新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のツインズ 第1部 アサトの1週間 第16話 金曜日−その4− 俺の名前は、惣流アサト。碇シンジが出演しているという映画を見るために、双子の妹 のアサミと一緒に親友の赤木ショウの家に来ている。 驚いたことに、その映画、『救世主アスカ −使徒&ゼーレVSエヴァンゲリオン−』に は、なんと母さんが出ていて、しかも主演女優だったんだ。しかも、顔見知りのおばさん やおじさんが、多数出演していたんだ。 親友の赤木ショウのおばさんの赤木リツコ、おじさんの赤木(旧姓日向)マコト。 幼なじみの葛城サキのおばさんの葛城ミサト、それにおじさん(名前は忘れた。) 幼なじみの伊吹シノブのおばさんの伊吹マヤ、それにおじさんの伊吹(旧姓青葉)シゲル。 妹の親友、鈴原ナツミのおばさんの鈴原(旧姓洞木)ヒカリ、おじさんの鈴原トウジ。 妹の親友、相田ミキのおじさんの相田ケンスケらしき人。 妹の親友、綾波アイもおばさんの綾波レイ。 こんなにいるんだぜ。掛け値なしに驚いたぜ。とはいえ、驚きつつも俺は映画に見入って いた。 *** その後も、母さんの素晴らしい作戦と類まれなる優れた指揮により、ネルフという組織 は次々と使徒に勝利していく。 第4使徒は、コアの存在に気付いた母さんの指示により、碇シンジがコアを攻撃して、使 徒を倒す。 第5使徒は、バルーンダミーを出した途端、加粒子砲で攻撃してきたため、母さんは紫ロ ボの出撃を延期。戦自から借りた陽電子砲で、碇シンジが遠距離から狙撃し使徒を倒すが、 オレンジロボが紫ロボをかばい、大破する。その結果、綾波レイ−綾波アイのおばさんだ と思う−が大怪我をする。 第6使徒は、ドイツから運ばれてきた赤ロボに襲いかかってきた所を、初出撃の鈴原トウ ジ−ナツミのおじさん−と洞木ヒカリ−ナツミのおばさん−のペアが、母さんの見事な作 戦によって倒す。 第7使徒は、碇シンジとナツミのおじさんのペアで挑むが、敗北を喫す。そして、母さん の発案により、碇シンジとナツミのおじさんはユニゾン訓練を行い、見事再戦に勝利する。 第8使徒は、ナツミのおばさんが捕獲に成功するが、使徒が成長したため殲滅に移行する。 苦戦するナツミのおばさんに、母さんが冷却パイプを切って使徒の口の中にいれるよう指 示し、見事勝利する。だが、命綱が切れて沈んでしまい、紫ロボに乗ったナツミのおじさ んがナツミのおばさんを助ける。 以後も、母さんの見事な指揮と、碇シンジ、ナツミのおじさんとおばさん、アイのおばさ んといったパイロットの頑張りによって、使徒に勝利を収めていく。 だが、ようやく最後の使徒を倒した後、闇の組織ゼーレの存在が明らかになる。ゼーレは 戦自を使って、圧倒的な戦力でネルフを包囲する。 圧倒的な戦力差に絶望しかけ、落ち込んだ母さんとナツミのおばさんに、碇シンジとナツ ミのおじさんが愛の告白をして、勇気を取り戻す。お約束のキスシーンもある。ううっ、 羨ましい。 もっとも、母さんは告白された時デリカシーが無いって言って、いきなり碇シンジのほっ ぺたをバシーンと引っぱたいたんだけどな。でも、碇シンジは怯まずに母さんに強引にキ スをしたんだ。 そんなことをされて黙っている母さんじゃない。左手を挙げて−右手は碇シンジの左手に よって封じられていたからだ−碇シンジを殴ろうとしたんだけど、碇シンジはその手を掴 んで止めて、母さんにキスをし続けたんだ。 母さんはしばらく抵抗していたんだけど、次第に抵抗が弱まって、結構長い間キスをして いた。いくら中学生の頃とはいえ、「あの」母さんの抵抗を力で抑えるなんてあり得ない。 俺は断言する。この時の母さんは、本気で抵抗していない。まあ、映画だから当たり前か。 おっと、話がそれたな。戦自が攻めて来たんだっけ。 一方の戦自も、内部で反抗する者が現れ、士気が下がる。そりゃそうだ。使徒なんていう バケモノから人類を守るために戦ってきたネルフを攻めるなんて、おかしいって誰にでも 分かるからだ。一部若手幹部がネルフ侵攻に反対し、サボタ−ジュをしたりもする。 このような状況下で、ゼーレとネルフの戦いが始まった。当初は有利に戦いを進めていた ゼーレだったが、満身創痍となった青ロボの自爆攻撃により、形成逆転。ネルフが攻勢を かける。 だが、ゼーレが投入してきた白ロボによって、形勢は再び逆転し、紫ロボによるサードイ ンパクトが始まろうとしていたまさにその時、母さんが涙を浮かべて叫んだ。 「シンジ!愛しているわっ!死なないでっ!」 その声に我に返った碇シンジは、戒めを振りほどき、白ロボ達を一瞬にして倒す。こうし て、ネルフは一時の勝利を得た。 *** 戦いの時、総司令の葛城ミサト−サキのおばさん−は、重傷を負って手術をするが、そ の甲斐もなく、心臓の鼓動が停止する。そこへ顔面蒼白となったサキのおじさんと思われ る男が現れ、号泣し、おばさんにキスをする。 『この時、愛の力が奇跡を呼んだ。』というテロップが流れる。そして、おばさんの目が ゆっくりと開いた。 「かつらぎ!」 おじさんは、大声で叫んだ。 「もう、どこにもいかないで…。」 おばさんの目も涙でくしゃくしゃだった。そして、胸もかなり大きかった。って、俺って 何を見ているんだろう。 「もう、離すもんか。葛城、結婚してくれ。俺は、お前のことを愛しているんだ。」 それを聞いたおばさんの目は、大きく見開かれたが、すぐに小さな声で返事をした。 「うん…。うれしい…。」 おばさんの顔は、真っ赤だった。 「パチパチパチパチ…」 周りにいる者は、祝福の拍手を、惜しげなく送った。うんうん、いいなあ。 *** さらに場面が変わって、夜のバルコニーに、母さんと碇シンジが立っていた。碇シンジ は、意を決したように母さんにプロポーズする。これに対して、母さんは碇シンジに3つ の誓いを立てさせる。 碇シンジが誓い終わると、二人は熱い抱擁を交わし、熱情的なキスをした。う〜っ、すっ げえなあ。俺もいつかはあんなことをしてみてえな。でも、母さんにキスするなんて、い くら碇シンジでも許しがたいものがあるな。 「アスカ、愛しているよ。これからも、アスカを守るために、命をかけて戦うよ。」 「うれしい…。アタシも頑張るわ。二人で戦いましょう。」 再び二人は熱いキスをする。 『こうして、悪の組織「ゼーレ」の侵攻を防いだネルフだが、これからも戦いは続く。愛 するシンジと力強い仲間達の助けを借りて、明日もアスカは戦い続ける。人類の平和と未 来を守るために…。』 テロップが流れると同時に、英語の歌が流れる。正体を明かさないことで有名なシンガー、 セイレーンの歌だ。そして、母さんと碇シンジの二人は、影となり、闇に消えていく。 『これは、一部映画用に脚色しているが、ノンフイクションである。ゼーレとネルフの戦 いは、今も現実に続いている。アスカ、シンジ、トウジら少年少女達は、今も戦い続けて いるのだ。人類の平和と未来のために。』 そのテロップがしばらく流れ、次いで出演者の名前が映し出された。そして最後の方にな って流れた、「製作:第3新東京市立第壱中学校2年A組」、「監督:相田ケンスケ」と いうテロップを俺は見過ごさなかった。歌が終わりを迎えると、映画は終了した。 「すっご〜い、本当にいい映画ね。感動しちゃった。」 「それにさ、あの使徒っていうの、本物みたいな迫力があったよね。」 「愛の告白だってそうじゃない。演技だとは到底思えないわ。特に、サキのお父さんなん か、真に迫っていたわよね。本当に泣いているみたいだったわ。」 「出演者って、みんな格好良かったわよね。あれって、本当に私達の親なのかしら。信じ られないわ。」 映画が終わって少しの間沈黙が続いたが、ミコ姉、アサミ、サキ、シノブは、早速映画の 感想を言い合っていた。 「な、なんなんだよ、これ。」 「どうして俺達の親が出演してるんだ。」 「それに、最後のテロップを見たか?ノンフイクションって言うことは、本当に起きたこ とだっていうのかよ。」 一方、男共の話題はちと違った。ハヤトとマサトは、自分達の親が出演しているのに興奮 して大声で話し出した。だが、それも直ぐに中断する。次の画面が映し出されたからだ。 ○特務機関ネルフ組織図 総司令官:碇ゲンドウ(映画では葛城ミサト) 副司令:冬月コウゾウ (映画では未登場) 世界主要国に支部有り。 ○本部組織図 ・総務部 総務部長:冬月コウゾウ(副司令兼務) ・作戦部 作戦部長:葛城ミサト(映画では惣流・アスカ・ラングレー) 部長代行:日向マコト チ−フ:青葉シゲル Evaパイロット チ−フ:碇シンジ、サブ:鈴原トウジ ・技術部 技術部長:赤木リツコ 部長代行:伊吹マヤ ・広報部 広報部長:マリス・アマリリス(映画では未登場) チ−フ:惣流・アスカ・ラングレー ・保安部 保安部長:真田ヒロシ(映画では未登場) なんだ、母さんは本当は広報部だったんだ。そうだよなあ。いくら母さんが凄い人とで も、中学生があんな活躍をするなんてあり得ないよな。みんなが興奮しながら再びしゃべ り出すのを横目で見ながら、俺はそんなことを思っていた。 次話に続く ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき サードインパクト後にアスカはエヴァのパイロットから外れ、広報部と技術部に席を置 くことになりました。ですが、対外的には広報部のみに所属ということになっています。 映画は、アスカがパイロットから外れた頃に製作されたものです。 written by red-x