新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS

第3部 ゼーレとの戦い−激闘編−

第57話 決戦!第3新東京市その7


「将軍、もうすぐ我が方の爆撃機、F-117A NIGHT HAWKが到着する時間です。」

F-117A NIGHT HAWK とは、20世紀後半に起きた湾岸戦争でも活躍した、ステルス爆撃機である。
流石に最新鋭とは言えないが、その性能はかなり高い。
これを凌ぐ機体は、量産機としては未だに開発されていない。

「そうか。全軍、所定の位置に展開したか。」

「はっ。将軍の指示通りにしています。」

「そうか。我が方の艦隊とは、まだ連絡が取れないか?」

「はい、残念ながら。」

そこに、1人の兵士が息を荒くしながらやって来た。

「将軍!至急お知らせしたいことがあり、やって参りましたっ!」

「何だ?」

「現在、我が方の戦闘機が多数第3新東京市に向かっております。
ですが、現在、エヴァンゲリオン部隊の砲撃に晒されているもようです。」

それを聞いた将軍の顔がぱっと明るくなった。

「そうか、ご苦労。あいつめ、俺の言うことをしっかり実行してくれたようだな。」

同じく、明るい顔になった部下も言う。

「これで勝てますかな。」

「ああ、大丈夫だろう。」

将軍は、ニヤリと笑った。

***

「ちっくしょう!全然当たらないよっ!惣流、何とかならないのかっ!」

ケンスケは、急速に向かってくる戦闘機の大群を前に、慌てふためいていた。

「駄目よっ!敵の動きが早すぎるわよっ!自分で何とかしなさいよっ!」

「そ、そんなこと言ったって。」

「冗談よっ!今考えているから、何とか切り抜けてっ!」

アスカは、ケンスケとの通信を終えると、加持と連絡をとった。

「加持さん、傭兵部隊の出番が来そうよ。」

「ああ、任せておけ。」

「準備はどうかしら。」

「既に臨戦体制にしてある。」

「分かったわ。こっちの方も、うまくフォローするわね。」

アスカは、加持と事前に綿密な打ち合わせをしていた。
このような事態になることが想定出来たため、対策も一応は練られているのだ。

「ああ、頼む。」

そこで、加持との通信は切れた。
アスカは、すぐさま端末を猛烈な勢いで叩くと、戦闘機に対する防衛システムを起動させた。
起動が確認されると、アスカはマリア、ミリア、ハウレーンの3人に通信を入れた。

「どう?状況を教えて。最初は、マリアからお願い。」

「中々ポジトロンライフルが当たらないわ。それでも、30機は撃墜しているわ。
私もパレットガンを撃っているけど、命中率は良くないわ。」

「ミリアは、どう?」

「こちらも、サーシャが癇癪を起こしそうなくらい、命中率は悪い。撃墜したのは、20機ほどだ。」

「ハウレーンはどう?」

「まったく、当たらない。せいぜい5機だ。
おそらく、相田は戦闘機を撃つのにためらいがあるのだろう。」

「そう、分かったわ。撃墜したのは、50機位ね。そうなると、残りは250機。
これを傭兵部隊に叩いてもらうわ。あと10分後に、指揮系統を変更するわね。
それを境目に、傭兵部隊の一部は、あなた達の指揮下に移るわ。それと同時に、砲手は攻撃を停止。
敵の奇襲に備えて、臨戦体制のまま待機。以上、質問はあるかしら。」

「ないわ。」
「無い。」
「同じく。」

「じゃあ、お願いね。健闘を祈るわね。」

アスカは、死なないでという言葉を飲み込んで、通信を切った。

***

「うわあああっ!」

シンジは叫び声をあげた。戦闘機が急接近し、雨あられとミサイルを放ったからだ。

「隊長!落ち着いてくださいっ!」

マリアが一喝すると、我に返り、すぐにATフィールドを張った。
間一髪、ミサイル群はATフィールドに当たって、爆発する。

「ふう、間に合った。」

シンジは、胸をなでおろした。だが、内心ではかなりあせっていた。

(ううっ、まずいよ〜っ。こんな時にミスしたら、アスカに会わせる顔が無いよ。)

それでも、ミサイルの爆発が収まると、段々と落ち着いてきた。

「ありがとう、マリアさん。ごめんね、取り乱しちゃって。」

「ううん、いいのよ。それよりも、ATフィールドを暫くの間、張れるかしら?」

「ああ、大丈夫だと思うよ。」

シンジは、ATフィールドを維持するために精神を集中した。
戦闘機からは、散発的にミサイルが放たれるが、ATフィールドを打ち破ることは出来なかった。

シンジは、ミンメイと連携してATフィールドを張った。
そして、敵の攻撃の合間を衝いて、ミンメイのポジトロンライフルが閃光を発し、
簡単にとはいかないが、徐々に戦闘機を撃ち落としていく。

また、マリアの指揮の元、傭兵部隊の特殊装甲車から発射される地対空ミサイルも、次々と戦闘機に襲いかかる。
マリアは、敵戦闘機の攻撃が特殊装甲車に及ばないように、けん制を行う。

シンジは、ミンメイとマリアが攻撃を受けないように、上手くATフィールドを張った。
このため、エヴァンゲリオンに対するミサイルの直撃はなく、有利な展開が続いた。


この均衡を破ったのは、ステルス爆撃機だった。
エヴァンゲリオンの頭上に到達したこの爆撃機は、多数の爆弾を投下したのである。
さすがに、爆弾を投下するためには、投下口を開かねばならず、この時にネルフにその存在を察知されたのである。

だが、気付いた時にはもう遅く、エヴァンゲリオン部隊の直上で、NN爆弾が爆発した。
このため、パイロット達の注意は頭上に向けられて、横への警戒がおろそかになってしまったのである。

この僅かな隙を衝いて、戦闘機はエヴァンゲリオンに向かって、ミサイルをありったけ発射した。
この時、エヴァンゲリオンのボディー自体は無傷だったが、アンビリカブルケーブルを破壊されてしまったのである。

「しまったっ!」

シンジは悔しがったが、後の祭りである。
止むなく、シンジ達の小隊は、手近なアンビリカブルケーブルに向かって移動せざるを得なかった。

だが、それを見逃す敵ではなかった。
エヴァンゲリオンの移動先に対して、戦闘機はミサイル攻撃を行った。
このため、あと少しというところで、ケーブルは破壊されてしまったのである。

ちょうどその時、マリアとミンメイの乗機の電源がゼロになった。
このため、2機とも動きが止まってしまった。

「マリアさんっ!ミンメイさんっ!」

電源の落ちたエヴァに呼びかけても、返事は帰ってこなかった。

「シンジっ!エヴァを抱えて、移動するのよっ!」

丁度その時、アスカの怒鳴り声が聞こえてきたため、シンジ我に返ることができた。

「わ、分かったよっ!」

シンジは、次なるケーブルを目指して移動した。

***

一方、他の小隊も同じような状況だったが、トウジの小隊は既に撤退していた。
シンジやカヲルと違って、S2機関を起動出来る者がいないため、ケーブルの破壊とともに、即座に撤退を開始したのだ。

無論、傭兵部隊も同様に撤退した。エヴァの援護無しに戦うのは、自殺行為だからだ。
こうして、北の守りに大きな穴が空いてしまったのである。

それを見逃すゼーレではなく、どこから現れたのか、
北部方面から大規模な地上部隊が忽然と姿を見せ、進撃を開始したのである。

その地上部隊は、オートバイを主体とする部隊で、オートバイの数はおよそ2千。
それ以外の歩兵部隊がおよそ3千、合わせて5千人の大部隊だった。

しかも、同じ頃、海からも大兵力が上陸していた。
この部隊は、大島に艦隊が集結する前に、密かに艦隊から離れていた兵士達だった。

20人乗りのゴムボートに分乗し、潜水艦などにに曳航してもらって、
かなり早いスピードで第3新東京市の東の海岸に辿り着いたのだ。

ゴムボートの数は、およそ300。約6千人の兵士達が次々と上陸し、第3新東京市を目指したのである。


この状況の中で、踏ん張ったのがカヲルの部隊だ。
カヲルは、アンビリカブルケーブルへの攻撃を見事にかわして、小隊としての機能は失っていなかった。

このため、ミリアが近くの戦闘機を追い払い、サーシャが東方面の戦闘機のけん制を行ったため、
ワイルドウルフの部隊は敵戦闘機に対する攻撃を継続することが出来たのだった。

だが、カルロス中尉の部隊も含めても2個中隊半のワイルドウルフに対して、
30個中隊、10倍を超える敵は荷が重すぎる。
敵の地上部隊が攻めてくれば、あっけなく蹴散らされるのは火を見るよりも明らかだった。

***

「シンジ!マリア達を地下に戻してっ!」

「わ、分かったよ、アスカ。」

アスカの指示に従い、シンジはエヴァンゲリオンの射出口にマリアとミンメイの機体を運んだ。
そして、下降していく機体の上でATフィールドを張り、2人の乗る機体をで守りながら、シンジは周りを伺った。

敵の攻撃は休み無く続いたが、ATフィールドに阻まれて、マリア達に危害が及ぶことはなかった。
シンジは気を取り直すと、ポジトロンライフルで戦闘機を狙い撃った。

「落ちてくれ〜っ!」

シンジは必死になって撃ちまくったが、戦闘機には中々命中せず、シンジは次第に焦りの色を濃くしていった。

(ここで、僕が頑張らなくちゃ。)

シンジは気負ったが、気持ちだけが先に立ち、うまくいかなかった。
そこに、アスカから敵のオートバイ部隊を撃つようにとの指示があった。

「シンジ、北の部隊を攻撃してっ!」

「で、でもっ。生きている人間を撃つの?」

「しょうがないでしょ。戦争なんだから。」

「でも、他に方法はないの?」

「あったら、アタシが教えて欲しいわよ。いいから撃ちなさいよ。」

「でも、生身の人間を撃つなんて。」

(そんなこと、僕には出来ないよ。)

さすがにシンジはためらった。
いくら何でも、生身の人間をポジトロンライフルで撃つなんて、恐ろしくて出来なかったのだ。

「良いわっ!もう、頼まないからっ!」

アスカは、怒って通信を切った。

「ア、アスカ!」

シンジは叫んだが、答は返って来なかった。シンジは呆然とした。

(まずいっ。またアスカを怒らせちゃったよ。)

だが、この時シンジは致命的な隙を見せてしまった。それを見逃すゼーレではなかった。
爆撃機から、何発もの特殊爆弾が投下されたのである。
それは、ステルス爆撃機秘蔵の、電磁パルス爆弾だったのである。

***

「エヴァ初号機、沈黙っ!」

シゲルの声に、発令所のメンバーは顔色を失った。
何と言っても、シンジは最後の頼みの綱なのである。
そのシンジが動けなくなるという事態に、誰もが敗北の2文字が頭の中をよぎっていた。

だが、幸運なことに、カヲルの部隊が残っていたため、
サーシャがシンジの初号機に近付く戦闘機をけん制することができた。
だが、カヲルの部隊も自分達を守るのに精一杯である。

このため、北から向かって来るオートバイ部隊と、
東から向かって来る地上部隊を迎え撃つ戦力が無かった。このままでは、ジリ貧である。

「加持っ!何とかならないのっ!傭兵部隊を突っ込ませてよっ!」

「おいおい、無茶を言うなよ。戦闘機が頭上に群がっているんだぜ。
エヴァの援護無しに立ち向かうなんて、自殺行為だ。5分もしないうちに、全滅するのは間違いない。」

「でも、このままだと、内部に侵入されちゃうじゃない。」

「分かるが、今のままだと、打つ手は無いぞ。」

「じゃあ、どうしたら良いのよ。せっかく勝てると思っていたのに。
何とか、エヴァを動かすことは出来ないの?」

「今は無理だ。渚君の部隊に接近してもらって、エントリープラグを抜いてもらうしかない。
それから、他の機体に移ってもらうしかないだろう。」

「そんなの無理よ。渚君達は、自分達の身を守るだけで精一杯なのに。」

ミサトは、青ざめた顔で、正面スクリーンを見つめた。だが、最後の希望を思い出した。

「そうだ、私達には、アスカがいたわ。」

ミサトはすぐさまアスカを呼び出した。

「アスカ!シンジ君のエヴァが動かないの。何とか動かせないかしら。」

「それは無理よ。」

「そ、そんなあ・・・。」

ミサトは、最後の頼みの綱であるアスカに否定され、がっくりと肩を落とした。

「でも、エヴァが動かなくても、手が無い訳じゃないわ。」

「えっ、ホント?」

「アタシを誰だと思っているのよ。天才美少女、惣流・アスカ・ラングレーよ。」

アスカは、そう言ってニヤリと笑った。




次話に続く


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ネルフの迎撃体制について

○発令所

・ゲンドウ、冬月、リツコ、マヤ、シゲル
・ミサト:全体の指揮(名目)・マコト:兵器の運用
              ・加持 :傭兵部隊の指揮

○アスカルーム

・アスカ:エヴァンゲリオン部隊の指揮、全体の指揮(実質)
・アールコート:アスカのお手伝い

○地上部隊

・市中心 レッドアタッカーズ1個中隊、ジャッジマンの部隊1個中隊

・東南東 エヴァ第1小隊:シンジ(現場指揮官、小隊長)〜起動不能
     ミンメイ(砲手)、マリア〜撤退
     ワイルドウルフ2個中隊とカルロス中尉ら
・西南西 エヴァ第2小隊:カヲル(小隊長)、サーシャ(砲手)、ミリア
     レッドアタッカーズ1個中隊とリッツ大尉、エドモン中尉ら
・真北  エヴァ第3小隊:トウジ(小隊長)、ケンスケ(砲手)、ハウレーン〜撤退
     ヴァンテアン1個中隊、レインボースター1個中隊、グエン中尉ら〜撤退

written by red-x




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