新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のツインズ


第1部 アサトの1週間


第13話 金曜日−その1−


「ねえ、アサト。ちょっと話があるんだけど、いいかな?」

お昼時に俺とショウが話をしていたら、シノブの奴が話しかけた来た。だが、俺はすかさ
ず断った。何を言いたいのか分かっていたからだ。

「駄目だ。」

「そ、そんなあ。少しでいいから話を聞いてよ。」

「うるせえ。てめえ、殴るぞ。」

「いいよ、殴っても。」

そう言いながら、シノブは近寄ってくる。ちっ、思った通りだ。やはりシノブには脅しは
通用しないか。

「何の用だよ。誰かを許して欲しいなんて話だったらお断りだ。」

「でもね、アケミ達も凄く反省してるよ。だから、許してあげなよ。」

「ぜってえ、やだ。」

ふん、ミライの悪口を言う奴らなんか、絶対に許すもんか。

「どうしたら許してくれるの。お願いだから教えてよ。」

でも、シノブは食い下がる。そこまで言うなら、絶対にやらないようなことを言ってみる
か。

「そうだなあ。裸で逆立ちしながらグランド20周すれば許してあげるかな。」

「そっ、そんなあ。それは酷いんじゃない。」

「別に、そんなことしなくてもいいさ。その代わり、俺もぜってえ許さねえ。」

俺が険しい顔をすると、シノブはうつむきながら少し考え込んでいたが、深刻そうな顔を
しながら顔を上げた。

「分かったわ。でも、アケミ達は言えば本当にやるよ。それでもいいの?」

「やりたきゃ、やればいいだろ。俺はどうしてもやれなんて言わねえ。」

「でもさ、私も一緒にやることになるんだよ。」

「はあっ?どうしてそうなるんだよ。」

「だって、友達じゃない。私だけ何もしない訳にはいかないもん。」

「う〜っ。」

う〜ん、俺は迷った。さすがにシノブにはそんな真似はさせられない。でも、そこまでさ
せないと、俺の怒りは到底収まらねえ。う〜ん、迷う。本当に迷う。そうやって俺が迷っ
ていたら、俺のケータイが振動した。

「うん、誰だ?」

表示を見ると、ミライからだった。

「ちょっと待ってろ。」

俺は、少しだけ迷ったが、結局電話に出ることにした。

『お〜い、アサト?』

「どうした、ミライ。」

『うっふっふ。アサト、感謝、感激、雨あられ。とにかく、ありがとうね。』

うん、一体なんのことだ。良く分からなかったが、俺は適当に話を合わせた。

「いや、大したことじゃない。」

『ううん、そんなことないよ。すっごく助かるよ。アサトったら、やっぱり頼りになるね。
さすがはアタシのお兄ちゃんだけのことはあるよ。』

「まあな。」

『あっ、そうだ。アサトからもお礼を言っておいて。え〜と、アケミさんと、サナエさん
とナオミさんね。よろしくねえっ。』

「あっ、ああ。」

俺が返事をするなり、ミライは電話を切りやがった。なんだよ、話が全然見えないぞ。俺
が怪訝そうな顔をしていたら、シノブが俺の顔を伺っていた。

「ん、何だよ?」

「あのお、今の電話はミライちゃんから?」

「ああ、そうだ。」

「何か言ってなかった?」

「ああ。アケミ、サナエ、ナオミにお礼を言うようにって言ってたが、何のことなのか、
話が見えない。」

「えっ、本当なの?あ〜っ、良かった。上手くいったのね。」

ん?何だと。シノブは何か知ってるのか。

「おい、シノブ。俺には話が見えないが、お前は知ってるのか。何のことか説明しろよ。」

「うん、いいよ。実はね…。」

シノブは、事の顛末を話しだした。

昨日、シノブが家に帰る途中、アケミ達から電話があったそうだ。内容は、何とか俺の怒
りが収まるようにとりなしてほしいというものだったそうだ。

それに対して、シノブは普通に謝っても俺が絶対に許さないだろうと答えたそうだ。それ
に対して、アケミ達は泣きながら何か良い方法はないかとシノブに尋ねたそうだ。

シノブは、俺がケイに妹をミライのチームに入るように頼んだことを思い出して、アケミ
達の妹をミライのチームに入るようにしたら俺の怒りが収まるだろうと答えたそうな。

そしたら、アケミ達は何がなんでも妹をミライのチームに入れてみせると答えたそうだ。
それが上手くいったらしい。

「ふ〜ん、そう言うことか。」 

俺は、険しい顔をした。何か気に入らねえな。

「あの、アサト。私、余計なことをしちゃったかな。」

シノブは少しびくびくしながら聞いてきた。おっと、こいつには罪はないし、ミライが喜
んでいるのもシノブのおかげだし、一応礼を言っておくとするか。

「いや、そんなことはない。ミライはとっても喜んでいた。それもこれも、シノブのおか
げだ。」

「ふうっ、良かった。それじゃあ、アケミ達のこと、許してくれるかな。」

ちょっと気に入らねえが、ミライから礼を言うようにって頼まれちゃあしょうがねえ。

「ああ、許してやるよ。だが、少し気持ちの整理をしたい。だから、次に保育園に行く時
までは、俺に連絡しないように言っておいてくれ。」

そうそう、こう言わないと、今度の試合で会うはめになるからな。そうなると、ばあちゃ
んと一緒のところを見られることになるもんな。それは出来れば避けたい。

「うん、分かったよ。私から連絡しておく。良かった。アケミ達、きっと喜ぶよ。」

シノブは、安心したのか、ニコニコ笑っている。

「ねえ、何を話してるの?私にも詳しく教えてよ。」

そこにアサミがやって来た。シノブは、ごていねいに同じ話をアサミに繰り返して話した。

「ふ〜ん、そういう訳なの。シノブったら、上手くやったじゃない。」

「うん、良かった。アサトの機嫌も直ったようだし。」

あれ、そうかな。ミライの喜びの声を聞いたからかな。

「良く分からねえけど。上手くいったようだな。うん、いいことだ。」

最後に、ショウが締めくくった。


次話に続く

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あとがき


 ミライへの悪口が原因で怒ったアサトですから、ミライが喜ぶことをすれば怒りが収ま
るというもの。でも、可哀相なのはアケミ達の妹かも。チームが変わるはめになったり、
急にサッカーをするはめになったんですから。



written by red-x
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