-x
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