新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS 第3部 ゼーレとの戦い−激闘編− 第50話補完 余波その2 「碇よ、アスカ君にはしてやられたな。」 「ああ。」 「しかし、ワイルドウルフの隊長は知り合いだからともかくとして、 レッドアタッカーズ、ヴァンテアンの大きな傭兵部隊に一銭も金を払っていなかったとは、恐れ入ったよ。 てっきりアスカ君の個人資産から払っていると思っていたのだがな。 加持君の予想も外れていたということか。」 実は、以前ネルフから傭兵部隊に金が渡っていないことが話題に上った時があって、 その時、加持がアスカの個人資産から払っているのではないかと言っていたのだ。 「怪しい動きをしていたが、それもこれもゼーレの資金をかすめ取るためだったとはな。 しかし、我々にも秘密にするとは、徹底しているな。」 「だが、シンジはある程度聞いていたようですよ。」 「シンジ君がかね。そんな素振りは見せていなかったがな。 だが、それはともかく、計画が成功しなかったらどうするつもりだったのかな。」 「おそらく、その時は負けた時だと思っていたんでしょう。」 「失敗したら、命は無いということか。アスカ君らしいと言えばそれまでだが。 しかし、300兆円もの資金をゼーレからかすめ取るとは、並大抵の事ではない。良く成功したな。 それに、これだけの資金が無くなったとすると、ゼーレの力もかなり落ちたと見て良いだろう。 この勝負、勝ったな。」 「そうですね。」 「日本政府の方は、今回は敵に回らないように手を打った。 アスカ君がかすめ取ったお金も使わせてもらったよ。 ワイロになるとまずいので、戦自の兵器を買い上げるという形で金を渡したよ。 その兵器の中には、例のアレもある。」 「ふっ、アレですか。」 「ああ、使い物になるのかどうか分からんが、アスカ君がもらえるものはもらってくれと言うのでな。 まあ、政府に金を渡すのが目的だったから、使えなくても構わんと思うが。 かなり金額は張ったが、その余波ともいうべきか、北の方は戦自である程度カバーしてもらえることになったよ。」 「ほう、戦自も良くその気になりましたね。」 ゲンドウは顔に僅かに喜びを現していた。 北方面は、トウジ達が担当するのだが、結果として守りが最も弱かったのだ。 だから、ある程度戦自でカバーしてもらうのは、非常にありがたかったのだ。 「何でも、あの映画も一役買っているらしい。 あの映画の中に、一部若手幹部がネルフ侵攻に反対し、サボタ−ジュをした場面があったが、 おかげで、戦自の面目が立ったということらしい。 それに、アスカ君を守ろうという意見を持つ者が多かったということもあるらしいがな。」 「あの映画には、幾つもの意味があったということか。」 「ああ、アスカ君には頭が下がるよ。 彼女をエヴァのパイロットとして使えなくなったのは痛いが、 それ以外の分野での彼女の活躍には目を見張るものがある。 もし、彼女がエヴァに乗れたとしても、パイロットとして使うかどうかは分からんな。 それにしても、これだけの作戦を彼女一人で考えついたというのは、考えられないな。 やはり、ユイ君の素案がベースというのは本当らしいな。」 「ええ、そうですね。」 「だが、唯一引っかかるのが、開発者コードか。あれだけは疑わしいな。 アスカ君は、まだ我々に秘密を持っているのか。それとも、我々の想像を超える何かがあるということか。 いずれ分かることとは思うが。」 「今はそれでいいでしょう。」 こうして、ゲンドウと冬月は話に一区切りつけて、次の話題へと移っていった。 *** 「マナちゃん、元気かい。」 「あっ、加持さん。お久しぶりです。その節はありがとうございました。」 マナは、急な電話に驚きながらも、礼を言うのを忘れない。 「どうだい、調子は。」 「ええ、もうこの町にも慣れてきました。お友達もたくさん出来ましたし。」 「そうか、ならいい。先日のテレビは見たかい。」 「ええ、見ました。そちらも大変ですね。シンジ君は大丈夫なんでしょうか。」 「ああ、大丈夫だ。」 「惣流さんとも仲が良いんでしょうか。」 「ああ、そうだ。」 「もう一度でいいから、シンジ君に会いたいんですが、駄目なんでしょうか。」 「その件と関連があるんだが、重要な話がある。 戦自と話がついて、君とケイタ君の安全は保証されることになった。 遠くない内に、晴れてマナちゃんは、ご家族と一緒に住むことが出来るようになる。」 「本当ですかっ!」 「ああ、本当だ。だが、ネルフがゼーレに勝ってからという前提があるがね。」 「ケイタとも会えるんですか。今すぐにでも会いたいです。」 「残念ながら、ケイタ君は訳があって、自由の身にはならない。」 「な、何故なんですか。」 「今は言えない。だが、ゼーレとの戦いが終われば会えるようになる。約束するよ。」 「間違い無いですね。」 「ああ、そうだ。」 「シンジ君とも会えるんでしょうか。」 「本音を言うと、会ってほしくない。アスカが焼き餅を焼くからな。 それに、シンジ君はアスカ以外の女の子は眼中にない。 マナちゃんは、シンジ君に会っても傷つくだけかもしれない。 それでもいいという覚悟があるのなら、昔の知り合いとして会うだけだというのなら会えば良い。 俺にそれを止める権利はない。いずれにせよ、今月中は無理だ。ゆっくりと考えてくれ。」 「はい、分かりました。」 「では、準備が出来たら連絡するよ。それじゃあな。」 「はい、よろしくお願いします。」 そこで電話は途切れた。マナは、少しだけ笑顔を綻ばせた。 これも、アスカがかすめ取ったお金が、周り回って与えた余波だった。 次話に続く ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき マナちゃんがやっと登場しました。でも、これだけで終わるかも。 少なくとも、第3部では、もう出て来ないと思います。 written by red-x