新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS 第2部 ゼーレとの戦い 第31話補完 決戦!第壱中学校(中編2.5) アスカは、ラブリーエンジェルのメンバーを前にして、胸を張り手を腰に当てて立っていた。 アスカの耳に聞こえる銃撃の音、鼻に感じる硝煙の匂い、いずれもアスカにとって久しぶりのものだった。 (ああ、アタシは帰ってきたんだ。 この硝煙の匂い、銃撃の音、なにもかも懐かしい感じがするわ。 戦場に再び足を踏み入れることになるとは思わなかったけど、 みんな、アタシは決して逃げたりしないよっ!一緒に戦うんだっ!) アスカは、心の中で力強く叫んでいた。そして、過去の自分を思い出していた。 *** アスカは、幼い頃から父親の知れない子として周りの大人から蔑まれ、 子供達からは想像を絶するいじめを受け続け、 唯一の味方であるはずの母からは殺されかけたりという、 辛く苦しい日々を唇を噛みしめて耐え抜いてきた。 そのうえ母親が目の前で首を吊っている場面を目撃し、 それでいて決して心がねじ曲がったりせず、 人類の未来を賭けて戦うために、心も体もぼろぼろになりながらも、 歯を食いしばって厳しい訓練に耐えてきた。 訓練に付いていけなかったら、パイロットから降ろされたら、 自分は見捨てられるかもしれないという恐怖と孤独に怯え続ける毎日を過ごすという、 まさに生き地獄のような日々に耐えながらも、 決して負けない、決してくじけない、決して逃げたりしないと誓って、 常に前向きに頑張ってきたのだ。 そんなアスカに、幸運の女神は微笑まず、さらなる地獄の試練が待ち受けていた。 アスカが12歳の時に、何の手違いか、いきなり一人で戦場に放り出されたのだ。 周りは敵だらけで、銃弾が雨あられと降り注がれる、そんな過酷な運命が待っていたのだ。 だが、アスカはくじけなかった。 将来現れるだろう使徒と戦うために、どんなことをしてでも生き抜くことを決意し、 心を鬼にして戦い続けたのだ。 泥水をすすって渇きを癒し、空腹に耐えながら戦い、奇跡的に勝利を収め、生き残ったのだ。 そんな忍耐と戦いの日々を送ってきたアスカの過去を、ラブリーエンジェルのメンバーは知らない。 アスカは、決して人前では弱音を吐かないからだ。 だが、皆アスカのことを心の底から信頼していた。 戦場という極限状態では、安いメッキはすぐに剥げてしまう。 だが、アスカの勇気と、熱意と、心意気が本物であることは、徐々に周りの者の知るところになった。 どんな苦しい時でも、どんなに辛い時でも、アスカは決して諦めたりしない。 太陽の如く輝く笑顔と陽気な言葉で仲間をいつも鼓舞するのだ。 何度、仲間達は心を救われたことか。 『大丈夫よっ!このアタシが付いているからねっ!』 『このアタシに任せなさいっ!』 その言葉に、何度仲間達は勇気を振り絞ることが出来たことか。 今ここにいるメンバーの多くは、アスカに一度ならずとも命を救われたことがある。 アスカは、危機に陥った仲間を決して見捨てるようなことはしなかった。 たとえ、どんなに絶望的な状況であろうとも、アスカは仲間を最後まで助ける努力を惜しまなかったのだ。 そんなアスカを、次第に仲間達は慕い、信頼を寄せるようになっていった。 そして、命を預け合う仲間のみが共有する信頼感が芽生えていったのだ。 アスカは、その信頼に応えるべく、今まで戦ってきたし、これからも戦い続けるだろう。 それを知るからこそ、ラブリーエンジェルの少女達は、アスカの登場を願っていたし、 その努力に裏打ちされた実力を疑う者はいなかった。 そんなアスカは、ラブリーエンジェルにとって希望の光であり、最後の頼みの綱なのである。 だから、アスカが現れたことによって、ブルー達は、心の底から喜んでいた。 次話に続く ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき written by red-x