新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS 第3部 ゼーレとの戦い−激闘編− 第46話 ウイルス、アタック(後編) 「おい、シンジ。そろそろ飯にしようや。」 時は、12:00を少し過ぎた頃。 カヲルとアリオスがトウジとケンスケの代わりに待機任務に就いた後のことだ。 「うん、僕もそろそろお腹が空いちゃったんだ。」 シンジは直ぐに同意する。 「そうだな、早く食べようぜ。」 ケンスケもお腹が空いているようだ。 「僕もご一緒していいかな。」 マックスがやや遠慮がちに言うが、トウジは笑って言った。 「ああ、かまへん。こういうのは、人数が多い方がいいんや。」 こうして、4人での昼食となった。 「いっただきま〜すっ。」 当然の如く、トウジが先に食べ始める。 それを他の3人が苦笑しながらも、続けて食べていく。 昼食は、ヒカリの差し入れだ。 トウジ用に大量の焼きそばと、他の皆も食べられるようにと、ピラフとハンバーグがある。 「うん、うまいっ。」 トウジはニコニコしながら、焼きそばを頬張った。 *** 「the sleeping thief operation finished!」 「「「「Ok、Boss!」」」」 アスカの合図によって、マリア、ミンメイ、ミリア、サーシャら5人の少女達は、 世界各地の攻撃目標へのハッキングを一旦終了した。 3月12日の15:00のことだ。 「みんな、ご苦労さま。ちょっと遅いけど、食事にしましょう。」 アスカは食事タイムを宣言した。 「良かった。お腹がペコペコだったのよ。」 とマリア。 「私も。」 「私もです。」 とサーシャとミンメイ。やはり、皆お腹が空いていたみたいである。 9時半過ぎからずっと働き通しだったのだから、無理も無い。 「あ〜ら、もういいかしら。 ユキちゃんが作ってくれたサンドイッチにスパゲッティーがあるわよ〜ん。 皆さん、こちらにいらっしゃ〜い。」 ミサトが手招きをするので、みんなニコニコしながらミサトの元へ向かった。 ユキが作ったのならば味は保証されている。 そして、やっぱりと言うか、スパゲッティーが5種類位ある。 皆、女の子から人気があるものだった。 こういう点は、流石にシンジでは真似が出来ない所だ。 こうして、1時間かけてゆっくりと食事とお茶をしてから、次の作戦に取りかかるのだ。 次の作戦は、ゲンドウ達には3月12日の午前0時から行うと説明していたのだが、 実際には、ゲンドウ達には秘密の作戦、『the sleeping thief operation』を行っていた。 だから、これからがアスカ達の本来の作戦行動なのである。 *** 一方、ゲンドウや諜報部の切り崩し工作は軍関係者から政治家へと比重が移っていた。 特に、軍への影響力が強い政治家を先に切り崩しにかかった。 というのも、軍関係者の切り崩しは、概ね5割が成功したが、 それではゼーレとの戦力差を埋めるには全然足りないからだ。 だが、政治家をうまく利用すれば、軍本部から作戦中止命令や転進命令を出すことも不可能ではない。 このあたりからは、ゲンドウの得意分野である。 ゲンドウは、切り崩したい人物に影響力がある人物を先に味方に付けてから切り崩すなど、 外堀から埋めていく手法を採った。 これは、思った以上に効果をあげ、7割近い成功率だった。 また、予想外に効果があったのがアスカの生写真であった。 何人目かの切り崩し工作を行っている時に、相手からアスカの生写真が欲しいと言ってきたのだ。 それならば応じると。 流石のゲンドウもこれには驚いたが、それ以後試しにアスカの生写真を餌にすると、 渋っていた相手が簡単に翻意したり、態度を軟化させたりすることが、結構あったのである。 不思議に思って聞いてみると、子供や孫からねだられて困っていたと言うのである。 開いた口が塞がらなかったが、ネルフにとっては悪いことではないので、 ゲンドウは笑いを堪えて切り崩し工作を行った。 *** 15:30になると、リツコがお茶をしにやって来た。人数分+αのケーキも一緒だ。 「リツコったら、気が利いてるじゃない。」 丁度遅い昼食を終えたアスカはニコニコである。無論、他の女性陣もだ。 「みんな、コーヒーで良いかしら?」 そう言いながら、リツコはコーヒーを淹れる。 そのコーヒーを、皆ニコニコしながら受け取っていく。 「アスカ、作戦は順調かしら。」 「任せてよ、リツコ。今の所は特に遅れは無いわ。」 リツコの問いに、アスカは胸を張って言ったが、大嘘である。 まだ、本来の作戦は始まっていないのだから。 「そう、こちらも順調よ。まあ、もう分かっていると思うけど。」 「ええ、分かっているわ。予定よりも若干早いようね。 で、切り崩し工作はうまくいってるの?」 「ええ、成功率は50%を超えているわ。」 「そう。それだけあれば、御の字ね。」 「それで、アスカの方は、どれ位かかるのかしら。」 「そうねえ。予定通り明日の18:00前後に終了というのは変わりなさそうだわ。」 「あまり無理しないでね。」 「大丈夫よ。まっかせなさ〜い。」 アスカはそういいながら胸を叩いた。 *** 16:00から、アスカ達の本来の仕事が始められた。 ゼーレのものと思われるコンピュータをハッキングし、その中のデータを頂き、 場合によっては改ざんするのだが、待機任務に就いているのがトウジとケンスケであるため、 ハッキング自体は18:30から始める。それまでは、目標の絞り込みとなる。 「ねえ、リツコ。攻撃目標は、あとどれくらい残っているの?」 「そうね、200か所を切ったかしら。」 だが、その一つ一つがかなり攻略が困難な目標なのだ。 だが、アスカは攻略する自信があった。 アスカの母であるキョウコが設計し、その死後も仲間によって細々と製作が続けられ、 つい最近完成したスーパーコンピュータ、『ランス』。 MAGIと同等の処理能力を誇り、基本性能もMAGIと肩を並べるうえに、 ハッキングに特化した能力を持っている。正に、今回の作戦のために作られたようなものだ。 アスカは、母の形見とも言える、この『ランス』に全てを賭けていた。 「いいわ、リツコ。後のハッキングは、こちらに任せなさい。 そっちはデータ処理に比重を移していいわ。」 「そう言ってもらえると助かるわ。 適宜休憩しているとはいえ、こちらのメンバーの疲労はかなりのものだわ。 元気なのは、私とマヤ位ね。」 「じゃあ、18:00までにデータをちょうだい。18:30からハッキングを開始するわね。」 「ええ、頼むわね。頼りにしてるわ、アスカ。」 リツコは、そう言うと立ち上がり、発令所へと向かった。 こうして、18:30から、作戦が開始された。 同じ事は発令所でもやっていたが、アスカ達はより難度の高い目標のハッキングを行うのだ。 「マリア、ミリア、ミンメイ、サーシャ。皆準備は良いわね。」 「ええ。」 「ああ。」 「はい。」 「は〜い。」 「質問は何かあるかしら?」 アスカは皆を見渡したが、特に無いようだ。 「良い?じゃあ行くわよっ!ミラクル5の力を見せてやるのよっ!」 「「「「おおっ!」」」」 再び、威勢が良いが、可愛らしい雄叫びが響いた。 そして、皆自分の目の前にあるモニタを見つめる。 「良い?アタシが指示する攻撃目標から、一切合切データを引き出すのよ。 良いわね?目標によっては、データの書き換えやウイルスの仕込みもするからね。 マリアはフランスより西のヨーロッパ方面をお願い。 ドイツ支部、ドイツ第2支部、イギリス支部のサポートを受けて。」 「ええ、任せて。」 「ミンメイはアジア方面をお願いするわ。中国支部、インド支部のサポートを受けて。」 「ええ、分かったわ。」 「ミリアはアメリカ方面をお願い。アメリカ支部、アメリカ第3支部、ブラジル支部のサポートを受けて。」 「ああ、分かった。」 「サーシャはフランスより東のヨーロッパ方面をお願い。フランス支部、エジプト支部のサポートを受けて。」 「は〜い。」 「アタシは重要目標を攻めるわ。the phoenix operation miracle5 stage start!」 「「「「Ok、Boss!」」」」 こうして、ゼーレ関係のコンピュータの中でも、攻略が困難と判断された目標に対するハッキングが開始された。 *** 少し時間は遡る。 「あ〜あ、暇だなあ。」 18:00になり、シンジは待機任務に就いたが、エヴァの中で暇そうに呟いていた。 作戦は順調に進んでいるみたいだし、敵が侵入した形跡も無い。とにかく、やることが無かった。 「映画でも見ようかな。」 シンジは考えた末に、『救世主アスカ』を見ることにした。 だが、途中までは楽しく見る事が出来たが、アスカとのキスシーンになると、顔が真っ赤になってしまった。 「こ、これが全世界に流れているんだね。は、恥ずかしいや。」 だが、プロポーズのシーンは、もっと恥ずかしかった。 加持のシーンは大笑いしながら見ることが出来たのだが、自分の事となると、話は別なのである。 「試写会の時も恥ずかしかったけど、こうやって見ると、物凄く恥ずかしいや。 でも、アスカはどう思っているのかな。」 シンジは、初めて疑問を持った。 自分も恥ずかしいが、アスカも同じ位恥ずかしいに違いない。 それなのに、どうして全世界に公開したのかと。 「もしかして、アスカは本当に僕のことが好きなのかもしれない。 そうだよね、そうじゃなければ、こんな映画を他人に見せようとはしないよね。」 そう思うと、シンジは嬉しくなった。 『アスカは、行動で自分の意思を表現する。』それは短いながらも、 アスカと同居してから理解するようになった、シンジなりのアスカ像である。 「アスカも、僕の事が好きなんだ。きっとそうに違いない。 だから、僕はアスカを信じて頑張らなくちゃ。」 シンジは、固く拳を握りしめた。 *** 「あ〜あっ、つっかれた〜っ。」 マリアは大きな声で言った。時間は23:30。これからは休憩タイムである。 「はい、みんな。これからは休憩よ。 でも、その前に口頭で状況を報告して。じゃあ、最初はマリアからお願い。」 「はい、攻撃目標のうち、30%を攻略しました。」 「次は、ミンメイね。」 「はい、同じく40%を攻略しました。」 「次は、ミリア。」 「はい、同じく25%を攻略しました。」 「う〜ん、もうちょっと頑張ってね。じゃあ、最後はサーシャ。」 「はい、50%を攻略しました。」 それを聞いた皆は、驚きの声をあげた。 「サーシャには、エジプト支部のお友達が付いているのよ。そうでしょう?」 アスカは、さも当然といったような顔をして言った。 「へっへっへっ。実はそうなの。でも、友達と言うよりも、親戚の仲の良い子かな。」 サーシャはネタばらしをされたせいか、苦笑いを浮かべる。 「まあ、とっとと終わらせちゃいなさいよ。そしたら、他の人の手助けも出来るでしょ。」 アスカの言葉に、皆頷くのであった。 次話に続く ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― タイムスケジュール 発令所 アスカ達 加持・ミサト シンジ達 3月11日(金) 18:00 作戦開始 ゼーレの戦力分析 傭兵達との連絡 カヲルとアリオスが 市内の警戒 待機 19:30 ウイルスAを蒔く 20:00 ウイルスBを蒔く ハッキング開始 21:00 攻撃目標の30% アスカ仮眠 市内の警戒 トウジとケンスケが が落ちる 待機 24:00 アスカ起床 3月12日(土) 00:00 攻撃目標の95% sleeping thief 市内の警戒 シンジとマックスが が落ちる 作戦開始 待機 03:00 市内の警戒 カヲルとアリオスが 待機 05:30 休憩・仮眠 休憩・仮眠 06:00 市内の警戒 トウジとケンスケが 待機 09:00 市内の警戒 シンジとマックスが 待機 09:30 休憩・仮眠終了 休憩・仮眠終了 切り崩し工作開始 12:00 市内の警戒 カヲルとアリオスが 待機 14:30 休憩 休憩 15:00 sleeping thief 市内の警戒 トウジとケンスケが 作戦終了・食事 待機 15:30 お茶 16:00 作戦の準備 18:00 市内の警戒 シンジとマックスが 待機 18:30 休憩終了 miracle5 stage 開始 21:00 市内の警戒 カヲルとアリオスが 待機 23:30 休憩・仮眠 休憩・仮眠