新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS

第3部 ゼーレとの戦い−激闘編−

第50話 作戦会議


(うわあ、凄いメンバーだな。)

シンジはため息をつきそうになった。
ちょっと広いこの会議室には、ネルフの幹部や中心メンバーが揃っていた。
碇ゲンドウ司令、冬月副司令、葛城作戦部長、赤木技術部長、マリス広報部長、
真田保安部長、日向作戦部長代行、伊吹技術部長代行、加持諜報部長代行である。

これに加えて、ジャッジマン、ウォルフ、ブルー、バレス、レッドウルフ、エリック大尉、
エドモン中尉、カルロス中尉、リッツ大尉、グエン中尉ら傭兵部隊の代表者が集まっている。

ちなみに、ウォルフはドイツの傭兵部隊であるワイルドウルフの隊長で、マリアの父。
ブルーはウォルフの部下でラブリーエンジェルの隊長。
バレスはフランスの傭兵部隊ヴァンテアンの隊長でハウレーンの父。
レッドウルフはアメリカの傭兵部隊レッドアタッカーズの隊長である。

さらに、エヴァンゲリオン部隊の正規パイロットであるトウジとカヲルに加えて、
予備役パイロットであるミリア、マリア、ミンメイ、サーシャら、
さらにはケンスケもオブザーバーとして参加していた。
オブザーバーと言っても、ミリア達はお茶汲み要員の色彩が濃かったが。

なお、シンジは、作戦部Sチ−ム(作戦立案、戦況分析)のサブチーフとして、
アスカは作戦部Tチ−ム(通信、情報分析担当)のサブチーフとしての参加である。

「さあて、みなさん揃ったようですね。」

全員が揃うと、おもむろにアスカは周りを見渡しながら言った。

「では、みなさんにお集まりいただいたようなので、早速ですが、作戦会議を開きます。
司会は、作戦部Tチ−ムのサブチーフである、わたくし、惣流・アスカ・ラングレーがいたします。
最初に現在の状況を簡単にご説明いたします。」

アスカは軽く咳払いをすると、言葉を続けた。

「先日の『the phoenix operation』と『the sleeping thief operation』にご協力頂き、ありがとうございました。
作戦は無事終了し、多大なる成果を上げる事が出来ました。

『the phoenix operation 』の成功によって、ゼーレ幹部の情報収集と、
ゼーレの実態解明が大幅に進み、ゼーレ関係者の切り崩し工作が順調に進みました。
この結果、事実を知らないまま参戦しようとしていた国の部隊を中心に、撤退や足止めが相次ぎました。

その結果、敵と思われる戦力の半分以上の撤退、若しくは足止めに成功しました。
作戦開始当初に把握していた敵戦力は、
原子力潜水艦が20艦、通常型潜水艦が50艦、空母が20隻、各種艦艇が300隻、
戦闘機1000機以上、爆撃機50機以上でした。

ですが、現在もこの日本に向かっている戦力、及び向かって来ると予想される敵戦力は、
原子力潜水艦が10艦、通常型潜水艦が10艦、空母が5隻、各種艦艇が100隻、
戦闘機300機以上、爆撃機20機以上です。概ね、作戦開始前の半分以下になりました。」

そこまで言うと、アスカは再び辺りを見回した。実は、この数字はやや多めの数字なのである。
このため、予想通り、各傭兵部隊の代表者達は厳しい顔をしている。
ジャッジマンとレッドウルフは例外であったが、おそらく、エヴァの力量を知っているためであろう。
サグという組織は、他の傭兵部隊と違って、エヴァンゲリオンには詳しいようである。

「次に、『the sleeping thief operation』の成功によって、
巧妙に隠されていた敵の資産の多くを凍結せしめました。
また、その一部を接収することにも成功しました。
これによって、ゼーレの資金力は大幅に低下した筈です。
逆に、我々の資金力は大幅に強化されました。
先日、皆さんにお渡しした資金は、この中から出ています。
特に、傭兵部隊の皆様方には、成功報酬ということで、
手付金すらお渡ししていなかった所もありましたが、
これで我々も雇い主としての義務を果たす事が出来ました。」

この話を聞いて、ネルフ側がほぼ例外無く全員驚きを露にしていた。
ネルフ側にしても、ゲンドウですらその事実を知らなかったのだから無理もない。
ゲンドウと冬月は、アスカの個人資産から報酬を払っていると思い込んでいたし、
それ以外の幹部は、それすらも知らなかったのである。
特に、加持などはぶったまげていた。
金を払わぬ雇い主ほど危険なものは無いと知っていたからである。

傭兵部隊の方も、手付金すらもらっていなかった
ジャッジマン、ウォルフ、バレス、レッドウルフ以外の者達が、顔を見合わせていた。
ネルフの資金力が乏しい事を知らなかったのであろう。

だが、アスカは、みんなの反応が収まると、素知らぬ顔をして話を続けた。
思った通り、ゲンドウと冬月は驚いた様子を皆に気付かせるようなことは無かったからだ。
こういう時は、ポーカーフェイスが出来る上司はありがたい。

「両作戦の成功によって、我がネルフはゼーレに対して、大きなアドバンテージを得ることが出来ました。
特に、一般市民の多くを味方に付けたことは、今後の作戦にとって、大きなプラスとなることでしょう。
ですが、これからが正念場になります。
おそらく、焦ったゼーレは、近い内に総力を挙げて攻めて来るでしょう。
これを撃退出来れば、我々の勝利となる訳です。

その作戦を練るために、皆様方にお集まり頂きました。
作戦の素案は出来上がっていますが、疑問点や問題点がありましたら、ご意見を言って頂ければと思います。
それでは、葛城作戦部長、お願いします。」

アスカはそう言いつつ、ミサトの方を見た。
ミサトは、アスカの言葉を受けて、説明を始めた。

「作戦部長の葛城です。お手許の資料に目を通して下さい…。」

それを皮切りに、ミサトは作戦案の説明をした。

「まず、基本的な戦略について説明します。

エヴァンゲリオン9機は、3部隊に分けて、ここを中心とする三角形の頂点に配置します。
真北、東南東、西南西です。
以前、空から落ちてきた使徒を迎え撃った時に3機のエヴァを配置したことがありましたが、
基本的には、その位置の近辺に配置します。

そして、1機は砲手として、ポジトロンライフルなどによって、空からの敵を狙撃します。
主な任務は戦闘機及び爆撃機の撃墜となります。必要に応じてミサイルの迎撃も行います。

そして、1機は地上戦を担当します。
地上部隊の侵攻を防ぐため、ライフルなどの弾数の多い武器で応戦します。
想定される敵は、戦車部隊と降下兵、海兵隊などです。
必要に応じて、戦闘機の迎撃なども行います。

最後の1機は、防御を担当します。
ATフィールドを張って、敵の放ったミサイルを迎撃します。
先日もSLBMを迎撃したところであり、成果は十分期待出来ると考えます。

なお、戦況に応じて、役割分担は随時変更します。
ここまでで、何か質問はありますか。」

ミサトが周囲を見渡したが、特に質問は出なかった。

「では、次にエヴァンゲリオンの支援体制を説明します。
先の戦自の侵攻からあまり時間が経っていないため、
各種支援兵器や兵装ビルの稼働状況は、殆どゼロだと思って下さい。
ですが、様々なルートから各種兵器を手に入れることが出来ました。

攻撃用ヘリが30機、戦車が30両、特殊装甲車が90両、携帯式ミサイルが900基、
他にも各種兵器を購入していますが、それは後のお楽しみということで。
傭兵部隊の皆さんは、基本的にはエヴァの後方で待機して頂き、
エヴァが敵の航空戦力を無力化した後で、エヴァと協力して敵の陸上兵力を叩きます。」

ミサトは、そこまで言うとアスカをチラリと見た。アスカは、それを見て口を開いた。

「以上が基本的な戦略です。
全体の指揮は、葛城作戦部長が執りますが、重要なパートには、それぞれ指揮官が置かれます。
エヴァンゲリオンの現場指揮は碇二尉が、
エヴァンゲリオン部隊全体の指揮はわたくしが、
エヴァンゲリオンと連携するための兵器の運用は、日向作戦部長代行が行います。
傭兵部隊の皆さんの現場指揮はジャッジマン大尉、
傭兵部隊全体の指揮は、加持一尉が行います。
それでは、皆さんの配置については、加持一尉から説明します。」

アスカは加持に目で合図をし、加持は続けて説明した。

「諜報部長代行の加持一尉だ。今回も傭兵部隊の指揮を執らせてもらう。
前回のゼーレの特殊部隊侵攻時には、傭兵部隊を市内4方面に配置したが、
今回はエヴァンゲリオンの配置に合わせることになる。

最初に敵の主力が押し寄せて来ると思われる東南東方面だが、
ワイルドウルフ2個中隊とカルロス中尉ら100人にお願いしたい。

次に、西南西だが、
レッドアタッカーズ1個中隊とリッツ大尉ら200人、エドモン中尉ら100人にお願いしたい。

北はレインボースター1個中隊、ヴァンテアン1個中隊、グエン中尉ら100人とにお願いしたい。

市内中心部にレッドアタッカーズ1個中隊、ジャッジマンの部隊1個中隊が待機する。
以上の通りだ。何か質問があれば、聞いて欲しい。」

すると、フランスの傭兵部隊、ヴァンテアンの隊長であるバレスが手を挙げた。

「エヴァンゲリオン部隊の配置を教えて欲しい。」

すかさず、アスカがこれに答えた。

「それには、わたくしが答えます。
敵主力が来る可能性が高い東南東には、碇二尉、ミンメイ一曹、マリア一曹の3名。
西南西には、渚三尉、ミリア一曹、アリオス一曹の3名、
北には鈴原三尉、相田一曹、サーシャ一曹の3名が配置される予定です。」

「そうか。実は、是非お願いしたいことがあってな。
ハウレーンをエヴァンゲリオン部隊に加えて欲しいのだ。
怪我については、もう治っている。
無理にとは言わないが、是非検討していただきたい。
出来れば北が良いのだが。」

「分かりました。ハウレーンさんの回復状況などを調べてから検討します。」

これもアスカは即答した。この話はアスカにとっては願ってもないことであった。
北の方には敵が来ない可能性が高いとはいえ、万一のことを考えると、
トウジ、ケンスケ、サーシャの3人組では心もとないのだ。

その後、各傭兵隊長から様々な質問や要望が飛び出した。
兵器についての要望が多かったが、この作戦自体の変更を求める声は無かった。
これによって、今回の作戦が、幾多の実戦をくぐり抜けてきた傭兵部隊から、
一応及第点をもらえたと言えよう。

こうして、この日の作戦会議は、長い時間をかけて終わった。

***

「ハウレーン、落ち着いてね。」

作戦会議の後、早速技術部はハウレーンのシンクロ率を計測した。
いくら怪我が回復しても、シンクロ率が低くては、話にならないからだ。
だが、結果は良好だった。30%近いシンクロ率だったのだ。
これは、マリア達よりも少し高く、ケンスケらに並ぼうというものだったからだ。

「碇二尉、ハウレーンの代わりに誰を予備に回した方が良いと思う?」

アスカは、シンジの意見を求めてきた。シンジは少し考えた後、こう答えた。

「そうだね、ヴァンテアンとの連携を考えて、
サーシャさんの代わりにハウレーンさんに入ってもらって、
サーシャさんはアリオス君と交代して、
アリオス君が予備に回れば良いと思うよ。」

「そうね、それで行きましょうか。」

アスカは同意した。
そう、アリオスのシンクロ率は、起動指数をやや上回った程度で、サーシャよりも低いのだ。
一応、シンジは皆のシンクロ率を覚えていたのだ。

こうして、ネルフの迎撃体制は着々と進んでいった。
後は、兵器の購入や搬入のスピード次第であった。


次話に続く

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written by red-x



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