新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のツインズ


第1部 アサトの1週間


第23話 日曜日−その1−


「ねえ、起きてよアサト。」

うん、なんだあ。せっかく良い気分で寝ているのに、俺を起こそうとする奴は。全くうる
せえなあ。もうちょっと寝かせろよな。

「ねえ、起きてよ。早く起きないと、ミカちゃんやミライちゃんが起きちゃうわよ。」

ん、なんだと。この声はアサミじゃないな。すると一体誰だろう。俺は薄目を開けた。す
ると、視界には何も映らなかった。いや、違った。真っ黒だった。

「ねえ、アサト。お願いだから起きてよ。アサトが起きないと、私も起きられないんだけ
ど。」

ん、なんだって。俺は何度か瞬きをした。そしてやっと気付いた。俺の前が真っ黒なのは、
誰かの髪の毛が視界を遮っているからだった。これはもしかすると、シノブなのか。俺は
あることを確かめるために、手を動かした。

「ちょっと〜っ。アサトのエッチ〜。」

間違いない。小声だったから今まで分からなかったが、これはシノブの声だ。俺は、やっ
と昨日のことをぼんやりとだが思い出した。そして、今の状況がようやく分かった。俺は、
シノブを後ろから抱きしめ寝ているんだ。だからシノブが起きられないんだ。だが、俺は
少しだけとぼけることにした。

「ん〜、俺は夢を見ているんだ。そうだ、そうに違いない。夢だから、何をしてもいいん
だ。うん、そうだ。」

俺は、ここぞとばかりにもぞもぞと手を動かした。こんなチャンスは滅多にないからだ。
今は俺達の体に毛布がかかっている。だから、例え監視カメラが動いていても、何をして
いるのかはっきりとは分からないはずだ。

「あのねえ。そんなことされると私、起きられなくなるよ。」

シノブはため息をついた。あれ、おかしい。こいつ全然抵抗しないし嫌がらないぞ。俺は、
そこでふと思い出した。そういやシノブったら、昔っから何をしてもされるがままだった
っけ。俺も昔は、そんなシノブに結構酷いことをしたよな。

カンチョーは、シノブ以外の奴は皆一目散に逃げるから、いつもシノブにやってたっけ。
シノブはケツが痛いってよく泣いてた割に、俺が近寄っても逃げなかったな。

他にも一杯やったな。デコピン、しっぺ、泥かけ、輪ゴム当て、ボール当て、落とし穴、
ほっぺたつねり、スカートめくり、パンツ脱がし、他にも散々やったっけ。でも、シノブ
は何をやっても逃げないし誰にも言いつけないから、格好のおもちゃだったな。

何をしても怒らないし、逃げないし、ただ泣くだけ。それにどんなに酷いことをしても、
最後に謝れば必ず許してくれたっけ。だからこれが夢じゃなくても、謝ればきっと許して
くれだろう。うん、そうだ。そうに違いない。俺はそう結論付けた。だが…。

「…アサト、シノブに一体何をしてるの。」

後ろから怒りに震えるような声がした。あちゃあっ、アサミだ。まずいとこ見つかっちゃ
ったな。俺は両手の動きを止めた。俺のお楽しみタイムは、残念ながらここで終わりを告
げた。

***

その後、俺とアサミは日課のランニングを終えて、格闘技の訓練をした。

「もうっ、アサトったら信じられない。シノブにあんなことするなんて、サイテーよ。」

アサミはやっぱりと言うか、かなり怒っている。蹴りにも殺気がこもっている。本当のこ
とを言うと身の破滅だと思った俺は、嘘を貫くことにした。

「いやあ、悪いな。なんか俺、寝惚けていたみたいなんだ。アサミに起こされて、初めて
あんな状態だって気付いたんだ。」

だが、そんな言葉でアサミが納得するわけがない。渾身の力を込めたチョップが次々と襲
って来る。

「寝惚けて女の子の胸を揉むわけ?女の子の股ぐらをさするわけ?まだ寝言を言うつもり?」

あの〜、アサミ。俺は本気でやってるのに、なんで防戦一方になるわけ。こいつったら、
こんなに強かったのか。こりゃあ、少しでも気を抜くとコテンパンにされるな。俺がそう
考えていたら、救世主がやって来た。そう、シノブだ。

「ねえ、アサミ。私のために怒っているの?」

「ええ、そうよ。アサトったらサイテー。ちょっと許せないわ。」

アサミが怒りを露にすると、シノブは止めてと言った。

「なんだかはっきり覚えていないけど、私がアサトに後ろから抱きしめてって言ったかも
しれないの。私も悪いんだから、アサトを許してあげてよ。」

おお、シノブ。お前はなんて良い奴なんだ。感謝、感激、雨、霰。おかげでアサミの殺気
が見事に消えた。あんなスケベなことをしたのに許してくれるなんて、何だか信じられな
い気分だな。こんなことなら、もっと凄いことをしておけば良かった。

「そういうことなら、シノブに免じて今度ばかりは許してあげる。でもね、次は無いから
ね。肝に銘じておいてね。」

「ああ、分かった。俺も寝惚けていたとはいえ、悪いことをしたって反省している。シノ
ブ、悪かったな。」

なんて口から出任せを言う。でもシノブは、俺が寝惚けていなかったことは分かっている
はずだ。なのになんで庇ってくれるんだろう。

「ううん、いいのよ。私も悪かったし。全然気にしないでいいからね。」

そう言ってシノブはにっこり笑った。う〜ん、こいつは本当にお人好しだな。まあ、昔っ
からだけどな。

***

さて、格闘技の訓練も半ばが過ぎた頃、ミカやミライも起きてきた。

「あっ、シノブさん。おはようございまーす。」
「おはようございまーす。」

ミカ達は、シノブに気付いてあいさつした。シノブは誰にでも優しいから、皆に好かれて
いる。妹達も結構懐いていたりする。

「おはようミカちゃん、ミライちゃん。二人とも、今日は大事な試合でしょう。応援に行
くから、頑張ってね。」

「うん、任せて。今日は、絶対に勝つからね。」

シノブに励まされて、ミライはニコニコしていた。

「まあ、アタシは助っ人みたいなもんだから。やれるだけのことをやるだけよ。」

反対に、ミカは割とサバサバしていた。まあ、こいつはサッカーを始めて間もないから、
こんなもんだろうな。

そのうちばあちゃんが起きてきて、朝食の準備をしてくれた。だが、母さん達はなかなか
起きてこなかった。俺は、母さんが起きてこないのでぶーたれた。そしたらばあちゃんは
仕方が無いわよと言った。

「シンジ君もここ数日ご無沙汰だったから、昨日は張り切ったんじゃないの。二人ともし
ばらく起きてこれないわよ。」

へっ。なんだ、ご無沙汰って?何を張り切ったんだ?父さんが頑張ると、なんで母さんも
起きられなくなるんだ?俺は、ばあちゃんの言うことが、良く理解出来なかった。


 
次話に続く

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あとがき


 アサトは、ここぞとばかりにシノブの胸を揉んだようです。エッチなところは、シンジ
に似たのでしょう。



written by red-x
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