新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS

第2部 ゼーレとの戦い

第32話補完 決戦!第壱中学校(中編3.5)


シンジがアスカの心配をしていた頃、アスカは戦いのさなかにいた。


(いたっ!)

アスカの目は、一人目の獲物を捉えていた。

(頼むから、効いてよね。)

アスカは、試作品のアンチATフィールド発生装置のスイッチを入れると、
茂みを利用して敵の真横に音も無く忍び寄り、敵の腹に思いっきり体重の乗ったパンチを叩き込んだ。

「ぐうっ!」

敵が腹を抱えると、側頭部に強烈な回し蹴りを炸裂させた。

「ううっ。」

敵は地にはいつくばった。
しかし、他のメンバーがうまく他の敵の気をそらしているため、他の敵には気付かれなかったようだ。

(良し。こいつに麻酔を打ち込んでと。)

アスカは、巨象でも一発で眠らせるほどの強力な麻酔を打ち込んだ。
そうして、次の獲物を探して辺りを見回した。


***


同じ頃、アスカ以外のラブリーエンジェルのメンバーも戦っていた。

(行くよっ!ジェットストリームアタックだよっ!)

ブルーは、身振りでブラウンとグリーンに作戦を伝えた。
直ぐに二人はブルーの後に付く。
ブルーは、なるべく音を立てないように敵に近付くと、一気に攻撃を加えた。

「はっ!」

最初に、ブルーが敵の前で地面を蹴ってジャンプする。
そうして、敵の目を頭上に引きつけて、銃を連射する。
すると、オレンジ色の壁がそれを防ぐべく展開される。
その隙にブラウンが左からパンチを繰り出す。
グリーンは右からキックだ。
相手が倒れた所を、ブルーが首筋に体重と重力が加わった手刀を叩き込む。

「ぐぶっ。」

敵は、ひとたまりもなく倒れた。

「やった。命懸けだけど、一人倒したよ。」

「ああ、やったね。」

3人とも、にこりと笑った。
だが、この技は、そう何度も使える技ではなかった。
タイミングを合わせるのに非常に気を使うため、体力の消費も激しいからだ。

「レッド、何と言っても、あんたが頼りなんだよ。」

ブルーは呟いた。


***


アスカの次の獲物は、直ぐに見つかった。
アスカは、再び音もなく近寄ると、敵の顎に強烈なアッパーを打ち込もうとした。
だが、オレンジ色の光が遮った。

(こんちくしょおおおおおおおおおおおおおおおお!)

アスカは、渾身の力を込めて敵のボディにパンチをぶち込んだ。
だが、またもやオレンジ色の光に阻まれ、敵はニヤリと笑った。

(ちくしょうっ!通じないなんてっ!本当にやばいっ!)

アスカは唇を噛んだ。
やはり試作品のためか、頼みの綱のアンチATフィールド発生装置が通用しなかったのだ。
だが、絶望的な状況に陥っても、アスカの闘志は衰えなかった。

(ふん、やるじゃないの。だけど、アタシは逃げないよっ!)

アスカは、どんな絶望的な状況でも決して逃げない、負けない、くじけないのだ。
そう、アスカは、誇り高き戦士なのだから。
今アスカが逃げ出せば、仲間達が皆殺しにされることが分かっているから、
アスカは僅かな勝利の可能性に賭けるのである。

(シンジに、絶対に生きてもう一度、会ってみせる。絶対に…。
そのためにも、アタシは必ず勝ってみせる。)

アスカの脳裏には、シンジの優しそうな顔が浮かんでいた。

(あんな弱虫でも、使徒と戦って勝ったんだ。アタシは、シンジよりもずっと強いんだ。
そのアタシが、絶対に負ける訳にはいかないのよっ!)

誇り高き狼のように、どんな強い敵に対しても、決して怯まない。それがアスカなのだ。
どんなに絶望的な状況であろうとも、アスカの目は、まだ輝きを失っていなかった。




次話に続く 
 
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あとがき

アスカがエヴァにこだわったのは、それが生きる支えだったから。
負けず嫌いだったのは、負けが死に直結する傭兵だったから。
シンジのことを嫌っていたのは、シンジが逃げてばかりいたので、
決して仲間を見捨てない主義のアスカにすれば、許せなかったから。
これまでの他のSSでのアスカとは、違った解釈にしました。
その分、シンジがへっぽこになってしまいましたが、それはアスカと比べるから。
普通の中学生と比べると、知力・体力・勇気など殆どの点で、シンジ能力は抜きんでています。

 
written by red-x
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