新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のツインズ


第1部 アサトの1週間


第20話 土曜日−その3−


俺はシノブとある賭をした。女の子とデートして、俺が1円も使わなかったら俺の負け。
1円でも使ったら俺の勝ちっていう賭なんだ。で、どんな女の子が来るのかと、期待半分
不安半分でいたんだけど、来たのはなんとシノブだった。

そこまでは良かったんだが、なんとシノブはおばさんのカードを借りてきたんだ。それも、
使用制限がないものだ。これで、賭は負けたも同然となってしまった。


「しっかし、なんだな。私服のシノブを見るのは久々だな。」

「えっ、そうだっけ。」

「ああ、中学生になってからは、制服姿のシノブしか見た記憶がねえな。」

「ふうん。で、アサトはどう思う。何かおかしいかしら。」

「いや、別におかしくないが。ちょっと、寒そうだなって。」

そう、シノブはかなり肌をあらわにする服を着ていたんだ。それじゃあ、ちょっと寒いん
じゃないかな。俺は女の子の服は良く分からないから、何て言うのか分からないけど、上
は丈の短いタンクトップみたいなやつで、ヘソが見えるんだ。で、下は上と同じ赤い色を
基調にしたミニスカートだった。

「えっ、寒そう?そうかしら。でも、もうすぐ6月よ。」

「でも、そんなに暑くねえぞ。しかし、お前の服も安物なんだなあ。そんなに少ない生地
じゃあ、上下で2千円位じゃねえか。」

対する俺の服は、Gパンに赤いポロシャツ。相手がどういう服か分からなかったから、迷
った末に普段着にしたんだ。こっちが気合を入れたのに相手が普段着だったら目も当てら
れないからな。

「そんなに安物じゃないんだけど。良く見てよ。生地だって、良く見ると模様が入ってる
のよ。触ると良く分かるわよ。」

シノブはそう言うなり俺の指を掴んで、シノブの胸の生地の辺りをこするようにした。お
いおい、お前一応女の子だろう。そんなことしていいのかよ。まあ、俺は全然構わねえけ
どよ。

「う、うん。確かに無地じゃねえな。」

俺が言うと、シノブは胸を張った。

「でしょ。これ、上下で10万円はするのよ。」

げっ。そんなに高いのかよ。服って分からねえよなあ、まったく。

「おいおい、女って、みんなそんなに高い服を着てるのかよ。」

「そうでもないわよ。私は、今日が初めてのデートだから気合を入れてきただけ。」

「なんだよ、バッカだなあ。相手は俺なのに、良いカッコしてもしょうがねえだろ。」

良いカッコをするのは、普段会わない相手の前だけで十分なのにな。シノブったら、大笑
いだぜ。

「あっ、ひっど〜い。そういう言い方はないでしょ。」

「だって、そうだろ。いっつも会ってるのによ。まあ、俺はシノブが相手で良かったけど
な。気を遣わなくても済むからな。」

「でもさ、私にとっては初めてのデートなのよ。アサトもその辺は考えて欲しいわ。」

「そうかあ。でも、出来るだけお前の言う通りにするするから、それでいいだろ。」

俺が手を合わせて謝るように言ったら、シノブの顔は急に明るくなった。

「ホント?何でも言うことを聞いてくれるの?」

「俺がお金を使わないっていうのが条件だけどな。」

「じゃあさ、遊園地に行ってくれる。」

「ああ、いいぜ。今日はお前の行きたいところでいいぜ。」

「良かった。じゃあ、急いで行くわよ。」

シノブは、そう言うなり俺の手を掴んで走り出した。

***

シノブが選んだ遊園地は、昔千葉にあったと言われているディズニーランドを模した、新
東京ディズニーランドだった。なんでも、5年前に出来たらしい。最初に乗ったのは、な
んとかマンションっていって、お化け屋敷の類だった。

「きゃあっ、怖いっ!」

シノブは何度も叫び声をあげて俺にしがみついてきた。そのたびに、俺の腕は柔らかい感
触を味わった。うん、男としては、これは悪くはないな。


「アサト、しっかり掴んでてね。」

途中で椅子みたいな乗り物に乗った時、シノブは俺に肩をしっかり掴むよう要求した。で
も、肩なんて掴みにくいよな。

「でもよお、肩なんて掴みにくいんだぜ。」

「う〜ん、じゃあどこだったらいいの?」

そこで、俺はシノブをからかうことにした。

「そうだな、胸がいいかな。」

「うん、分かったわ。その代わり、しっかり掴んでね。」

げっ、マジかよ。俺は慌てた。

「じょ、冗談だ。やっぱり肩がいいかな。」

「えっ、別に胸でもいいのに。恥ずかしがらなくてもいいわよ。私は構わないから。」

「冗談だって言ったろ。」

でも、ちょっと惜しかったかな。俺はそう思いつつも、シノブの肩に手を回した。思った
以上に柔らかくてすべすべした肌に、俺の心臓の動きが少し早くなった。


その後、シノブは乗り物系のアトラクションにこだわった。ジェットコースターみたいな
ものに何度も乗って、そのたびにキャアキャア騒いでいた。俺もこういうのは結構好きだ
から、一緒になって騒いでいた。

それで困ったというか、良かったというのか、良く分からないけど、シノブの肌が俺の肌
と密着することが多かったんだ。最初は気にしなかったんだけど、途中から何故か気にな
り始めたんだ。

それに、シノブが俺の腕を掴むことが多くて。その結果、俺の手はシノブの太股辺りに触
れることになった。でも、シノブは全然気にしていないみたいだった。俺だけが気にする
のもバカらしいから、俺は何も言わなかったけどな。

でも、そろそろ日が沈んできたな。これからどうするんだろう。

「さあて、もう夜だな。どうするんだ、シノブ。そろそろ帰るか。」

「えっ、冗談でしょ。閉店までいるのが常識よ。」

そ、そういうものなのか。

「でも、閉店って何時だよ。」

「えっと、10時かな。」

「メシはどうするんだよ。」

「閉店後に決まってるわよ。」

「げっ。」

俺は、目眩がしそうだった。

その後、俺は散々シノブに遊園地内を引き回された。

***

「えっ、冗談だろ!」

閉店後、やっと食事にありつけると思ったのに、たどり着いたレストランは閉まっていた
んだ。シノブはもちろん、平謝りだった。

「ごめ〜ん、アサト。これから食べるとこ探すけど、なんでもいいかしら。」

携帯端末片手にシノブは頭を下げた。おいおい、駄目って言える状況かよ。

「ああ、どこでもいい。」

「じゃあ、食事頼んじゃうわよ。さあ、行きましょ。」

シノブは道路に向かって歩き出し、タクシーを止めた。


5分ほどでタクシーが着いたのは、割合立派なホテルの前だった。

「おい、シノブ。ここってホテルじゃねえか。」

「うん、そうよ。食べるところが見つからなくて、結局ホテルのルームサービスを頼んだ
のよ。シェフのお勧めディナーにしたから、アサトもお腹一杯食べられるわよ。」

おっ、そりゃいいな。って、ちょっとまずいんじゃないか。

「でもよ、帰りはどうするんだよ。食べ終わったら電車はもう無い時間だし、タクシーが
運良く呼べるとは限らないぜ。」

「いいじゃない。タクシーが呼べなかったら、そのまま泊まれば。ホテルだから何の問題
もないわよ。」

ああ、そうだよな。って、何か違うぞ。

「おいおい、一応俺は男なんだぜ。一緒にホテルなんかに泊まって大丈夫かよ。」

「なによ、アサトは私に襲いかかる気でいるの?変なことをする気なの?」

「いや、そんなことはしない。俺がそんなことをする訳ないだろ。」

「そうよね。だったら、何も問題が無いと思うわ。」

いや、あるような気もするが…。だけど、シノブの言うことにも一理あるような。

「じゃあ、行きましょうよ。私、お腹空いちゃった。」

シノブがすたすたと歩き出したんで、俺も仕方なく後ろを着いて行った。

 
次話に続く

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あとがき


 アサトは、初デートにしてホテルへと入っていきます。果たして、二人はこの後どうな
るのでしょうか。


written by red-x
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