新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のフィアンセS 第3部 ゼーレとの戦い−激闘編− 第54話 決戦!第3新東京市その4 「戦自から連絡っ!正体不明の潜水艦を撃沈したそうですっ!」 シゲルが叫ぶような口調で報告した。 「で、どっちなの?」 ミサトの問いかけにシゲルはにっこりした。 「両方ですよ。日本海側と、駿河湾と。」 「やりい!」 ミサトは、満面の笑顔を浮かべた。 「直ぐに、アスカに知らせてねっ!」 ミサトは、順調な戦いぶりに、機嫌を良くしていた。 *** 「みんな、ちょっと良いかしら。」 シンジとケンスケの話が終わって間もなく、エヴァのパイロット全員に、アスカからの通信が入った。 「これから、簡単に敵戦力のレクチャーを行うから、よっく聞いてね。じゃあ、相田、お願いね。」 アスカに指名されたケンスケは、長々と話し始めた。無論、アスカと事前に調整済の話である。 「みんな、良いかな。現在分かっている敵戦力について話すから、良く聞いて欲しい。 北東からロシア軍のものと思われる空母2にその他25隻の艦隊が向かっている。 空母は、2隻ともアメリカ軍の古い空母である、キティーホーク級という空母だ。 艦載機は、推定80〜100機だ。 東からはアメリカ軍のものと思われる空母1にその他15隻の艦隊が向かっている。 空母は、ニミッツ級という原子力空母だ。艦載機は、推定110機前後だ。 南西からはドイツなど、ヨーロッパ諸国の軍のものと思われる空母2にその他20隻の艦隊が向かっている。 空母は、2隻ともロシア軍と同じものだ。これも、艦載機は推定80〜100機だ。 この敵戦力のうち、最も気をつけるのは戦闘機だ。 ロシア軍の戦闘機はスホーイ33という、とても機動性が高いのが主力だと思う。 それ以外の性能は低いが、搭載する武器によっては脅威になり得るんだ。 アメリカ軍の主力戦闘機は、F-22ラプターという世界最高水準の高性能機だと思う。 ステルスといって、レーダーなんかでは中々見付けられないという特徴がある。 それに、機動性もピカ一だ。こいつには、十分注意してくれ。おそらく、簡単には撃ち落とせないと思う。 ちなみに、こいつは1機200億円以上するといわれているんだ。 EU軍の主力は、F-35という、F-22の廉価版の戦闘機だろう。 だが、廉価版と言っても、ステルス性能も高いし、機動性も高い。 こいつにも十分注意が必要だ。それに、こいつはロシア軍にも配備されている。 こいつは、1機50億円すると言われているが、値段の割に性能は良いんだ。 他にも地上攻撃機や、戦闘ヘリなんかがあると思うけど、気を付けるのは戦闘機だけで良い。 さっき言った3機とも機動性が高いから、撃ち落とすのは至難の技なんだ。 特に、近寄られたら、ポジトロンライフルでは当たらないだろう。 だから、なるべく遠い所で撃墜したい所なんだけど、3機とも、数分でこっちに来る事が出来るんだ。 特に、F-22ラプターは他の戦闘機と違って、音速を超えて飛んでも、 燃料消費量はあまり増えないから、音速以上で来る可能性が高い。そうなると、凄く厄介なんだ。 だから、近寄って来たらATフィールドを張って、ポジトロンライフルを壊されないように気をつけて欲しい。」 そこまで言うと、ケンスケは皆の反応を伺った。 だが、特に質問も出なかったので、続けて話すことにした。 「敵の最終目標は、おそらくMAGIの接収だ。 実は、先日の作戦において、ゼーレの資産の半分以上を分捕ったんだ。 そのデータはMAGIにあるから、奴らは必死になってMAGIを接収しようとするだろう。 そのためには、地上部隊が必要だ。 だから、ここの周辺には、推定で2千人から10万人の地上部隊がこちらの隙を伺っている筈だ。 そんな馬鹿なと思うかもしれないが、空母5隻の乗組員だけで推定3万人いるんだ。 艦隊全部では10万人以上、20万人近い乗組員がいるはずだ。 だから、同じ位の規模の地上部隊があってもおかしくはないんだ。 これに対して、我々の地上部隊は、たかだか2千人位しかいない。普通に戦ったら、勝負にならないんだ。 それを互角の勝負に持ち込むには、エヴァと各種の兵器を最大限に活用するしかないんだ。 だけど、敵はそれ位お見通しだから、最初にエヴァの動きを止めようとするだろう。 エヴァの動きを止める方法は、実は何通りかが考えられる。今は言えないけどな。 で、敵がそのような方法でエヴァの動きを止めようとする場合、 特殊な弾頭を積んだミサイルをエヴァにぶつけようとすると思う。 戦闘機から、潜水艦から、高高度爆撃機から、地上部隊から、或いは想像も出来ない方法で、攻めてくるだろう。 だけど、裏をかえせば、そういうことをさせなければいいんだ。 そのためには、遠距離の敵は、砲手担当が落として欲しい。 近距離まで敵が来たら、シンジ、トウジ、渚の3人で防いで欲しい。 マリアさん、ミリアさん、ハウレーンさんは、傭兵部隊と上手く連携して、地上部隊の侵攻を防いで欲しい。 明日みんなで戦勝パーティーを開いて、たらふく美味しいものを食べられるように、全力を尽くして欲しい。 俺の話は、以上だ。」 ケンスケが言い終わっても、誰も何も言わなかった。 特にマリア達、軍事知識のある者ほど険しい顔をしていた。 シンジでさえ、険しい顔をしていたのだ。 (この生命を捨ててでも、アスカは守って見せる。) さきほどのケンスケとの会話の中で、ゲンドウに対するわだかまりが殆ど消え、 今回の戦いに対する迷いを断ち切ったシンジは、いつの間にか戦士の顔つきになっていた。 *** 「大変です、惣流さん。空母の艦載機が、発進準備を始めました。」 突然、アールコートが悲鳴を上げるように言った。 「ふん、大丈夫よ。」 アスカは素早く端末を操作した。 「よ〜し、照準はOKね。行っけーっ!」 アスカはにやりと笑った。実は、大島の周辺には、無人ミサイル群を配備していたのだ。 おそらくこの島の周辺に艦隊が集結するだろうという、アスカの予想によるものだった。 MAGIと連動した、有線誘導式の地対地ミサイル。 それを金に糸目をつけずに短期間で集め、500基ほど配備したのだ。 1基当たり1億円としても、これだけでも、数百億円もかかったのである。 これは、アスカがゼーレから膨大な資金をかすめ取ったからこそ出来た芸当である。 武器はタダでは買えないのだからしょうがないのだが。 「頼むから、アメリカ軍の空母は落ちてね。」 アスカの呟きを聞いて、アメリカ人のアールコートはちょっと頬を膨らましていた。 *** 「やりましたっ!敵空母が撃沈しましたっ!」 シゲルは、ついつい大声で叫んでいた。 発令所正面のメインスクリーンに、アメリカ軍の空母が炎上している様子が映っている。 今回の最重要目標のうちの一つだから、喜びも大きい。 ミサイルが次々と敵空母に、敵艦艇にへと飛んでいき、激突して大爆発を起こしている。 無論、迎撃されるミサイルも数多いが、3割から5割位のミサイルが命中しているらしい。 「あっ、また空母が炎上しましたっ!これで2隻目ですっ!」 数発のミサイルの直撃を受けて、ロシア軍のものと思われる空母が炎上していく。 空母の弱点の一つに、高速で接近するミサイルに弱いということが挙げられる。 このため、空母の周りを各種艦艇が取り囲んで、敵の攻撃を防ぐつもりだったらしい。 だが、MAGIと連動したミサイル攻撃は、最初に周りの艦艇のうち、 数隻を狙って炎上させ、その合間を縫ってミサイルを叩き込んでいた。 このため、炎上する艦艇が邪魔で、他の艦艇がうまく壁になることが出来なかったのだ。 そこを狙って、1隻当たり20発のミサイルが空母に襲いかかったのである。 敵の艦艇も懸命に防戦したが、不意を衝かれたのは大きく、 数発のミサイル攻撃を受けて、次々と撃沈していったのである。 こうして、ミサイル攻撃が終わる頃には、空母が4隻撃沈、 艦艇も30隻が撃沈、16隻が大破、残る14隻も無傷なものは無いという有り様であった。 「加持、やったわね。アンタの出番は無いかもよ。」 「ああ、こうも鮮やかに決まるとはな。アスカが敵じゃなくて良かったよ。」 「まあね。でも意外よねえ。映画じゃないけど、アスカこそが作戦部長に相応しいなんて、本気で思ったわ。」 「そんな事は無いさ。少なくとも、使徒戦では葛城の作戦があったからこそ、俺達は生き延びたのさ。 アスカは、軍事についての知識は豊富かもしれないが、未知の敵に対しては逆にそれが足かせになる。 実際にそうだったじゃないか。」 そう、使徒戦の時のアスカは、軍事に詳しいが為に判断を誤ることが多かった。 何も知らないシンジの方が、失敗が少なかったのだ。 「そうねえ。でも、今はアスカの本領発揮って言う訳ね。」 「ああ。こっちに来る時も、アスカは空母の艦載機について、良くパイロット達に質問していたよ。 奴らも、可愛い女の子が聞くもんだから、うっかり機密事項までしゃべっていたりもしたな。」 「そう、そんな事があったの。」 「ああ。その時のアスカは、軍隊との共同作戦も視野に入っていたしな。 そうなると、人の命がかかってくるから、アスカも必死だったよ。 でも、アスカはそんな事は、人前では微塵も感じさせないんだ。凄い娘だよ。 それを見て、俺はこの子は違うなと思ったね。少なくとも、恋愛の対象にはならなかったな。」 「何よ〜っ。それって、嫌味?」 「おいおい。お前とは、そうなる前に出会っていただろう。だから、条件が違うのさ。」 加持は、頬を膨らますミサトを説得するのに骨を折る破目になった。 *** 「シンジ君、聞いてっ!良いニュースよっ!」 急にミサトからの通信が入った。 「ど、どうしたんですか。」 「敵の空母が、4隻も沈んだのよ。」 「ほ、本当ですか。」 「ええ、それもアメリカの空母を沈められたのよ。 残る1隻も小破していて、直ぐには戦闘機を発進出来ないようよ。」 「そうですか、良かったあ。」 それを聞いて、ケンスケが割り込んでくる。 「本当ですか、ミサトさん。」 「ええ、本当よ。」 「これで、随分楽になります。 正直言って、300機以上の戦闘機相手じゃ、とてもじゃ無いですが勝ち目はないですから。 これで、戦闘機は100機以下、うまくすると、50機以下ということも有り得ます。」 「そういう事。じゃあ、頑張ってちょうだいね〜ん。」 ミサトは笑いながら通信を切った。 「シンジ、これは勝てる、きっと勝てるぞ。惣流は本当に凄いや。 ここまで凄いとは思わなかったよ。お前には分かるか?」 「何だよ、いきなり。」 「惣流は、敵の金を分捕ってネルフのものにしただろう。 それって、武器を購入するのに必要だったし、敵も金を取り戻したいから、荒っぽい手段が取れない。 そういう状況にしたのが凄いんだよ。」 「そ、そうだね。」 (ふうん、そうなのか。) 同意したものの、軍事には疎いシンジに分かるわけもない。 「本当に凄いよな、惣流って。尊敬しちゃうよ。」 だが、ケンスケは知らなかったが、アスカは敵の艦艇の一部のコンピュータを操って、 同士討ちまでさせていたのである。 次話に続く ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき 今のところ、アスカの作戦が上手くいって、ネルフが有利です。果たして、シンジの出 番はあるのでしょうか。 written by red-x