新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS

第2部 ゼーレとの戦い

第34話 戦いの後


(うわあ、一杯怖そうな顔をした人達がいるなあ。
アスカは何ともないようだけど、ちょっと怖いな。トウジはどうかな。)

シンジは横にいるトウジを見た。
すると、トウジもおっかなそうな顔をして、小さくなっていた。

(何だ、トウジが怖がっているんじゃ、僕が怖がっても当然じゃないか。良かった。)

などと、シンジはちょっとずれた感想を抱いていた。

実は今、ネルフ内の会議室に、
加持やジャッジマン、レッドウルフを始めとする傭兵部隊の代表が集まっていた。
情報交換のためと言えば聞こえは良いが、要は自分の部隊の被害状況を言うのと同時に、戦果を競うのだ。
ここには、アスカやシンジ達も参加していたのだ。

「では、始めよう。まず、最初に紹介したい人物がいる。
皆も顔は知っているだろうが、惣流・アスカ・ラングレーだ。」

アスカは、加持の声に合わせて立ち、一礼した。

「彼女は、表向きは広報部所属になっているが、作戦部の通信情報分析も担当している。
今回の戦いでも、彼女の手腕で、戦いがかなり有利になったと思う。
だから、彼女から何かを頼まれたら、手伝って欲しい。
もちろん美人だからって、変なちょっかいは絶対にかけないようにな。」

加持の言葉に、部屋の中を笑い声が響いた。

「次は、アスカの婚約者であり、エヴァンゲリオンのチーフパイロット、碇シンジだ。」

シンジもアスカと同様に立ち上がって、一礼した。

「次の戦いでは、かなり頼もしい戦力になると思う。
彼の言うことも、しっかり聞いてやって欲しい。
最後に、鈴原トウジだ。」

トウジも同様に立ち上がって、一礼した。

「彼もエヴァンゲリオンのパイロットで、鈴原トウジだ。
彼のことも、よろしく頼む。
今後彼らも、作戦の打ち合わせには出てもらうことになる。
これからは、お互いに連携を取って戦う場面が多くなると思うから、
お互いに顔も知らないなんて事態だけは避けて欲しい。
では、エドモン中尉から、被害状況などを報告して欲しい。」

加持が報告を促した。
最初はエドモン中尉、北の守りを担当していた。

「エドモン中尉だ。
我々は、死者2人。重傷者10人、軽傷者30人だ。
カルロス中尉の力を借りて、敵部隊100人を撃退。
敵の死者は30人、捕虜は70人だ。」

北の部隊は、敵と混戦状態になったのと、増援部隊の到着が少し遅れたことから、
2人の死亡者が出ていた。

「カルロス中尉だ。
我々は、死者無し。重傷者2人、軽傷者15人だ。」

カルロス中尉の部隊は、増援部隊であったこともあり、被害は軽微だ。

次は、西の守りを担当していたリッツ大尉だ。

「リッツ大尉だ。
我々は、死者1人。重傷者5人、軽傷者20人だ。
グエン中尉の力を借りて、敵部隊150人を撃退。
敵の死者は20人、捕虜は130人だ。」

西の部隊も少し苦戦していたため、これも死亡者1人を出していた。

「グエン中尉だ。
我々は、死者無し。重傷者無し、軽傷者5人だ。」

グエン中尉の部隊は、増援部隊であったこともあり、被害は軽微だ。

次は、東の守りを担当していたヴァンテアンのバレスだ。今回の被害が最も大きかった。

「バレスだ。
最初に、ワイルドウルフと惣流アスカさん、碇シンジ君に礼を言う。
君たちのお蔭で、我が部隊の多くの命と娘の命が助かった。本当にありがとう。」

バレスはそう言いながら、頭を深々と下げた。
実は、アスカの指示でワイルドウルフの1部隊が、ヴァンテアン部隊の救出を行っていたのだ。
このため、奇跡的に死亡者が出なかったのだ。
シンジに礼を言ったのは、シンジがハウレーンを助けたと聞いていたからである。

「我々は、死者無し。重傷者180人、軽傷者50人だ。
敵部隊140人を撃退。
敵の死者は30人、捕虜は110人だ。」

次は、レインボースターだ。

「エリック大尉だ。
我々は今回は戦闘に参加しなかった。以上だ。」

次は、レッドアタッカーズの番だ。

「レッドウルフだ。
我々は、死者無し。重傷者無し、軽傷者5人だ。
敵部隊10人と戦い、1時間ほど足止めをした。以上だ。」

レッドウルフは苦々しい顔をした。今回の戦闘では、何の戦果もあげなかったからだ。
しかも、400人もの大部隊でたった10人の部隊と戦って何の戦果も無いなど、
普通では考えられないからだ。

次はワイルドウルフだ。

「ウォルフだ。
我々は、死者無し。重傷者1人、軽傷者10人だ。
敵部隊100人を撃退。
敵の死者は10人、捕虜は90人だ。」

次は、特別に参加していたラブリーエンジェルの番だった。

「ブルーだ。
我々は、死者無し。負傷者無しだ。
敵黒竜部隊10人と白龍部隊400人を撃退。
敵の死者は350人、捕虜は60人だ。」

それを聞いて、その場の全員が顔色を変えた。
普通は、傭兵同士の戦いでは半分以上の死者は出ない。
死ぬまで頑張って戦う者がいないからだ。
だから、この死者の数は異常だったのだ。
だが、ジャッジマンは気にせず続けた。

「ジャッジマンだ。
我々は、死者無し。重傷者無し、軽傷者2人だ。
敵部隊10人と戦い、30分ほど足止めをした。以上だ。」

最後に加持が締めくくった。

「みんな、良く頑張ってくれた。
敵は死者440人、捕虜が460人だ。
それに対して、我が方の損害は、死者が3人、重傷者198人、軽傷者137人となった。
今回は、我々の大勝利だ。
今回の功績の第一は、ラブリーエンジェルだ。良くやってくれた。」

「ありがとうございます。」

加持の言葉にブルーは頭を下げた。

「功績の第二は、レッドアタッカーズだ。
黒竜部隊を良く足止めしてくれた。
あれが無ければ、大変なことになっていただろう。良くやってくれた。」

「え、ほんと?あ、どうもありがとう。」

レッドウルフは意外そうな顔をしていた。
それは、レッドウルフだけではない。
他の隊長達も、『何であいつらが?』という顔をしていた。
その雰囲気を察した加持は、皆にありのままを知ってもらった方が良いと思い、
黒竜部隊の実態を知らせることにした。

「ちょっと、この映像を見て欲しい。」

加持は、壁際の大きな液晶画面に、黒竜部隊とレッドアタッカーズの攻防を映したのだ。
それを見た他の隊長達は、顔色を変えていった。

「これを見てもらえば分かるが、黒竜部隊は普通の部隊では相手にならない。
足止めさえも難しいのだ。
他の部隊で、レッドアタッカーズよりもうまく戦えるという者がいたら、教えて欲しい。
ヴァンテアンでさえ、手ひどい目に遭っているのだから。」

加持の言葉に皆黙ってしまった。だが、バレスが質問を投げかけた。

「わしは文句を言うつもりは無いが、一体どうやってあいつらをやっつけたんだ。
教えて欲しい。」

バレスは、加持を見た後、ブルーを見つめた。それに、ブルーは応えた。

「特殊な装備を付けて、特殊な訓練を受けた者が対処したのです。」

「では、我々も同じ装備をして、同じ訓練を受ければ、あいつらと戦えるのか?」

「いえ、難しいでしょう。
装備は同じでも、それを扱うには特殊な訓練が必要になるからです。」

「では、どんな訓練をしたのだ。教えてくれ。」

ブルーはちらりとウォルフを見た。
ウォルフは、目で構わないという合図を送った。

「そうですね。まず、格闘技の腕を磨きます。」

バレスは首を傾げて、問いかけてきた。

「そんなことをやって、何の意味があるのだ。」

「銃が通じないからです。従って、肉弾戦で敵を倒す必要があります。」

それを聞いたバレスは、口を開けたまま、何も言えなかった。だが、ブルーは続けた。

「それから、素養も大切です。特殊装備には相性がありますから。」

「と、言うと。」

「効き目には個人差があります。
ですから、下手をすると全く効かない可能性もあります。
その時に、素早く逃げられるだけの身のこなしも必要になります。」

「それでは、恐ろしくて、誰も敵に近づけないな…。」

バレスは肩を落した。

「ですが、安心してください。黒竜部隊は、あれで最後です。
おそらく、もうあのような部隊は出て来ないでしょう。」

それを聞いた他の隊長達は、心の中で安堵した。

「では、その話はこれでおしまいだ。戦いは、これで終わった訳じゃない。
今回は、ヴァンテアンの被害が大きかったため、今までの守備計画を見直す必要がある。」

加持はそう言うと、第3東京市の地図を壁に貼った。

「今までは、

東はヴァンテアン2個中隊、400人。

西はリッツ大尉200人、グエン中尉100人、カルロス中尉100人。

南はワイルドウルフ2個中隊、400人。

北はレッドアタッカーズ1個中隊、200人とエドモン中尉100人。

市内中心部にレインボースター1個中隊、200人とジャッジマンの部隊200人。

予備としてレッドアタッカーズ1個中隊、200人。

ガード役が昼は主に第壱中学校付近に100人。

という配置だったが。」


「これをこう変えたい。

東はワイルドウルフ1個中隊、200人とカルロス中尉100人。

西はレインボースター1個中隊、200人とリッツ大尉200人。

南はワイルドウルフ1個中隊、200人とグエン中尉100人。

北はレッドアタッカーズ1個中隊、200人とエドモン中尉100人。

市内中心部にレッドアタッカーズ1個中隊、200人とジャッジマンの部隊200人。

予備としてヴァンテアン1個中隊、200人。

ガード役が昼は主に第壱中学校付近に100人。

特に質問はあるか?」

加持の声に特に反応は無かった。

「では、これで決まりだ。
おそらく、1か月以内に本格的な攻撃が開始されるだろう。
みんな、気を引き締めて頑張って欲しい。」

そう言って、加持は会議を締めくくった。


***


 会議の後、シンジとアスカは、バレスと会っていた。頼みごとがあったからである。

「すみません、バレスさん。お呼び立てして。」
シンジはそう言って頭を下げた。

「ああ、構わんよ。で、一体何の用かね。」

「実は、黒竜部隊の中に、僕の友達がいたんです。」

「えっ!何だって!」

「それで、本当に勝手なお願いで申し訳ないのですが、彼のことを許してあげて欲しいんです。
彼は、洗脳されていて、最近の記憶を失っているんです。」

「アタシからもお願いします。シンジの友達を許してあげてください。」

アスカも懇願した。

(バレスさん、お願いします。カヲル君のことを許してあげてください。)
シンジは、心の中で強く祈った。
その願いがバレスに届いたのか、バレスは、腕を組んでしばらく考えていたが、穏やかな顔をして言った。

「分かった。
普通なら、話も聞かないで断る所だが、他でもない、君たちの頼みとあらば、断る訳にはいかんな。
良いだろう。君の友人を許してあげよう。」

「本当ですかっ!ありがとうございます。」
(良かった。ありがとう、バレスさん。)

「ありがとうございます。」

シンジとアスカは、礼を言いながら、深々と頭を下げた。


***


「カヲル君、調子はどうかな?」

「うん、まあまあだよ、シンジ君。特に体には支障がないみたいだ。」

「良かった。じゃあ、もうすぐ退院出来そうだね。」

シンジとアスカは、カヲルを見舞いにネルフの病院に来ていた。
昨日の夕方、カヲルはここに運び込まれ、色々な精密検査を受けていたのだ。

「シンジ、それはまだ分からないわよ。
洗脳されていたかもしれないけど、敵として戦ったんだもの。
簡単に出させてもらえないんじゃないかしら。」

それを聞いたカヲルの顔が沈んだ色に変わる。

「で、でも、きっとそのうちに出してもらえるよ。僕、父さんに頼んでみる。」

シンジがそう言った時のことだった。マコトが病室に入って来た。

「アスカちゃん、僕のことを呼んでいるって聞いたけど、なんだい。」

「ちょっと、相談したいことがあるのよ。」

「良いよ。言ってごらん。」

「2つあるんだけど、一つは、ミサトの記憶がまだ戻らないでしょ。
だから、作戦部とシンジ達パイロットとの連携が今ひとつになると思うのよ。
今まではそれでも良かったけど、今後はまずいと思うのよ。
だから、日向さんに、アタシ達のすぐ近くに引っ越して来て欲しいのよ。」

「すぐ近くって言うと?」

「具体的には、アタシ達が住んでいる部屋の隣位が良いわ。
それに、出来れば食事なんかも一緒にしたいのよ。
今は、作戦部の実質的な責任者は、日向さんでしょ。
だから、日向さんとの連絡を密にしたいのよ。」

「葛城さんと赤木さんは、どう思うかな?」

「一応、本人には、日向さんとこれから一緒に朝晩食事を共にすることについては、
了解をもらっているわ。
だから、その点の問題はないわ。
まあ、日向さんが、リツコが嫌いって言うのならあきらめるけどね。
あ、そうそう。料理はこちらで用意するから、その点の心配はないわ。
日向さんは、出てきた物を食べて、必要に応じて仕事の話をするだけよ。」

「そう言われると、断れないなあ。
良いよ、僕もコンビニの弁当や外食ばかりだったから、その方が良いよ。」

その返答を聞いて、アスカは少しだけニヤリとしたが、直ぐに真剣な顔に戻った。

「で、次のお願いなんだけど、当分の間、この渚カヲルっていう子と一緒に暮らして欲しいの。」

「日向さん、僕からもお願いします。」

アスカの意図を察したシンジも一緒になって頼んだ。
おそらく、マコトと一緒なら、ネルフの外で暮らすのも許可されるだろうとの考えなのだ。

「う〜ん、どうしようかな。僕は家を空けることが多いけど、それでも良いのなら。」

「やったね!シンジ、日向さんはOKよ。」

アスカはニコニコ顔である。

「ありがとうございます、日向さん。」

シンジも胸をなでおろした。

(さすがはアスカだ。こんな手を打っていたなんて、僕には考えもつかなかったよ。
しかも、カヲル君と毎日食事出来るなんて、嬉しいや。)

こうして、アスカがうまく手を回して、関係者の了解を素早く得たため、
次の土曜日にマコトはシンジ達の住むマンションに越してくることになった。
それに合わせて、カヲルも退院することになったのである。


次話に続く  
 
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あとがき

 いつの間にか、コンフォート17マンションは、チルドレン達の宿舎になってしまった
ようです。

○コンフォート17マンション居住者

・アスカ、シンジ、ミサト、リツコ
・加持
・トウジと妹
・ヒカリと姉妹
・ケンスケ

2月20日から
・マコト、カヲル


○朝食・夕食

今まで
・アスカ、シンジ、ミサト、リツコ、ユキ、ケンスケ(時々、加持)
・トウジと妹、ヒカリと妹、ユキの弟妹(時々、コダマ)

2月20日から
・アスカ、シンジ、ミサト、リツコ、ユキ、加持、ケンスケ、マコト、カヲル
・トウジと妹、ヒカリと妹、ユキの弟妹(時々、コダマ)



 
written by red-x
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