新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS

第3部 ゼーレとの戦い−激闘編−

第56話 決戦!第3新東京市その6


「将軍、我が艦隊との連絡が取れません。一体、どうしましょうか。」

「やはり、駄目か。」

「はい、ネルフから妨害電波が出ているようです。」

「ふうむ、仕方ないな。潜水艦との連絡はどうだ?」

「駄目です。」

「本部との連絡はどうなっている?」

「駄目です、連絡が取れません。」

「そうか。そうなると、我々独自の判断で動かないといかんな。」

「はい、やむを得ないでしょう。」

「地上部隊間の連絡はどうなっている?」

「はっ。有線方式と、レーザー方式などを併用していますので、何とか連絡は取れます。」

「そうか、では、試したいことがある。」

将軍は、そう言うとニヤリと笑った。

***

「ミサイル、3方向から来ますっ!」

シゲルの声に、発令所は騒然となった。
それも、そのはず。内陸部から、突然敵のミサイル攻撃があったのだから、無理もない。

「シンジ君、トウジ君、カヲル君、ともにATフィールドを張りましたっ!
ミサイルは、全てATフィールドに阻まれて爆発、エヴァンゲリオンに被害はありませんっ!」

その声に、発令所の面々は胸をなでおろす。

「マリア、ハウレーン、ミリアの3名が、パレットガンで攻撃を加えましたっ!
敵の攻撃は、沈黙しましたっ!」

各々の正体の判断で、ミサイルを防御し、アスカの指示で、ミサイル発射地点に攻撃を加えたのだ。
着弾地点からは、それぞれ派手な火の手が上がった。

「偵察ヘリ、出しますっ!」

今度は、ミサトの指示で偵察ヘリを出すことになった。
普通に考えれば、今頃偵察ヘリを出すのは遅すぎるのだが、
今のネルフには無人のヘリをあまり保有していないという事情があったのだ。

最初からヘリを飛ばしていると、必ず最初の攻撃で撃ち落とされることが分かっているから、
少しでも無人偵察ヘリの被害を減らそうとしてのことである。

有人ヘリを出せば良いとの意見もあったが、ヘリが撃墜されて、
乗員が楯に取られる危険性があったため、有人ヘリの投入は見送られたのである。

この無人ヘリからの情報で、敵の攻撃が無人兵器によるものと分かった。
つまり、敵兵が近くに忍び込んでいるか、それともかなり前から準備を行っていたか、どちらかだということだ。

念のため、辺りを捜索してみたが、敵兵の姿も形も無かった。
姿の見えない敵の地上軍に、ミサトや加持は唇を噛んだ。

***

薄暗い森の中で、迷彩服を着た2人の軍人が、話をしていた。

「将軍、我が方のミサイル攻撃は不発に終わりました。
エヴァンゲリオンのATフィールドに阻まれて、全弾エヴァンゲリオンに着弾する前に爆発しました。
そのうえ、即座に敵の反撃があり、ミサイル発射装置は全滅です。」

「そうか。即座に反撃されたか。」

「はい、それが何か?」

「いや、敵のパイロット達が子供だということを聞いてな、反撃にためらいがでるのかどうか、試してみたのだ。
だが、やはり無駄だったか。」

「ええ、何のためらいもなく撃ってきたそうです。
それも、正確に発射地点を狙ったそうです。」

「まあいい、もう2〜3回試してみるか。だが、思った以上にやるなあ。敵の指揮官の名は、なんと言ったっけ。」

「はっ、作戦部長の葛城ミサト三佐です。」

「ふうむ。使徒戦を勝ち抜いたのは、伊達ではないってことか。」

「はあ。ですが、葛城三佐は、記憶喪失だったという噂があり、
別の人物が実質的な指揮を執っているとの情報もあります。」

「ほう、それは誰だ?」

「はあ、何人か候補がいるのですが。
諜報部部長代行の加持リョウジ、
作戦部部長代行の日向マコト、
同じく作戦部の青葉シゲル、
サードチルドレンの碇シンジ、
そして、元セカンドチルドレンの惣流・アスカ・ラングレーです。」

「ほう、子供が指揮を執っている可能性があると?」

「はあ、何せネルフは人材が乏しいと言われていますので。」

「碇シンジの名が上がった理由は?
彼は、エヴァンゲリオンに乗るまでは、普通の中学生だったという話を聞いたことがあるが。」

「それにしては、長年訓練を重ねてきた元セカンドチルドレンよりも、使徒戦での戦績が良いのは腑に落ちません。
あの、ゲンドウの息子ですから、普通の中学生だったというのも嘘の情報である可能性が高いと思われます。」

「元セカンドチルドレンというのは?」

「彼女は、エヴァンゲリオンに乗れなくなったこと、それにドイツで軍事面でも英才教育を受けたことがあげられます。」

「ふっ、俺達は、子供の立てた作戦に翻弄されている可能性があるっていうことか。」

「残念ながら・・・。」

「惣流・アスカ・ラングレーか。さぞ、大きくなっただろうな。まさか、敵同士になるとはな。」

「ご存じでしたか。」

「ああ、昔の話だ。可愛くて気の強い娘だったが、今もそうなのかな。」

「はい。可愛いのは間違いありませんが、気が強そうには見えません。
ですが、エヴァンゲリオンのパイロットでしたから、気が弱くてはやっていけないでしょう。」

「そうだな。だが、あの娘は死なせたくはないな。
一応、全軍に伝えておけ。いつも通り、投降した者と女子供は殺すなとな。チルドレンも同様だ。」

「良いのですか。チルドレンには、上から抹殺指令が出ていますが。」

「我々は、狂った野獣ではないっ!
兵士である前に、誇り高い人間なのだっ!
子供を傷付けたり殺すのは、人間のクズがやることだっ!
いざとなったら、俺の命に代えてでも子供達は守るっ!
お前も、人の親だろう?他人の子供だからといって、見捨てるつもりかっ!
人間としての誇りを忘れたのかっ!」

「はっ、申し訳ありませんっ!承知しましたっ!」

将軍の部下は、直立不動で敬礼した。

***

「ミサイルが来たよっ!マリアさん、反撃の準備をっ!ミンメイさん、気を付けてっ!」

先程のミサイル攻撃から、5分も経たないうちに、再度敵のミサイルが襲ってきた。
シンジは小隊長として、訓練通りに部下達に指示を与える。

「くそうっ!」

シンジは、急いでATフィールドを張って、ミサイル攻撃を防いだ。

「ドッカーン!」

ATフィールドを張って間もなく、ミサイルが壁に当たって爆発した。今回も被害無しだ。

「マリアさん、頼むよっ!」

「任せてっ!」

マリアは、アスカからのデータを受信すると、即座にパレットガンを打ち放った。

「バン!バン!バン!」

パレットガンから打ち出された弾は、直ぐに目標地点に着弾し、勢い良く爆発した。

「ふうっ。今度もうまくいったわね。」

マリアは、肩をなでおろした。そんなマリアに、シンジは声をかけた。

「マリアさん、お疲れさま。」

「ううん、碇君こそ大変でしょう。」

「僕なら大丈夫だよ。相手が人間なのは嫌だけど、使徒と比べたら、恐ろしさが違うもの。
それに、指揮官が優秀だから。」

「あら、惚気話なら聞かないわよ。」

「そ、そんなんじゃないよっ!」

「あ〜ら、どうかしらね。ミンメイもそう思わない?」

「思う、思う。」

「まったく、もう〜っ。」

(やんなっちゃうよな〜。)

頬を膨らませながらも、有効な反論が出来ないシンジであった。

***

「さあて、お次は何が来るかしら。」

シンジ達が和やかな会話をしている頃、アスカは軽い口調とは裏腹に、目付きは真剣だった。
いくら調べても、敵の地上部隊の概要がさっぱりと掴めないからだ。

現時点では、敵の海上戦力についてはかなりの打撃を与えているし、
潜水艦についても、戦自に要請して圧力をかけている。
残る気がかりな戦力は、地上部隊と航空機なのだ。

航空機に関しては、戦自に要請して早期警戒管制機E−3Aを2機出してもらい、警戒態勢をとってもらっている。
だから、確実とは言えないが、急に戦闘機部隊が現れる可能性は低いはずだ。

そうなると、厄介なのが地上部隊だ。
まとまって動いていれば、所在は掴めるはずなのだが、未だに兵士の一人として所在が掴めない。
しかも、攻撃だけは仕掛けてくる。
多分、見つかりにくいように、少人数に分散して行動しているのだろうが、それにしても手がかりが無さ過ぎる。

夜になると、特に見付けにくくなるはずだ。
だから、今のうちに敵の規模位は掴みたいのだ。
そうしないと、夜陰に乗じて近付かれて、一斉にミサイル攻撃を受ける破目になってしまう。

シンジとカヲルならば、全く心配する必要は無いが、
トウジ達の小隊は、全員がアンビリカブルケーブルの電源供給を受けているため、
電源周りを攻撃されたらひとたまりもないのだ。

北方面を手薄にしたのは、海からの上陸の可能性が低かったからだが、
地上部隊が既に上陸し、作戦行動をとっているとなると、あまり意味が無かったように思える。

「ちっ、しくじったかしら。」

アスカは唇を噛みしめる。

「森を焼き払おうかしら。」

そんな考えが浮かんだが、直ぐに思いなおした。
大火事になって、混乱を招きかねないからだ。
だが、そんなアスカの悩みが吹き飛ぶ出来事が起きた。
敵の大規模な攻撃が始まったのである。

***

「南方から、戦闘機の大編隊が来ますっ!数は、およそ300機ですっ!」

「何っ!」

シゲルの声に、発令所は大騒ぎになった。

「アスカっ!敵の大編隊よっ!」

ミサトは、我を忘れて怒鳴った。だが、アスカに最優先で情報を回すのだけは忘れない。

「大丈夫よ、落ち着いて。今、各小隊に情報を送ったわ。」

ミサトが正面パネルを見ると、3機のエヴァがポジトロンライフルで戦闘機を撃つのが見えた。
だが、敵の編隊は、最初の1機が撃ち落とされるのを見ると、分散して回避行動をとるようになった。
途端に命中率が下がる。

「くっ。アスカっ!何とかならないのっ!」

「やってるわよっ!でも、敵の動きが早すぎて、エヴァの反応が追いつかないのよっ!」

「日向君、そっちはどう?」

「まだ、射程内に入っていません。
ですが、射程内に入っても撃ち落とせるかどうか、分かりません。」

「う〜ん。」

ミサトは少し唸った後、アスカの指示を仰いだ。

「アスカ、どうしようか?」

「戦闘機は、エヴァに任せて。
おそらく、アタシ達の兵器では、戦闘機を撃ち落とすのは難しいわ。
日向さんには、加持さんと連携して、敵の地上部隊の攻撃に備えるように指示してよ。」

「ええ、分かったわ。でも、どうしてこんな大編隊が現れたのかしら。」

「おそらく、さっきやっつけた艦隊の空母の艦載機ね。
どこかに滑走路を確保しておいて、そこに戦闘機を避難させておいたのね。
敵も、勘の良い指揮官がいるっていうことよ。」

「私達の攻撃を読んでいたと言うの?」

「多分ね。
敵からすると、航空兵力を分散しておいても特に支障は無いし、万一空母がやられた時の保険をかけるのは、当然よ。
でも、これだけ近くに滑走路の代わりを用意しておくなんて思わなかったわ。」

「そうね、やられたわね。」

「でも、これだけならまだ大丈夫よ。
それよりも、他にも仕掛けて来るだろうから、警戒は怠らないようにしてね。」

「わかったわよ、アスカ。」

「加持さんにも言っておいて。地上部隊の侵攻は近いって。
傭兵部隊にも、臨戦体制をとらせてね。」

「ええ、分かったわ。」

だが、この時、すぐ近くにステルス爆撃機が迫っていたのを、アスカ達は気付くはずも無かった。



次話に続く


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ネルフの迎撃体制について

○発令所

・ゲンドウ、冬月、リツコ、マヤ、シゲル
・ミサト:全体の指揮(名目)・マコト:兵器の運用
              ・加持 :傭兵部隊の指揮

○アスカルーム

・アスカ:エヴァンゲリオン部隊の指揮、全体の指揮(実質)
・アールコート:アスカのお手伝い

○地上部隊

・市中心 レッドアタッカーズ1個中隊、ジャッジマンの部隊1個中隊

・東南東 エヴァ第1小隊:シンジ(現場指揮官、小隊長)、ミンメイ(砲手)、マリア
     ワイルドウルフ2個中隊とカルロス中尉ら
・西南西 エヴァ第2小隊:カヲル(小隊長)、サーシャ(砲手)、ミリア
     レッドアタッカーズ1個中隊とリッツ大尉、エドモン中尉ら
・真北  エヴァ第3小隊:トウジ(小隊長)、ケンスケ(砲手)、ハウレーン
     ヴァンテアン1個中隊、レインボースター1個中隊、グエン中尉ら

written by red-x



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