新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS

第3部 ゼーレとの戦い−激闘編−

第59話補完 奇跡の女神


「あ〜あ、アタシは結構頑張ったのにな。」

アスカは、ケージへと向かっていた。
今は、何体かのエヴァンゲリオンが収容されている。
アスカは、そのうちの1体に乗って、出撃するつもりだった。

だが、アスカはエヴァには乗りたくなかった。
現在のエヴァのコアは、アスカの人格を使用しているため、アスカがエヴァに乗り込むと、
良くてエヴァに取り込まれ、悪くすると脳が破壊されてしまうのだ。
いずれにせよ、もう生きては戻れないのだ。

だから、MAGIに細工をして、アスカのシンクロ率をわざと低く表示させて、
エヴァのパイロットから引退したのだ。だが、その努力も無駄になってしまった。

「あ〜あ、本当にアタシの人生真っ暗ね。」

アスカは自分でも知らないうちに、涙を流しながら歌っていた。


「ママには首を絞められて〜 大人に陰口叩かれて〜     
子供はいじめの雨嵐〜 殴られ蹴られて〜 つねられた〜
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 生きるの辛い毎日よ〜
必ずいつかは見返すと〜 唇かみしめ〜 耐えたのよ〜

エリート少女になったけど〜 その日にママが首吊って〜
厳しい訓練休み無し〜 心も体も〜 ボロボロよ〜
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 だけど涙は見せないよ〜
皆の前では強がって〜 いつも心で〜 泣いていた〜

大きくなったら人類の〜 未来を賭けて〜 戦って〜
ママの願いを知ってから〜 生きる支えが〜 出来たのよ〜
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 寝る間も惜しんで頑張って〜
地獄をもたらす使徒どもと〜 この身を捨てても〜 戦うよ〜  

いきなり空から落されて〜 気付けば周りは敵だらけ〜
鉛の弾が雨あられ〜 死ぬのは嫌よと〜 戦った〜
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 どんどん湧き出る敵兵士〜
気付けば体は血まみれよ〜 これは夢よと〜 嘆いたの〜

幾多の戦場渡るうち〜 傭兵稼業が板に付き〜
精鋭部隊に入れられて〜 最前線で〜 戦った〜
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 だけど負けないくじけない〜
力の限りに戦って〜 この手で勝利を〜 掴むのよ〜
 
あ〜あ アタシの人生真っ暗よ〜 だけどアタシは逃げないよ〜
誰かがアタシの身代わりに〜 地獄に落ちて〜 しまうから〜


ちっちゃな頃から生き地獄〜 12で悪魔と呼ばれたよ〜
敵の中に突っ込んで〜 近寄る者皆〜 切り裂いた〜
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 心は荒んでいくばかり〜
良い子になろうとしてたのに〜 どこで歯車〜 狂ったの〜

仲間が地雷を踏んだのさ〜 とっても良い奴だったのに〜
散らばるかけらをかき集め〜 明日は我が身と〜 泣いたのさ〜
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 淡い初恋だったのに〜
尽きずに流れる血の涙〜 いつかは枯れると〜 信じたい〜

仲良いあの娘と二人して〜 旅に出ようと決めたのさ〜
敵の組織に見付かって〜 血ヘドが出るまで〜 殴られた〜
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 何処に行っても敵だらけ〜 
果てなく続く戦いに〜 早く終わりが〜 来ないかな〜

熱い心は命取り〜 夢は捨てろと教えられ〜
死ねば地獄と言うけれど〜 ここよりましよと〜 言いたいわ〜
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 悲しい未来が見えてくる〜
体が朽ちても戦って〜 挙げ句の果ては〜 野垂れ死に〜

たとえこの身を裂かれても〜 地獄の業火に焼かれても〜
決して逃げずに戦うよ〜 それがアタシの〜 生きざまよ〜  
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 いっつも損な役だけど〜
仲間を守るためならば〜 命を捨てても〜 惜しくない〜

あ〜あ アタシの人生真っ暗よ〜 だけどアタシは逃げないよ〜
誰かがアタシの身代わりに〜 地獄に落ちて〜 しまうから〜


勇んで日本に来たけれど〜 戦う相手は天使だと〜 
そのうえアタシは2番手で〜 アタシのプライド〜 ずたずたよ〜
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 だけどアタシはくじけない〜
必ずトップになってやる〜 それを励みに〜 頑張るよ〜

今度の仲間は頼り無く〜 だからアタシが頑張って〜
敵に向かって行ったけど〜 物の見事に〜 返り討ち〜
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 見事に踊って見せたのに〜
下手な仲間に合わせろと〜 逆にアタシが〜 怒られた〜

バケモノ相手に戦って〜 心は日ごとにすり減って〜
やることなすこと裏目って〜 最後は心を〜 壊された〜
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 だけどアタシは強いんだ〜
いつかは必ず甦り〜 見事に復活〜 してみせる〜

最後に一花咲かせよと〜 バケモノ相手に大暴れ〜
ラストの一匹倒したが〜 いきなり目玉を〜 射抜かれた〜
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 バケモノどもが起きてきて〜
この身を割かれて食われたよ〜 おまけに最後は〜 くし刺しよ〜

気になる男に告られて〜 恋人同士になったけど〜
男は爆弾モロに受け〜 今にも死にそう〜 危ないわ〜 
あ〜あ アタシの人生真っ暗ね〜 男のために死ぬなんて〜 
アタシらしくはないけれど〜 他に手段は〜 ないのよね〜

あ〜あ アタシの人生真っ暗よ〜 だけどアタシは逃げないよ〜
誰かがアタシの身代わりに〜 地獄に落ちて〜 しまうから〜」


アスカは、歌いながら、今までの人生を振り返っていた。
確かに、死にたくはない。でも、今戦わなければ、ネルフのみんなが死んでしまう。
敵の司令官がカール将軍であることが分かったため、おそらく旧知の自分は、抵抗しなければ助かるのは分かっていた。

だが、大人達は無傷では済まないだろう。
それに仲間達も抵抗すれば殺されてしまうし、エヴァンゲリオンのパイロットはただでは済まないだろう。
助かるとしても、自分だけかもしれない。ならば、自分一人の被害で済むならば、やむを得ない。
シンジは怒るかもしれないが、自分が一人生き残るのは、死ぬよりも辛いのだ。

「シンジ、アンタだけは何としても助けてみせる。」

アスカは、シンジを救うため、命を捨てる覚悟をしていた。

***

「はっ!」

それまで眠っていたレイは、急に目を覚ました。

「そんなことをしたら、ダメ。碇君が悲しむ。」

レイは唐突に呟いた。

「どうしたんだ、レイ。君には休息が必要だ。もう少し休んでいるんだ。」

近くで声がした。だが、レイは首を振った。

「駄目だよ、レイ。今、力を使ったら、君は死ぬかもしれない。
運が良くても、長い間、眠り続ける破目になるだろう。」

だが、再度レイは首を振った。レイの本質は、誰にでも慈愛を捧げる女神である。
自分の身可愛さに、大切な人を見捨てることは出来ないのだ。
アスカもシンジも、レイにとってはかけがえのない大切な仲間であったから、尚更だ。

「ダメ。今を逃したら、碇君が死んじゃう。」

だが、シンジに対する気持ちの方がやや強かったようだ。
レイの側にいた少年は、軽く首を振ったが、諦めたようだ。

「分かったよ。それなら、僕も力を貸すよ。それで良いね。」

無論、レイは頷いた。そして、手を合わせ、精神を集中させた。
側にいた少年も、同様に精神を集中させた。
2人の気は徐々に大きくなり、ついには膨大なエネルギーの塊となった。

「碇君、私の力を受け取って!」

レイが声を発したその瞬間、火星の大地の割れ目から、まばゆいばかりの光が地球に向けて放たれた。

「碇君、どうか、生き延びて…。」

レイはそこまで呟くと、意識を失った。



次話に続く
 
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あとがき

やっぱり、レイ抜きのエヴァンゲリオンは味気ないですね。
でも、アスカと張り合うような世俗的なレイではなく、もっと上の、女神的な存在にすることにしました。
でも、当分出て来ないかも。と言うより、これが最後の登場になるかもしれません。


written by red-x



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