新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のツインズ


第1部 アサトの1週間


第21話 土曜日−その4−


シノブはホテルに入り、チェックインを済ませてキーを貰うと、俺を手招きした。

「アサト、早く行って食事にしようよ。」

「ああ、分かった。」

やっぱり、空腹には敵わない。俺はシノブの後に付いて行った。すると、最上階の広い部
屋に通された。部屋に少し入ったところには少し大きめのテーブルが置いてあり、その上
には既に料理が用意されていた。しかも、結構量も多く豪華だった。

「さあ、食べようよアサト。」

「ああ、そうだな。」

俺は腹が減っていたので、何も考えずに椅子に座った。

「じゃあ、せーの、いただきまーす。」
「いただきます。」

シノブはさっさと食べ始めたので、俺もとにかく食べることにした。腹が減っては戦が出
来ぬっていうみたいだしな。

「ねえ、アサト。おいしい?」

「ああ、まあまあだ。」

食べてる途中でシノブが話しかけてきたが、俺は生返事をした。何か引っかかるからだ。
だが、シノブは俺の心中を知ってか知らずか話しかけてくる。

「今日は何が楽しかった?」

「うーん、何かなあ。」

「私は最初に乗ったホーンテッドマンションが良かったかな。」

「そうかあ?俺はどうも、ああいうのは苦手だがな。」

なんて話をしながら、俺達は食べ続けた。で、15分もしないうちに俺は食べ終わった。
腹が減ってたんで、大急ぎで食べたからだと思う。

「あっ、アサトったら食べるの早いのね。」

「そりゃあ、腹が減ってたからな。でも、シノブだって早いぞ。」

「へへへっ、いいじゃん。お互いさまでしょ。」

「で、これからどうするんだ。どうやって帰る?」

「アサトはどうしても帰りたいの?それとも、私と夜更かしして昔話でもする?」

う〜ん、どうしようか。確かにそれもいいかもなあ。でも、シノブはどうなんだ。

「シノブはどうしたいんだよ。」

「私はどっちでもいいわよ。アサトの言う通りにするよ。」

「万一ここで泊まる場合、寝るのは別々のベッドだよな。」

「別々でもいいし、一緒でもいいよ。アサトの好きな方でいいよ。」

おい、本当かよ。よし、ちょっとからかうか。

「でもよ、俺は寝る時は裸で寝るんだぜ。それでも一緒のベッドでいいのかよ。」

「なにかまずいことでもあるの?」

げっ、そうくるのかよ。おかしいなあ。こいつ、本気なのかよ。

「そりゃあ、まずいだろ。俺の体の一部がお前に触れると、お前だって嫌だろ?」

「全然嫌じゃないわよ。」

「だって、普段はズボンの下にあって、女には無いものだぞ。そんなのが触れたら、女な
ら嫌だろ。」

「アサトのなら平気よ。触ったことが無いわけじゃないし。全然OKだって。」

「嘘だろ?」

おいおい、俺達はもう小学生じゃないんだぞ。それに、いつ触ったんだよ。

「アサト、何か嫌がってるわね。おかしいわ。あっ、もしかして。アサトは未だにおねし
ょしてるんじゃ。だから一緒に寝るのが嫌なんでしょ。ごめん、気付かなくて。」

「ち、違うって。」

「分かったわ。別々に寝ましょ。お漏らししたところを女の子に見られるなんて、いくら
なんでもアサトが可哀相だものね。」

「おい!聞けよ!そんなことはないって!」

「別に、どっちでもいいわよ。で、どうするの?」

ちっ。誤解されたままっていうのもしゃくだな。よし、一緒のベッドに寝よう。

「一緒に寝よう。そして、昔話をしよう。」

「うん、分かったわ。」

あれ、なんだかとっても良い展開になってきたな。そう思ってたら、携帯端末が振動した。
げっ、母さんからじゃないか。俺は急いで通信機能を入れた。そしたら、大きな声が。

「こりゃあーっ、アサト!どこほっつき歩いてるの!」

「え、ああ、ちょっと。」

「いいから、早く帰って来なさい。」

「う〜ん、でもさあ。何だか今日は家に帰りたくない気分なんだけど。」

「へ〜っ、そういうこと言うわけ。いいわ、シノブちゃんに代わってちょうだい。」

なっ、なんだって!どうして分かったんだ!

「へっ?どうしてシノブと一緒だと思うんだよ?」

母さんには嘘をつけないから、違うとは言えない。シノブはというと、真っ青になって首
を横に振りながら、手でバッテンをしている。

「アタシが聞きたいわよ。中学1年のくせに、なんでアンタは女の子をホテルなんかに連
れ込んで1泊しようとしてるのかしら。よ〜く説明してちょうだい。」

げっ。バレバレかよ。俺は、呆然としながらもシノブに携帯端末を渡した。そしたら、シ
ノブはペコペコしながら話しだした。

「あっ、アスカさん。ご無沙汰してます。いえ、そんなんじゃないんです。たまたまお目
当てのレストランが休みだったので、近くの食事を出来るところに入ったんですけど、そ
れがホテルだったのは偶然なんです。えっ、ええ。今ちょうど食べ終わって、これから朝
まで映画でも見ようかって話そうとしてたところなんです。えっ、そんな。申し訳ないで
す。えっ、もうこちらに向かっているんですか。はい、分かりました。ええ、ご迷惑をお
かけしてすみません。ええ、では後ほど。」

そこまで話すと、シノブは通信を切った。そして、一瞬だけ酷くがっかりした顔になった
が、すぐに元通りになった。

「ねえ、アサト。これからアサトのお父さんがここに迎えに来るから。あと5分で着くん
ですって。だから、支度を急ぎましょ。」

「ああ、分かった。」

が〜ん、シノブとのホテル1泊は中止かよ。何かが起こるような素敵な予感がしていたん
だが、これでおしまいだな。俺は、思わず肩を落とした。でも、なんだかシノブは事実と
違うようなことを言ってたぞ。う〜ん、気のせいかな。

***

「さあ、アサト。一緒にお風呂入ろう。待ってたんだから、早くしなさい。」

家に着くなり、母さんにそう言われた。そうだ、今日は土曜日。家族で一緒のお風呂に入
る日だった。すっかり忘れてた。

「ああ、分かった。」

そしたら母さんはシノブの方を向いた。

「シノブちゃんも一緒に入らない。」

「えっ、いいんですか。私なんかお邪魔じゃないですか。」

「久しぶりにシノブちゃんも一緒にお風呂に入りたいし。ああ、シンジはシノブちゃんが
出るまでは風呂に入らせないから、安心して。男はアサトだけだから。」

「は、はい。」

えっ、シノブも一緒かよ。嫌だなあ。

「シノブちゃんは、アサトの体をくまなく洗ってね。お願い出来るかしら。」

「は、はい。喜んで。」

おい、シノブ。今のニヤリ笑いはなんだよ。

「そういう訳だから。アサト、アンタは覚悟しなさい。」

げえっ、嘘だろう。勘弁してくれよ。そんな恥ずかしいこと、絶対に嫌だ。でも、俺は母
さんの命令には逆らえないだろうな。トホホ…。俺は、天国から地獄に落ちたような気が
した。

 
次話に続く

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あとがき


 アスカには、アサトの行動がお見通し?アサトは、せっかくのチャンスがフイになって
しまいました。もちろん、シンジの遺伝子を受け継いでいるので、一緒に寝てもキスをす
るのがやっとでしょうが。


written by red-x
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